星屑の祈り
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夜空から零れ落ちた星屑を拾い集めるように、少女は静かな森を歩いていた。
彼女の手には、割れた鏡が抱えられている。それは「真実を映す」と言われる古の神器。だが今は欠け、歪み、真実と虚偽を混ぜてしまう。
森の奥には、誰も近づかぬ廃墟がある。そこに灯るのは一つの灯火。風に消えぬその光だけが、彼女を導いていた。
廃墟の中心には黒鉄の檻があり、中には「未来を告げる鳥」が囚われていた。その鳥は一度も鳴いたことがない。ただ、羽ばたくと微かな羽音が響き、檻の外にいる者の心をざわめかせるのだ。
少女は檻の前に座り込む。辺りには深い静寂が満ちていた。世界の音すら閉ざされるような深淵の静けさだった。
少女は鏡を差し出し、割れた欠片に星屑の光を映し込む。そのとき、鳥が初めて囀りをあげた。
「おまえの運命は、影の中にある。」
壁に伸びる影は少女自身のものではなかった。彼女の背後に立つ、見知らぬ“誰か”の影。
少女は小さく目を閉じ、声にならぬ祈りを胸に落とした。
次に目を開けたとき、檻は空っぽだった。
そして世界は、もう元の世界ではなかった。