第十二階位 飛鳥川神社! Bパート
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まえがき
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桃花市の農業地区にある、町では有名な神社。『飛鳥川神社』。
そこは実は第十二階位の家系。飛鳥川の家だった。
不思議な髪飾りをつけた女性当主。飛鳥川如月の修行を受けることになった絆、想騎、嶺。三人の修行の相手は………
嶺の使った封印の解除によって、絆は全身に力が戻るのを感じた。
全身に満ちていく熱い何かに、絆は安心感と力強さを得た。これで、私も、戦える!そう思った。
絆は一歩進み、叫んだ
「刻め『刻鳥』」
私は、久々に私の鳥の声を聞いた。
― 待ってたよ
― 一緒に、飛ぼう
私はオラクルへと大きく跳んだ。風が吹き上がり、全ての意識を能力の制御に向ける。
「『ナイトメアウィンド』!」
叩きつけた一撃はオラクルに止められた。だけど違う。『私のパパの動きはこんなものじゃないのだから!』
受け止められた刻鳥を火花が散るほど素早く振り抜いて無理矢理ガードを抜ける。
この一撃がダメージにはならないけれど、必ず貫く!
「『ブラストウィンド』!」
密着させた状態から放つ、一撃。
「ぐっ…」
オラクルが一瞬だけだが攻撃を受けた。
「隙あり」
目映い月光が切り裂いた。想騎の武器、『幽月』が隙をついて大きなダメージを与えた。よし、流石に………
「『ローゼンガルテン』。」
黒い薔薇の枝が絆の身体を這い上がり、首に巻き付いた!
「…効いたな。だが、私は生憎と死ねぬのでな。すぐに間合いを開くべきだったな」
締まる枝に、窒息させられそうになる。棘が首に刺さる痛みで意識はかろうじで残っているが、息が…出来ない
「っ…!」
刻鳥を上げようとして、腕も拘束されているのに気付いた。なるほど、逃げられないか…
絆がせめて緩めようと動いた時、急に枝が切れた。嶺が枝を切り落とし、想騎の拘束も切り裂いたのだ。彼は一文字にオラクルを払うと、さらに縦に一撃を放った。
オラクルは空間をカーテンのように歪めてその中に後ろ向きに飛び込んだ。
「逃げた?」
「絆さん危ない!」
想騎が突き飛ばしてきて、絆は髪の毛先を数センチ失うだけで済んだ。背後に現れたオラクルに気付けなかった…
「輪廻を巡れ『ゼーレンヴァンデルング』」
漆黒の剣が、その力を解放した。さらに武器を絆に向けてオラクルは呟く。
「輪廻の海に眠れ。我は天地を結ぶ者。死者と生者を繋ぐ者。無限の輪廻を超えて我は世界に行使する。砕けよ『光の奔流』」
襲い来る光の波になすすべもなく飲み込まれ………あれ?
「…まったく、こいつの詠唱の長さに感謝だよ。しばらく耐えてくれ、大鷲。」
結界に守られた大鷲が流れ来る光を弾いていた。まるで盾のようにしっかりと受け止めるまるでオーロラのような大鷲に感謝する。
「さぁ、大鷲行くぞ!」
光を受けきった大鷲が自らの結界を破壊して大きく鳴いた。
「切り裂け『斬翼大鷲』!」
鳥は再び鎧に身を包み、金属で覆われた翼を持ち上げた。そしてその翼でオラクルを攻撃する!
「攻撃強化の大鷲か。それで貫けると思うはずもないな。」
右腕で握った剣で大鷲の一撃を受け止めて、彼は振り返った。
「後ろか」
後ろには、嶺の姿があった。
「飛鳥川二式『断層結界』」
オラクルの剣は、嶺の身体を貫いた
「…結界位相をずらした。僕は今全ての攻撃を受けないし、与えられない幻だよ」
嶺がふわりと後ろに跳んだ。後ろに跳んだ嶺を『突き抜けて』想騎の一撃がオラクルに当たった。
「剣技『眉月』!」
月光を引き連れた大斬撃がオラクルを捉えた。想騎は振り抜いた体勢から素早く次の攻撃を行う。
「剣技『下弦』!」
足元を狙った鋭利な斬撃。そして、一度その剣の勢いに身を任せて回転し、三撃目の攻撃を行う。
「剣技『半月』!」
左から右へ、流れるように繰り出された刀がオラクルの身体を上下に分割する。
「『断層結界』解除。風打十式『轟突』!」
攻撃を受けない状態を捨てた嶺の体術がオラクルに直撃した。彼の体が一瞬だけだが浮かび上がり、無防備な隙を晒す。
「絆!」
嶺が左手に風を集める。絆も右手に風を集め、わずかな時間で二人の風は渦を巻くほどに成長を遂げた。
「対にて逆巻け!」
「荒れ狂う竜巻よ!」
「「『デュアルツイスター』!」」
渦を巻いた風が、二つの渦を巻き起こす。左右の鏡写しだが、その渦はオラクルを巻き上げて少しずつ融和していく。
「絆、もう少し弱く!」
「パ…パパが強いの!」
離れて、繋がって。螺旋を描く対の竜巻はより多くの風を巻き込んで次第に勢力を増していく!
