IN天下谷宅・・・・・生命のカウントダウン(下)
「・・・・・で、俺にどーしろと?それ以前になんなんだ、この状況は?」
「聞こえなかったの?馬鹿な顔して突っ立ってないで、少しは手伝えって言ってんの。わかったんならとりあえず明かり強くして・・・・・出来るんでしょ?」
「いや、そりゃま・・・・・・じゃなくて!!俺が言いたいのは、なーんーでお前は、このだくだく血が流れてる状況で落ち着いてられんだよ!」
「やっぱ職業柄ってやつ・・・かもね。ちょっと寂しいけど。それに、私の能力のことはよーく知ってんでしょ?だいたい、アンタだってずいぶん平気そうな顔してんじゃない?ほら、さすがに重傷なんだから急いだ急いだ!」
・・・・・・・信じられるか、オイ?これが死にかけてる人間の前でするような会話かよ?ったく、これも『科学の進歩』ってヤツなのか、そーなのか?
え?お前も実際ずいぶんと余裕なんだなって?・・・・・まあ、そりゃな。あれだけ血ぃ見りゃあ、少しは慣れてくるさ。でもま、んなことはどーでもいい。だから、あんなモンいちいち蒸し返さないでくれよな?
「どうしたの!少しは手伝って!」
おっと。それじゃあ、照明光度を引き上げてやるとしますか。・・・・あらよっと。こんなトコでいいだろう。
「こんなトコか?」
「ちょっと強すぎ!もう少し小さく!」
・・・・・命令された。ハア、しょうがねえ。今回は助手として、全面的にアシストしてやるか。
「・・・それで?お次は何をしろと仰せで?」
「もういいわ。いったん出てって」
「え―――――!!?何それ!?せっかくこっちが覚悟決めて言うこと聞いてやろうと思ったのに?俺の意思は完全に無駄で、きっぱりと無視!?人の考えを一歩先から叩き潰すんじゃねえこの最低最悪女あぁぁ!!!」
―――――お?なんかずいぶん冷た~い目で睨まれたぞ?ちっくしょ、何言われても出てってやらねえからな!さあ来い!お前の切り札はなんだ!
「・・・・・・・別に残るならかまわないけど。ただ、服を脱がせて《・・・・・・》から治療するつもりだから。・・・・・なにか質問は?」
―――――え?結局どうしたかって?逆に聞こう、お前らならどうすんのよ?少なくとも俺は、回れ右して出てったからな。
・・・・・・・あー、まあ、そりゃあ、うん、素直に認めると、後ろ髪はムチャクチャ引かれまくったけどよ!確かにそうだけどよ!でもおとなしく外・・・ったってやたらと広いリビングだけど・・・・で座って待ってたんだからな!覗かなかったぶん偉いだろーが!・・・なに?図々しい?フン、うるせーよ。
それから10分後。高級品らしく、実にふわふわとしたソファーの上に寝転がって(それでもまだ余裕がある。そんなデカイものがいろいろ置いてあるのにきゅうくつに感じない部屋の広さ・・・恐るべし)いた清明の目を、桑折がいきなり覗きこんだ。
「うおっ!?・・・・って、どした?治療、終わったのか?」
どうだった、とは聞かない。その成功を前提とした《・・・・・・・・》、彼女のことを信用しているとも取れる質問を嬉しく思い、答える声もやや弾んでいる。
「当然!もうじき目も覚めるはずよ。
・・・ただ、聞きたい事ははっきりと聞いておくが。
・・・・・それで?あの女性、誰なの?アンタの知り合い?」
ああ、やっぱり来たか、そう彼は思った。だがそもそも、あの彼女はいったい誰なのか。そんなことをつらつらと考えてみる。と、その沈黙を別の意味で受け取ったのか、
「・・・・もしかして・・・彼女?」
「ウム。これまで内緒にしていたが、実はそうなのだ」
「・・・・・・・・・・・・・・そう・・・・・・」
「ん?アレ!!?嘘、何でこんなに落ち込んじゃってんの?なんかすっげー暗くて湿ったオーラが出まくっちゃってるし!いや嘘だよ嘘!!ただの行きずり!通りがかり!赤の他人!」
「ホント!!!?」
「・・・うわー・・喰いつくのはやっっ・・・・・しかし、俺に彼女いないのがそんなに嬉しいなんて・・・ハッ、もしかしてお前・・・・
桑折は、だいぶ顔を赤くしてうつむいてしまう。少なくとも次の瞬間までは・・・・
・・・・前からそんな気はしてたけど、こりゃ相当サディスティックな性格だったんだなー・・・嫌われるぞそーゆー性格・・・・・」
「誰がっっっっ!!!」
「ァ痛!?」
ロマンチックも何もあったもんじゃない。反射的に顔を真っ赤にしながら振り落とした拳は、おもいっきりかつ必然的に、その真下にある顔面を直撃していた。
―――――あう。俺、なんか間違ったこと言ったのかよ・・・・。
そんなことを考えていたら、みるみるうちに視界が暗くなった。
シリーズ初の上下編、終了!
・・・・・上下編にする意味、ホントーにあったんだろうか。別にそんなつながってないし(汗)。
ま、まあそれはともかく、次からまた話は動いていく予定です。
そろそろ彼女も名前出ししてやらないとなー・・・・。
ではっ!