-Episode.2-
柏木刑事とのZOOM会議を終えて私は部屋にやってきた澤村さんと会話を交わした。
「進展ありましたか?」
「いや、全然なかった」
「そうですか……」
「すまんな……こんな忙しい時に仕事を抜けてしまって」
「いいえ。明日も店を開くのですか?」
「ああ、一応そのつもりだ。私も出れたら出ようと思う」
「無理なんてしないでくださいよ……あの、私に話って?」
「ああ、琉美についてだ。その、何か私に話してないような事とか知っているか?」
「店に来た時しか話してないし……でもⅩのアカウントを個人で持っているとかなら」
「店のアカウントとは別にか?」
「あの……話さないでって言われているから、話しづらいのですけど……多分裏アカだと」
「ウラアカ?」
「Xって特定数の人のみにみられるようにアカウントに鍵をかけられるのですよ」
「鍵をかける?」
「う~ん、なんていったらいいかな」
「それは見つけることはできるのか?」
「私でも知らないから。難しいですよ」
「そっか。そのへんもまた話さないといけないな」
「ごめんなさい。力になれそうじゃなくて……」
「いいや。いいんだ。ちょっとした手がかりでも今は心強い」
「あの、やっぱり明日から暫く休業にされたらどうですか?」
「君もそういうのか……わかった……考えるよ……」
目が赤くなっている私をみて尚更そう思ったのだろう。
琉美が行方不明になってから一睡なんてしていない。
私はただ必死で彼女を見つけようとパソコンに向かっていた。
『あ~どうも。やよい店長の矢野です。諸事情があって暫く店を閉店します。いつも通ってくれているお客様には申し訳ないのですが、なるべく早くに店を再開できたらと思います。色々ご心配をお掛けすると思いますけども、どうか私たちを信じて待っていて欲しく思います。より美味しいメニューを揃えて皆さんを迎えてみせますので……どうか……どうか私たちを忘れないでやってください』
私が画面越しにそう話すと店仕舞いの看板が画面に映る。
急遽Youtubeに投稿した動画だ。
この対応を進言したのは北崎君だ。
いかにも琉美が考えそうな事だが若い子はこんな発想力があるのだろうか。
『SNSで裏アカウント……それは確認できるものがあるのですか?』
「いえ……そういうものを持っているようだとウチのバイト生が……」
『そこに何かあるのかもしれませんね。それより大事なお知らせがこっちにも』
「大事なお知らせ……?」
『ええ。琉美さんのスマホが発見されたのです』
「ええっ!?」
『あの、落ち着いて聞いて貰えますか?』
「はい……! 極力は……!」
『笹ヶ瀬川の河川敷です。大きく破損されていました』
「えっ……それってどういう……」
『まだ捜査は続いていますが、事件に巻き込まれたか事故に遭ったか』
「事件ですか……事故ですか……娘は……」
『まだ分かりません。ですが、どうか落ち着いて事実を受けとめて』
暴かれてはならない闇が暴かれようとしているのを肌に感じるようだったーー