「想騎ぃ!飛ばされるなよ!」
「は、はいっ!」
刀を足元に突き立てて必死にしがみつく想騎に嶺が言った。術者本体は真逆の風で自身への影響を減らしている。だから巻き込まれないのだが…
「…嘘でしょ」
上空でオラクルがたたずんでいた。荒れ狂う竜巻をまるでそよ風だと言うように、ただだ、平然と立っていた。
「パパ…あれ…」
絆が言うと
「見るな。今はあいつの魔力を削る。あいつの魔力、それさえなければ、まだ行ける!」
叫んで、さらに強い力が加わる。
絆の体がほんのわずかに竜巻に引き寄せられた。重心を下げて、飛ばされないように耐える。
「どうした?まだ私は死んでいないぞ?」
余裕の声が空から降って来た。嶺は舌打ちし、さらに力を込めた。その瞬間、絆の腕に痛みが走り、風が力を失った。
「へ?」
突然の事で何が起きたのかわからなかった。嶺が何かを叫んで、オラクルが飛び降りて来たのが見えて、絆は崩れ落ちた。
「あ…能力の使いすぎ…」
そうだ。そういえば封印の解除はされたが、封印されてたせいで体が能力に適応出来てないのだ。まだ出せる出力は8割程度だったのを無理して出したから、バランスが崩れて体が自動的に能力を遮断したのだ。
―交代。
絆の中で声がした。空中から飛び降りたオラクルは剣を強く握り、仰向けに倒れた絆に振り降ろした!
かん高い金属音が響き、そして、
「………。失せろ幻。」
鋭い目付きの絆が呟いた。
「お前は…何者だ?その体の持ち主、ではないな」
「ふん。お前にはどうでもいい話だ。」
剣が短剣に弾かれて、絆が飛び起きる。
「幻は幻。いくら不死者の幻想と言えど儚く消える………。」
カチャ…、と短剣が小さな音を立てた。
「我が能力は【終端】。始まりの終わりを司る能力。さぁ、始まりを刻め『始刻刻鳥』」
羽が一枚、どこからか落ちてきて…刻鳥に触れた途端炎に包まれて灰に変わった。
「『ナイトメアブレイカー』」
鋭く放たれた斬撃が巨大な衝撃波となってオラクルを切り裂いた。
「…?」
防御して攻撃を防いだにも関わらず、オラクルの傷からは血が流れていた。
「治癒が…しないだと?」
「この力は『全てを始まりに戻す』力。そして『始まりは全て等しく無防備である』。」
「集え、闇の残骸。『ネガティブブレイカー』」
次いでの魔法攻撃がオラクルを撃ち抜いた。
「まだまだ…。集え、闇の残骸『ネガティブブレイカー』」
「『リアルパリィ』」
全ての攻撃がその軌道をわずかに反らし、オラクルを仕留め損ねた。
「闇の能力……。なるほど実物を見るまでは存在を疑っていたが…。お前が、【終端】か。」
「いかにも。我は【終端】。等しく終わりを告げる者!」
始刻刻鳥がゼーレンヴァンデルングを襲う。黒い光と赤い光とが交錯し、この結界の中で目映い芸術となる。
「始点『リバーサルライフ』」
「革命『ワルキュレアの進軍』」
見たこともない技が繰り出され、お互いを撃墜しようと猛烈な早さで二人は結界内を跳び回る!
「継点『ターニングポイント』」
「逆転『天上への走破』」
オラクルの一撃が、一瞬止まった。
「!」
最適な防御のタイミングがズレた絆は受け止めたオラクルの攻撃を受け止めきれずに落下してくる。
「絆っ!」
嶺が走り、落ちてくる絆を受け止める。
「…およ?」
絆は嶺を完全に無視し、嶺の腕にしっかりと着地して、再び跳び上がった!
