35:いざ行かん!なハズだった・・・
は、走った・・・・・・。ったく、さすがに・・・予備動作抜き・・・・で、走りづめ、は・・・!しんどい!
ただまあ、あの何だかわからん廊下は正直、下手な怪談より数段怖かったわけだが。よし、困った時にはとりあえずおっさんに当たってみよう。
「てなワケで、どういう代物だアレはぁぁぁ!!!」
おら、桑折も突っ立ってねえで加勢しろ!そんなアイコンタクトを(おっさんの肩を揺すりながら)肩越しに送ってみると、一発で反応が帰ってきた。ありがたいな、コイツのこういうとこは。
「一体何なんですかあの気持ち悪い頑丈な壁!!・・・・・・てちょっとアンタねえ!それはさすがにやり過ぎじゃない!?ここで意識飛ばせちゃったらどうするつもりなの!?」
おっと。ちょっとばかし揺さぶり過ぎたか?おーい、おっさん意識あるかー?
「・・・・・・・・・まったく、ゲホ、ゲホ・・・・いくら王とはいえ、少しは年上のことを労わってみてはどうかね・・・?」
お、まだ平気だったか。良かった良かった・・・・・じゃなくてだなぁ!
「まだ起きてんならとっとと質問に答えろぉぉ!」
「わかった、わかったからとりあえず胸ぐらを掴むのはやめてくれ!」
・・・・・・ちっ。それで、どんなワケなんだよさっきのは。あんなの見たことねえぞ。幻術系にしても、この俺の『機械皇帝』を騙し切るほど強力な能力なんて、そんなの無いはずなんだよ!
「まあ、そう睨まないでほしいものだが・・・・しょうがあるまい。自分の能力が破られる恐怖と苦しみは、一応私にも覚えがある。気が動転しても無理はないだろう、な」
ふん・・・・・・まあな。俺らESPにとって、自分の能力ってのは実は相当に大事なもんだ。さすがに『生命より~』とまで言う奴は少ないが、『全財産より大事』とか言う奴は相当数いる。かく言う俺もそのグループの一人だし、もっと言うと桑折なんかは『医者としての全てより能力の方が上』って言ってたのを聞いたことがある。
ん。話が脇にそれたな。とにかく、自分の能力ってのは、どんなにちっぽけなものだとしてもESPなら誰でも大事に思ってるんだよ。だから、自分よりも能力的に格上の相手がいるとまず警戒してかかる。そんなもんだ。だからおれはいま、焦っている。それはわかっちゃあいる。わかっちゃいるんだ。
「・・・・・・・・・・で?」
「と、言うと?」
あくまでも、おっさんの声は冷静だった。俺は・・・・・・・少なくとも上機嫌には聞こえなかっただろうな。
「とぼけんなよ。さっきの答え・・・・まだ聞いてねえぞ」
一体、さっきのは何だったんだ?教えてくれよ。
「あの現象は・・・・・恐らく、ESPの手によるもののはずだ。それも、王の『機械皇帝』、貴方の『創造手』、両方同じESPの仕業だろう」
ちっ・・・・まあそうだろうな。・・・・・・・俺が能力で負けた、か・・・って、ん?んん?今おっさん、『同じESPの~』とか言ってなかったか?
「・・・・・・ああ。私には、大体見当も付いている。恐らく・・・・」
そこまで喋ったところで、後ろの方からゆっくりと、ゆっくりと、靴音が響いてきた。