盗難車でGO♪・・・・・その③
時間の、感覚が、・・・・・・・ない。
あれから、何分たった?それとも、何時間か経ってんのか?ああ、だめだ。さっぱりわかんね。覚えてるのはただ、無意識のうちにも聞こえてきた、
『あ、そこ左ね』
だの、
『ほら右行って!信号変わるよ!』
だの、
『あ、ここはまっすぐね』
とか言った感じの声に従って車を動かしていっていることだけ・・・・・・・・ってアレ?何か俺、ボーッとしてる間にいいように使われてね?
「ほらほら働く働く!あ、そこ左ね?」
「・・・・・・・」
「ん。それじゃ、三つめの角をまたひだr・・・・」
「いい加減にしてくれえっ!」
過労死でもさせる気か、ったく。人が反論できない精神状態なのをいい事にこき使うなんて、ひどい話だぜ。
「ん、ちょっとは調子戻ったね?」
「・・・・・え?」
もしかして、俺の為・・・・・?いかん、不覚にもちょっと感動した。次の瞬間!
「んじゃ、そこ右ね」
さ、さらっと言いやがった・・・・!開いた口がふさがらないってこのことだな、間違いなく。でもまあ、ちょっとはましな気分にもなれたの『だけは』確かだし、ここは黙っておこう。
・・・・・若干腹立った分が多いけどな!
「そのまま真っすぐ」
「いつになったら着くんだよ!?」
もう俺ぶっ続けで二時間近く運転してるぞ!?無免許者にとって運転ってすんごい神経使うんだからな!?いい加減事故っても俺は知らんぞ、ったく。
「ほら、そこに水色のビルが見えるでしょ?」
「ああ・・・・あそこか?」
やれやれ、やっと着いたのか。もういい加減休ませてもらいたいよ。
「いや、そのビルを左に曲がって」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」
「じょーだんだって・・・・・・ハイ、そこの駐車場に止めといて」
その偉そうな言い方にはわりと腹が立ったけど、でもまあこれで運転も終わりなんだ。わざわざ喧嘩吹っ掛けるほどのことでもない。とりあえず自分を納得させる。
・・・・・やっぱ納得、できなかった。いやだってさ、ここまで来れたのは誰のおかげだと思ってんのさ?おまけに車は盗んだ物だしさ、いい加減聞く方もしつこいだろうけど俺前科一犯になってるしさ、なんかこう言うことないわけ?人に何かやってもらったら礼ぐらいは言うもんだろ?
「ほらほら、早く入ったら?どこぞの監視カメラに引っ掛かっても知らないよ?」
いつ入ったのか、扉の中の方から声が響く。ちぇっ、でも確かに見つかりでもしたらえらい目にあうだろうからな。
てな訳で、俺は目の前の扉を開けた。さてさて、今度は何があることやら。
「・・・・・暇なんだ」
「偶然だな。実は俺もなんだ」
「君たち、もうちょっと静かにできない?」
「「それはもう五回は聞いた」」
「じゃあ黙っててよ・・・・」
「大体、さっきから何やってんだ?ずーーーっとパソコンいじったりしてさ」
その疑問には、シエルが代わりに答えた。
「多分、証拠の隠滅だろうな。貴方の言う『前科』を裏の方から握り潰してでもいるんだろう。・・・・・違うか?」
「うんにゃ、御名算だよ。よく分かったね?」
「・・・・別に。貴方がやらなければ、私がやろうと思っていただけのことだ」
正直よくわからん。でも、なんとなく予想はついた。
「・・・・・(ありがと、な)」
「・・・?何か言ったか?」
「どうしたのさ、ちょっとニヤニヤなんかしちゃって?気持ち悪いよ?」
「いや、何でもないさ」
なんだか、嬉しかった。
ちょーーーっとだけ終わり方をいつもと違う趣向にしてみましたが、いかがだったでしょうか。
違和感を感じたら素直にそう言ってもらって構いませんので、よければ感想とか感想とか感想とか(笑)お願いします。