嶺の痛みに叫ぶ声が響いたが、絆とオラクルは関心がないと思われ無視を続けた。
「なるほど…お前の実力は確かに素晴らしい。私にこれほどまでの傷を負わせたのは嶺だけだったのだがな…」
全身に細かな切り傷を作ったオラクルが、絆に言った。
「だが、私にはまだ届かない。」
彼の背後に巨大な魔法陣が現れた。半径でも3mはあろうかという巨大な陣の中央でオラクルは唱える
「無限の盾。無限の剣。今世界は動乱に包まれた。人々は決起し、体制を崩さんと集まり、世界を変える大きな流れとなった!」
絆は剣を振るい、叫んだ。
「『ナイトメアウィング』」
再び放たれた巨大な斬撃。だがそれはオラクルに触れる前に粉々に吹き飛ばされてしまった。
「…『無限の盾』。なるほど、全ての言葉が術式発動の言霊か」
絆は短剣を低く構える。
「『バニティスレイ』」
虚無を操る斬撃がオラクルの盾を破壊する。
「さぁ、革命の時は来たれり!我が元に集え!禁断の槍よ!」
だが、オラクルの詠唱のほうが早かった。手にしたのは聖槍ロンギヌス。かつて神を名乗る人間を貫いた槍。あらゆる力を備え、絶対の権力となるという伝説の槍………
「嶺さん…あれ…」
「くっそ…また出しやがった…」
嶺はあの槍を知っていた。三年前、嶺があの槍を放たれる前に決着をつけたのだ。
「まだ…準備できてないってのに…」
その時、嶺の隣を誰かが駆け抜けた。白いコート、翼を模した双剣。そして、その人物は叫んだ。
「悪いな、オラクル。僕らの勝ちだ!」
今、叫んだのは『三年前の風翼嶺』。オラクルとの最終決戦で挑み、封印した時の記憶。
「集え!輝ける人々の願いよ!我が名は嶺!第六階位、風翼の当主!さぁ願え!勝利を、希望を!我が翼に希望の追い風を!」
『三年前の風翼嶺』は叫び、大鷲を『投げた』。
「行くよ大鷲。願繋鳥『織翼大鷲』!」
燃え盛る翼がオラクルの盾を砕き、そして破壊の一撃で地表に叩き落とす。
「十二の楔、十二の呪縛!束ね、繋ぎて結界と成す!禁術『十二次元の幽閉』!」
『三年前の嶺』の背後に、オラクルの物よりも遥かに巨大な、半径5m。全長にして10mの円を描く魔法陣が光によって浮かび上がった。鳥や、四角を組み合わせた模様などおよそ12の紋様が描かれた1m程の小円とそれらをを囲む大円。紋様同士を結ぶ曲線。全てが嶺の叫びに輝きを増す!
「次元の狭間に消えろ!オラクル!!!」
『三年前の嶺』が持つ大鷲に、魔法陣の曲線が巻き付いて、まるで美しいイルミネーションのように輝いた。それを、『三年前の嶺』は、槍を投げるかのように振り抜いた!
光は魔法陣を円錐のように引き延ばし、オラクルの心臓を貫いた。
「馬鹿な…この、力は……!」
オラクルはもがき、魔法陣の端を抜こうとしたが魔法陣はびくともせずにオラクルを拘束していた。
「これが、十二階位の力。人々の、結束の力だ!」
輝く紋様は全て十二階位の家紋。椿井が、如月が、鬼啼が、嶺が、オラクルを貫くその力を産み出していたのだ。
「くっ…だが、私は!まだ…やられはしない!」
振り上げられたゼーレンヴァンデルングが、無くなった。
いや、『腕ごと無くなっていた』。
「まったく、生意気な。私たちも頼りなさいよバカ嶺」
「そうね。…もっとも、勝手においしいとこは貰うけど」
空中に小さな足場を作った、瀬名と御簾。二人の少女がオラクルの失った両腕に刀を突き立てる。
腕の再生が一時的に封じられ、オラクルは痛みに叫ぶ。だが、
「虹の極光『アル・カン・シェル』!」
目映い光が、オラクルの眉間を貫き、そして
「『フレイムズ・プリズン』」
緋糸の爆炎がオラクルを焼いた。嶺の率いるチーム全員の攻撃を受けたオラクルは苦しそうに嶺の名を呼んだ。
「次元の狭間に消えろ!そして、二度と戻って来るな!」
嶺は、最後の言葉を吐き捨てるように言った。
「ぐっ…ぬっ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オラクルが両腕を再生し、最後の気力を振り絞って体を貫く封印の楔を抜こうともがく。だが、『三年前の嶺』は躊躇う素振りすら見せずに最後の、術式の詠唱を終えた。
「神代の世界に、十二の楔。次元を越えて繋ぎ止める。さぁ!起動しろ最後の…封印の印章よ!」
パキン………。
絆達は蔵の前に立っていた。
「あれ…私、なんでここに…」
ぼんやりとした頭で絆は首をかしげた。確か…オラクルとかが出てきてたような………。ま、いっか
「あれ?パパ?」
嶺がめまいでも起こしたのか地面に座っていた。彼は考えるようにしてからため息を吐いた。
「三年前の戦いの再現…。万が一オラクルの封印が解けた時の為にあの場面を保存してたのか…。」
ぶつぶつぶつ。と呟く嶺の後ろから、黒い影が迫って来た!
