-Episode.1-
『はい。昨日も16時には学校をでていたと思います』
画面に映るのは琉美が通う特別支援学校の教員。伊達さんだ。
「誰か……友達とどこかにいこうとされたりは……」
『いつもと同じで学校のバスに乗った姿はみました』
「その時に誰かと一緒にいたとか?」
『申し上げにくいですが、琉美さんは友達を作らないタイプのコで。僕の記憶ではそういう交流をするようなコにはみえませんよ? 普段から門限を護られていたのでしょう?』
「そうだけど……帰ってきてないのです……だから心配で……」
『僕たちにできる事はします。バスの運転手をした職員や他の関係者にも話を伺ってみます』
「お願いします……どうか……どうか……」
彼はどこかめんどくさそうに応じていた。
憤りを感じる事があったが、今はそんな感情に振り回されてはならない。
「店長。今日は店に入られないのです?」
後ろから声がした。厨房スタッフの北崎君だ。
「ああ、今日は無理だ。北崎君一人でお願い出来るか?」
「ご心中察します。今日は土曜日で夜は特に忙しい。こういう時だし休みにしても……」
「それはできない。やるにしても今日の今日でいきなりそんな発表なんかできないぞ」
「店長は本当に真面目ですね。わかりました。出来る限り頑張ります」
「すまんな。澤村さんと山村さんにもそう言ってくれ」
「わかりました。無理はしないで」
本当は急遽閉店にしようか考えた。しかしそうはできない。
店がしっかりと稼いでいる今、その状態を壊す訳にもいかない。
「琉美……どこで何をしているっていうんだ……」
あれから既読にならないLINE。
スマホを握りしめ、私は警察とのZOOM会議を待った。
最近の彼女は悩みなんてなかったと聞く。
彼女と年齢が近く仲の良いバイト職員の澤村芽衣子さんはそう話していた。
学校を卒業したら晴れて「やよい」の一員になるのだと。笑顔もみせていたと。
『あーみえますか?』
「はい……矢野です……宜しくお願いします……」
『岡山県警生活安全課の柏木遥菜と言います。貴方が相談主の矢野昭さんですか?』
「はい……琉美の父です」
『私たちの課では行方不明者の捜索にも尽力しています。今一度になりますが状況を教えて貰っていいですか?』
「はい……あの……」
担当の警察官は婦人警官のようだ。
華奢な感じがするがメリハリのある口調に何か信頼がおけそうな気がした。
「それでLINEを打っていたら……急に既読がつかなくなって……」
私は話しているうちに泣いてしまっていた。
涙がとまらない。それでも必死に何とかしたいと願うのも止まらなくて。
『ご心中察します。これより娘さんと昭さんの関係や最近のご様子などプライバシーに関わることを尋ねてゆきますが、大丈夫ですか?』
「ええ……わかりました……すいません……ごめんなさい……」
『辛いと思うけど、どうか顔をあげて。私も息子が小学生の時に行方不明になった者です』
「そうなのですか……息子さんは見つかったのですか……?」
『ええ。だけど今の貴方には話せない内容です。最悪の事態を防ぐ為に話せる事を話して』
「はい……はい……わかりました……」
それから数時間。私は琉美に関する事をしっかりと話したーー