『天翔人』と『機械皇帝』
「うう・・・・・・げほっ、げほっ・・・・」
まったく、こんなカッコ知り合いには見せられねえな。ああ、ざまあねえ。
と、向かって右のほうからえらくのんびりしてる割に心配そうな声がしてきた。
「あ、あのぅ・・・・・・・き、気分はいかがですか?もう落ち着きましたか~?」
「・・・・・一応な。どっかの誰かのおかげだ」
「そうですか!何よりですっ!良かったあ~・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
おいおい、本気かよ!?今時初めて見たぞ、皮肉言われても(たぶん)気付かなくてあんな素直な返事返す奴!・・・・・・・こりゃ強敵だな、なんか。あ、深い意味はないから。
「あ、お水持ってますよ!良かったら飲んで下さい~♪」
「いや、遠慮しとくわ。もうさっきよりはマシになったしな」
・・・・・・・・・これを発表するのはものすごいヤなんだけど、はっきり言ってこの娘はまだ信用できない。なんてったってさっきの話ぶりからいってあのそっくり野郎・・・・・・・えっと、『ダイヤ』だっけ?そこと繋がってるとこがあるみたいだからな。彼女には悪いけど。改めて見ると結構可愛いしスタイルもいいし(あ、不謹慎だったか?まあ、俺も男ってことで勘弁してくれ)、あのフワフワした雰囲気には見てるだけで癒されるけど、それとこれとは全く別・・・・・・・だ。言い切るパワーが無いのも気のせい・・・・・だろう、うん。
・・・・見た感じ19ってトコか?少なくとも俺よりちょっと年上だな・・・・・・ゴホンゴホン!!
「あ、そうですか~。じゃあ、とりあえずココに置いときますから、またいる時には飲んで下さい~」
「おう、わかった」
・・・・・・・ああ、罪悪感。礼ぐらいはするべきだったか?ふむ、思い立ったが吉日だな。
「なあ、アンタ」
「はい?私のことですかぁ~?」
・・・・・・・・・・俺とお前しかいないだろうが、廃ビル屋上。独りごとにでも聞こえたのかよ?
「ま、いいか・・・・・お前、名前って何なの?」
「私の名前ですか~?私は、『天翔人』って言うんです~。あ、あなたのことは知ってますよ、『機械皇帝』さん~♪」
「いや、そっちじゃなくてさ」
・・・・・・・別に能力名は聞いたつもりはなかったんだが・・・・。
とはいえ、一つ貴重なことがわかったな。どうも俺の情報、『ダイヤ』の側には筒抜けになってるらしい。
どうも、いつの間にかちょっとした有名人になっていたよーだ。やれやれ・・・・俺、目立ちすぎるのはあんまり好きじゃねえのにな。
「え~?そっちじゃない方・・・・・ですか~?」
「そ。つまりは本名な。・・・・・そういやお前、『機械皇帝』は知ってたみたいだけど、俺の本名も知ってんの?」
「あ、いえ~。そっちは誰も教えて貰ってないんですよ~。私もちょっと気になってたんですけど、どうも主君様に教える気がなかったみたいで、じゃあしょうがないかなって思って~・・・・・・」
・・・・・・ふむ。多分その主君様ってのが、俺のそっくり野郎のことなんだろうな。まあ、さしあたっては関係ないか。
「変な話だな・・・・・・ま、これも後で考えればいいか。それで、結局名前は?」
「あ、そうでしたね。私の名前はベル・・・・ベル・アラコー・祓っていうんですよ~。べつに呼ぶ時は『祓』だけで構いませんからね~。・・・・・それで、あなたはどんな名前なんですか~?」
あ、ハーフだったのか。言われてみればなんとなく納得。
「おう、俺だな?俺の名前はな、難波清明ってんだ」
「わかりました~、清明君ですね?」
「ああ。別に呼ばれ方にはこだわり無いから、それで構わねえよ、祓さん」
「やめて下さい!」
「ほえ?」
・・・・・やべ、つい間抜けな返事しかできなかった!でも、何で俺怒られてんだ?
「『祓さん』なんて呼ばないでくださいよっ!清明君の場合は、『祓』だけでいいんですってば!」
「そ、そうか?んじゃえっと・・・・・・そりゃ悪かったな、祓」
「そう、それがいいんですよ~」
ふーん・・・・・まあ、人には色々あるんだろうな。別にこっちも悪い気はしねえけどさ。
・・・・・・祓さんがニューヒロインになるかどうかは、読者の判断にお任せします(笑)。
それでは、また次話で会いましょう!