「帰って早々、ウザイわ!」
「まっ!ぴっ!ぽっ?!」飛んで、頭から着地を繰り返す嶺は奇妙な鳴き声(?)を出して地面を転がって、最後は数メートル滑って停止した。
………たぶん、心臓は停止していない。
「おっかえり!絆ちゃん!レベルアップ出来た?」
……。
「えっ、いや…パパが死んでるっぽいんだけど…」
「まぁ、技術なんていつの間にか修得してるもの。レベルアップだろうと自覚してないんじゃない?」
御簾が笑って絆の肩を叩いた。
どうやら嶺のことはスルー&放置をするようだ。
「ともあれ、絆ちゃんも、想騎も無事で何よりね」
「うん!」
絆が頷いて、御簾が笑った。
(笑った…)
あんまり見せない御簾の笑顔に、絆は複雑な笑みを浮かべた。
「ん?どしたの?」
「なんでもないっ!ただなんか気分が良いの」
ザワッ、と空気が揺れた。僅かな静寂。
「来た」絆は、冷たく言った。
瀬名と御簾が首をかしげた直後に飛鳥川の結界が轟音ち立てて揺さぶられたのだった
揺さぶられた結界が再び轟音をたてて、まるで頭を殴られたかのような衝撃を受けて絆は倒れる。
「な…なに?地震?雷?」
「わわわ、私の雷じゃないわよ!」
「地震でもない…!攻撃されてる?!」
瀬名、御簾、絆の三人は背中合わせになって武器を構える。雷、氷、風の剣がそれぞれの名に導かれて姿を現す。
「来るなら…来なさい!」
絆が叫ぶと、三度目の衝撃が真上から襲いかかってきて、三人は押し潰されるように倒れた。
「ぐぐぐ……何よ、今のは……」
「攻撃じゃないわね。ただの衝撃波」
「それにやられる私達って……」
絆は泣きたくなりながら立ち上がる。強くなっているかはわからないけれど、嶺が(瀬名の一撃で)気を失っている今、風翼の当主代行を勤めなくては!
「六式『翡翠結界』!」
エメラルドグリーンの結界が三人を包み込んだ。飛鳥川如月の防御結界だった。
「すみません、今、結界基点が攻撃されています。私たちの結界が維持できません」
また衝撃音が響いた。
「結界基点…。場所は?」
「桃花市、東地区。農業地帯です」
「オッケー、私たちが解決してくるわ!」
「瀬名、私も行く」
瀬名と御簾が結界を解くように指示した。
「駄目です!今…外は霊力波の乱れで皆さんに悪影響が…」
「如月さん、結界を解いて」
嶺が立ち上がった。彼は首をコキコキバキンと鳴らしてからしばらく痛みに震えていた。
「…カッコ悪」
「うっ、うるさい!」
嶺が反論に吠えて、小さく「やっぱ痛い」と呟いたのが聞こえた。
「嶺さん…ホントに解除しても?」
「うん。三人は大丈夫だよ」
「それとも、結界が壊れるまでこうしてる?」
如月は困ったような表情で「むむむー」と考えて、それから頷いた。
「わかりました。お願いします。」
パキン、と割れた結界から三人が飛び出した
「まっかせなさい!」
「何でも屋だしね、朝飯前よ」
「私だって、修行で強くなったんだから!」
嶺が満足そうに頷いた。
「行くよ、羽ばたけ大鷲!」
四人が鳥の背に飛び乗り、天空へと舞い上がった。小さくなるその姿を見送って如月は彼らの無事を小さく祈った………。
桃花市上空にて。
優雅な空の旅…とはいかない絆たちは強い北風に身を震わせながら東地区へと向かう。距離は大したことはないのだが、四人も乗せて飛ぶのはやはり大変なのか大鷲が文句を言うように小さく鳴いていた。
嶺がなだめて飛び続け、ようやく住宅街を抜けた辺りで嶺のケータイが鳴った。
「もしもし?」
『こちら黒須。嶺、今飛鳥川からあなたたちのサポートをしてくれって連絡が来たわよ。何したの』
白衣姿であろう黒須の姿が目に浮かんだ。
