いざ行かん!
ん?何をやったのかわからんと?簡単なこった。まず、ここが牢屋だろうと何だろうと、とにかく建物である以上『見取り図』ってーもんがどこかに作られている。これ常識。なにしろ、ただ単にだだっ広いだけの公園にだってあるもんだからな、見取り図。
で、そのデータは十中八、九の割合でその建物のメインコンピューターか制御室にコピーがある。
そうしたら後は簡単なもんだ。何回だってくり返してやる、この程度楽勝だぜ!
「なんっか腹立つのよね~、その偉そうな傲慢口調・・・・」
「・・・・・・(ウルセー)」
「ちょっと!今何か言った!?」
「・・・・・なんでもないですチクショウ」
「ふむ、前々から思っていたんだが、王はもう完全に尻に敷・・・・・・」
「だあらっしゃい!!!」
おっさん・・・・・・テメエ、常に誰かの神経逆撫でしてないと気が済まないタイプなのか・・・?だとしたら、『馬鹿は死ななきゃ直らない』の意味をその体にたっぷり叩き込んどいてやるからよ、希望があるならいつでも俺に言ってくれ、な?いいな?
「ははははは・・・・」
ふっ・・・・・声がほんの少し震えてるぜ、おっさん。残念だったな、隠しきれなくてよ。
「・・・・・・ねえアンタ」
「おう、どした?」
「で、どっちが出口なの?」
「・・・・・・・悪ィ、忘れてたグガァッッッ!!」
・・・・・これ、悪いのは俺だけなのか?久しぶりだけどやっぱ痛いな、コレ。多分明日にはコブになってんだろうな、ハア。
まあ、悔しいけど桑折の言うことにも一理ある。えっと、近道は・・・・右だ!
「よし、それじゃあ脱走とでも洒落込んでみっか!」
・・・・・・・・・・んで、それが10分前の話。
「ねえ、なんでどこにも着かないワケ?ずっと同じような廊下ばっかり続いて・・・・」
ンなモン俺に聞くな。
「ふむ・・・・・なにかの罠にでも引っ掛かったのかね?」
俺が知るかバーロー。
「「・・・・・・・・・・・・・」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・口答えしてスイマセンでした、ハイ」
おっかしいなぁ・・・・・・確かにこれはおかしい。何回頭の中に地図をダウンロード(まあ、言葉のあやってヤツだな。念のため)しても、この位置で合ってるはずだ。現在地も、監視カメラの映像から完璧に割り出してある。だから今、右の方向には扉が一つないとおかしいんだよなー・・・・・。ハイ、壁。どう見ても種も仕掛けもないただの壁。カメラ映像にも、ただの壁が映っている。ホログラムかと思って何回か探ってみても、全くの無駄。一体・・・・
「一体どうなってるワケなの!」
「だ・か・ら!俺が知るか俺だって悩んでんだだからお前も何かやれ!!」
「何かって何よ!」
「知らんわ!もっかい壁でもブチ抜いてろ!」
「いいわよ、そこまで言うならやってやるわよ!」
「よし、とっととやれ桑折!」
グオオオオオオオオン!!!・・・・・・・ドゴオオオオオオン!!!!
「どうだ、開いたか・・・・何ィ!?」
「ハア、ハア、・・・・・・!?」
壁にはなんと、傷一つついてない。それどころか、埃一つ舞ってない。んで、それに『おかしい』と思ったのは三人とも同時だったらしい。示し合わせることもなく、一斉に来た道に走りだしたんだよなー。まあ、余所から見てる分には面白い見世物だったろうよ。