からくり競艇人物外伝第3話:西野貴志編
福岡支部の西野貴志の昔話を書いてみました。
西野貴志のモデルはお気づきの方もいるかと思いますが西山貴浩選手です
外伝:『ポンコツたちの狼煙』
――西野貴志と、愛すべき異端児たち
「エリート様がなんぼのもんじゃい! 完璧じゃなきゃ勝てねぇなら、俺たちは『ポンコツ』として勝ってやろうじゃねえか!」
福岡支部の片隅、使い古された工具とオイルの臭いが立ち込める第4整備室。そこが「ポンコツ会」の聖地、通称・ガラクタ部屋だった。
結成のきっかけは、ある年のTG競走。西野貴志は、ライバル大峰幸太郎の「完璧な勝利」を目の当たりにした。大峰の機体は黄金に輝き、一ミリの狂いもなく水面を切り裂く。対して西野は、自慢の「爆炎」属性を制御しきれず、自爆寸前の挙動で大敗を喫した。
「……ちっ、まーた『欠陥品』扱いかよ」
整備士やメディアからは「西野のマブイは出力が高すぎて機体が持たない」「あいつは欠陥機だ」と囁かれていた。
そんな時、西野の前に三人の「はみ出し者」が現れた。
一人は、香川から福岡へ流れてきた寡黙な男、森田勝司。
「スタートだけは誰にも負けん。だが、その後が続かん……。俺も、使い所を間違えたポンコツか」
彼は誰よりも速いマブイの反応速度を持ちながら、その鋭すぎる加速に機体が耐えられないという悩みを抱えていた。
一人は、華麗な旋回技術を持つ武田静香。
「コーナーを回るのは得意なんです。でも、マブイの感度が良すぎて、普通のペラじゃ反応しすぎちゃうんですよね」
彼女は、あまりにも繊細なマブイコントロールゆえに、既存のセッティングでは満足できない「過敏なポンコツ」だった。
そしてもう一人は、凄まじい負けん気を持つ若手、渡辺優子。
「ダンプ(体当たり)で道を作るしかないんですよ! 私、これしかできない不器用なポンコツですから!」
彼女は圧倒的なマブイ量を持ちながら、それを全て破壊衝動に変えてしまうという、扱い注意の暴れ馬だった。
西野は、三人の顔を見渡してニヤリと笑った。
「いいか、お前ら。世間様は、一箇所でも欠点があれば『ポンコツ』と呼びやがる。だがな、尖りすぎた能力ってのは、裏を返せばそこだけは『世界一』ってことだろ?」
西野は、自らの機体からわざと外装を剥ぎ取り、内部の爆炎機関を剥き出しにした。
「大峰さんみたいな綺麗なレースは、あいつに任せときゃいい。俺たちは、欠点だらけの能力を寄せ集めて、エリート共の喉元を食い破るんだ。……今日から俺たちは『ポンコツ会』だ!」
西野が提唱したのは、個々の欠点を補い合うのではなく、**「欠点という名の個性を爆発させる」**という逆転の発想だった。
西野が4カドから爆炎で場を荒らし、森田が神速のスタートで突き抜け、武田が精密な旋回で隙間を縫い、渡辺が負けん気のダンプで敵を蹴散らす。
「完璧じゃないからこそ、何が起きるか分からない。それが一番怖ぇってことを、あの太陽野郎(大峰)に教えてやろうぜ!」
西野の呼びかけに、三人のマブイが共鳴した。
福岡の夜空に、爆炎と、神速の火花と、精密な青い光と、不屈の赤が混ざり合い、歪な、しかし最高に熱い狼煙が上がった。
こうして、競艇界で最も愛され、最も恐れられる「ポンコツ軍団」の快進撃が始まったのである。




