ピエロとキング(上)
「んな!?」
・・・・・・お、驚いた・・・・・。そこには、チビのおっさんが一人立っていた。背が低めなことを除けば、ほんっっっとにどこにでもいそうな、中堅どころのサラリーマン、といった顔立ち。だ、だけど・・・
「う、ウソだろ?気配が・・・・」
くっ・・・。このおっさん、ただ者じゃねえ。桑折は俺と違って喧嘩慣れしてないから、上手くやれば気付かれないかも知れねえ。だけど、俺もだぜ?この俺までこんな距離に近づいて、しかも声かけられるまで気付かなかった・・・・・あぁ?さりげなく自慢すんな?自慢なんてモンじゃねーよ、これは。あーっ、うん、まあ、喧嘩三昧はともかくとしてだけど・・・な。でも、これだって自慢にゃなんねーよな。
んなことを考えてたら、そのおっさんがもう一度、口を開いた。やたらとうっれしそうに、ニヤニヤと笑いながら。
「キヒヒ。どぉうしたんですかぁ、皇帝どのぉ?あっしのこと、覚えてねーんですかい?」
うおお・・・・・・な、なんというか・・・こう・・
「な、なんというか・・・・・す、すごいギャップね、あの人・・・・」
・・・・ありがとな、桑折。俺の感じたことを、一言で表してくれて。やっぱ勉強できるヤツは言葉の選択も正確だ、うん。
・・・・・・。・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・。ハア・・。よし、現実にも目を向けよう。イヤだけど。なんかすごい関わりたくないけど。えーと、なんて言ってたっけ?
『覚えてねーんですかい?』
「知らんわっ!!!」
・・・・・あ、ヤベ。ついついまーた怒鳴ってた。でもなあ・・・・・こんな変なおっさん、一回見たら忘れるワケにもいかんだろ、普通。
と、そこで、おっさんはもう一回口を開いた。顔はそのままだが、口調はがらりと変わる。
「いいのかい、皇帝様?アーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!」
やっと閃いた。
「・・・・・・・ん!!・・・・・て、てめえ、あん時の・・・・あんときゃずいぶんと世話になったよ
な、オイ!」
「―――――どうだい?思い出せたよーだな!すばらしいぞ難波清明!それでこその君だ!僕も頑張った甲斐があったというものだ、ハッハッハッ!」
く・・・・・や、やりづれえ・・・なんでさっきとはキャラも一人称も変わってんだよ・・・・・って、そうじゃねえ!
「も、もしかしてアンタの知り合・・・」
「ぜってー違う」
桑折・・・・・・頼むから、今は口挟まないでくれって。俺だってもう、何が何だかわけわからねえんだからよ・・・。それにしてもこのおっさん、いったい何考えてやがるんだ?