-Episode.4-
琉美がその動画を投稿する為に作ったYoutubeアカウントは行方不明1週間前にできたものだ。
そしてⅩの裏アカウントも本当に所有していた。
彼女が裏の顏で呟いていた事は想像を絶するものだった。
『蛙を殺してみた』
本当に蛙を殺している動画が添付されていた。
『今度は人間を殺してみたい』
『でも人間を殺したら刑務所にいくのか』
『殺す時は何で殺そうか』
『殴って殺すのと刺して殺すのどっちが気持ちいいの?』
野良猫や鳩を刃物で殺害する動画がいくつも撮られて呟かれる。
「琉美……どうして……どうしてこんな……」
私は恐ろしさで涙が止まらない。
『言ったはずです。覚悟をしてみて欲しいと』
「でも、娘がそんな事をするなんてに私には」
『でも、みられたのですね。ずっと辿ってみてください』
「こんなものをずっと眺めろっていうのか!?」
『じゃあずっと下の画面までタップして。その間は目を逸らして』
「ふざけたことを……」
しかし柏木さんが言いたい事はそこの果てにあった。
琉美はいつの間にか妙な信仰を始めていたのだ。
奇妙な装束をまとった集団が1枚の写真におさまっている。
『最近世間で話題になっている“降霊神話”ですね』
「コウレイシンワ?」
『テロ組織に近いカルト宗教です。殺生を道徳と説く団体で』
「何ですか……それは……」
『まぁ都市伝説だと噂されているぐらいで騒いでいるのはSNSだけ』
「キチガイじゃないですか? 娘はその一員になったと?」
『というのも彼らが本当に殺人事件やテロを働いた事はないのですよ』
「じゃあ何で柏木さんは知っているのですか……」
『全国区で彼らは監視対象になっています。でも実体が掴めていない』
「そんな陰謀論みたいな話……」
『だけど琉美さんは殺傷を働いていましたよね?』
「それは……」
『それとこれが無関係だったら、そっちのほうがショックじゃないですか?』
「………………」
『矢野さんを責めようと私は思いません。しかし事実は事実ですよ』
「娘は逮捕されるのですか?」
『生きていればですが。この団体の奇妙なところは若年層をターゲットにSNSで思想共有を勧めていて。その巣にかかった青少年の一部が謎の行方不明になってもいるのです』
「そんな」
『でも、色々分かったのであれば前進です。彼女が逮捕されても矢野さんと彼女の絆はなくならないと私は信じますよ。ちょっと脇道に逸れたという事でしょう。引き続き彼女の捜索を進めたいと思います』
「すいません……落ち着いて聞いていられなくて……」
『普通の話じゃありませんからね。でもあのマズい動画はこっちで消しました。店はしばらく開けないと思いますが、琉美さんの発見に尽力しましょう。そして親子でしっかりと話し合って。そうすることできっと、また1からやり直せるでしょうから』
「ありがとうございます……ごめんなさい……」
『貴方はどうか自分を見失わないでね』
彼女が最後に言った言葉の意味を理解するほど私は大人でもない。
すぐに降霊神話なるカルト組織のことをGoogle検索から調べ始めたーー