-Episode.3-
琉美のスマホは翌日に我が家へ届いた。
液晶画面は酷く割れていた。
そういう話はよく聞くが、ここまで酷いと何だか怖気まで感じる。
それでもスマホは修復可能だと言う。
柏木さんからは再度警察に郵送して欲しいと願われた。
勿論断るつもりもない。しかしーー
そこで何かが壊れてしまうような気がした。
いつものようにパソコンの画面で琉美と阿佐美の思い出の日々を眺める。
電話が掛かる。山村さんからだ。
『もしもし! 昭さん! Youtubeが大変な事になっているわよ!』
「その昭さん呼びはやめてくれって言ったじゃないか。山村さん」
『休業の動画がとんでもなく再生されているの!』
「えっ!?」
『それと同時に私たちの動画が……』
すぐにYoutubeを開く。普段4桁を残す私のチャンネルの動画は6桁を記録していた。
私が休業を知らせた動画。そして私と山村さんが抱擁する動画だ。
「何だコレ……どういうつもりで……」
私はすぐに山村さんとの電話を切り、チャンネル主の詮索に動いた。
しかし何も分からない。文字化けしたチャンネル名だけが目に入る。
そこでネット通話の電話が入る。
『矢野さん、動画を観ましたよ。これはどういうことですか?』
「いや、これは……」
『貴方が投稿されたのですか?』
「違います! 断じて違う! 逆に私はこんなモノが投稿されて不快だ!!」
『ならば投稿主を探る必要がありますね。スマホからの投稿みたいですが……』
「琉美なのか? 琉美がこんな事をしているのか!?」
『落ち着いてください!! それと!! 事実をちゃんと話して貰えますか?』
私と山村真心はできていた。
どっちが先に逢引きの手を引いたかは覚えていない。
まぁ男女の関係なんてそんなものだろう。
私は彼女と結ばれても阿佐美の事は忘れないつもりでいたし、琉美もそう思ってくれると信じた。
しかし、その見立ては甘かった。
私たちがその事を告白したときに彼女は猛反発したのだ。
真心に掴みかかり、真心の腕を噛むという行動をとった。
あまりに突然の出来事で私は琉美の頬をぶったが、同時に悟った。
私はやはり阿佐美とともに「やよい」にいないといけないのだと。
そのことを琉美に話して分かって貰うまで半月かかった。
その間は山村さんも店には来られなかったもので。
「でも、何年も前の話です。あれから琉美も山村さんも仲良くなっていたし」
『形だけでは?』
「厳しい事を言われるのですね……でも私と彼女は今は仕事仲間でしか……」
『何にしても動画の件は明解にする必要があります。協力をお願いしますよ?』
やがて琉美のスマホは復元された。
私と山村さんの動画はそのスマホから予約投稿されたもので間違いなかったーー