「飛鳥川の結界が壊されそうなんだよ。というわけで結界基点か今いる能力者の集団は学園のレーダーで探知できる?」
『ちょっと待って、起動中……………。よしっ、起きた』
「たぶん、相手は弱い能力者のグループだと思う。このタイミングで動いてるならばオラクルの関係者の可能性があるよ」
『今のところ……能力者は………あっ、いた!東地区。微弱な反応あり。座標は………』
嶺は頷いて、大鷲の背を叩いた。何かを伝えるように彼は囁くと大鷲が高く鳴いた。
「近くに行ったら大鷲の探知能力で探すよ。黒須、一応学園から生徒を派遣してもらえる?」
『分かった。手配しとく』
「感謝」
嶺がケータイを閉じて、絆に笑いかける。
「絆、なんか最近ごめんね。巻き込んでばっかで…」
正直、謝られるなんて予想外だった。
「えっ?いや…うん。私は…平気だよ?」
不意打ちだったから動揺が隠せなかった。絆は一度深く息を吐いて、言い直す
「平気。逆に刺激的で楽しいから…。普段の学校生活だけじゃきっと、こんなには楽しめなかった。悪漢を倒す道具として生きるより、家の宿命を背負ったみたいでカッコイイじゃん」
それを聞いた嶺が一瞬だけど、笑った。
「流石、それでこそ僕の娘だっ!」
「っきゃー!抱きつくなっ!落ちる!ママー!」
瀬名に助けを求めると
「私の娘だー!」
「だから抱きつくなぁぁぁ!【ウィンド】!」
「「『目に入れても痛くない』っ!」」
「気合いガードするなぁぁぁ!」
足場が揺れて、大鷲が大きく鳴いた。まるで『暴れるな!』と叫んだようで、直後に上下がひっくり返った。
「お?」
「う?」
「み?」
「あ。」
体が、宙に浮いたのが分かった。
ゆっくりと御簾と、団子みたいに固まった三人が離れていく…
「手、放してるから…」
「冷静なら助けろよぉぉぉ」
嶺の叫びと共に、三人は落ちて行った。
無重力を体験しながら嶺、絆、瀬名は絶叫して、畑に落着した。
ボフン。と音を立てて三人は土まみれになった
数秒の沈黙。
それから
「耕された畦で助かったぜ…」
嶺が呟き、立ち上がった。
「あいたたた…腕が痛い…」
「ママ、腕よりも鼻から血が出てるよ」
「アイムオーケー。これは絆ちゃんへの愛よ!」
「そんな愛情はいりません。」
でも、とりあえず三人とも無事なようだった。一安心。
すると、御簾を乗せた大鷲が着地してきた。
「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
嶺が大鷲に詰め寄り、
「アウアッ!」
翼で殴られた。
大鷲がまるで叫ぶように高く鳴き、それから嶺を鋭い眼で睨んだ。
「…すみませんでした」
嶺は正座して、畑に両手を付けて謝った。
(土下座した…)
(武器に謝った…)
絆と瀬名がそのシュールな光景を見ていて、
「だって。どうする?大鷲?」
御簾がまるで自分の物のような態度で嶺を笑う。間違いない。この人はドsだ。
大鷲はピィと高く鳴き、渋々と言った雰囲気で嶺から目を反らした。
「優しいわね」
御簾が笑い、彼女も畑に飛び降りた。
「さて。この辺りよね」
畑のど真ん中なのだが…。
「絆ちゃん。普通結界基点は目に見えないの。そして、飛鳥川の結界基点は長年設置されてるから、間違って破壊されないように目印があるはず。それを探すの」
「まっ、今は人を探す方が良いでしょうけどね」
そういえば、攻撃を受けているのだ。近くに人影があるはず。それを探す方が見当もつかない目印を探すよりもずっと有益だと思った。
絆は素早く周囲に目を走らせる。
「それなら、僕が適任かな。『疾風大鷲』」
嶺の鳥が、翼を広げた。
「索敵開始」
嶺が命じると大鷲から魔法陣が現れた。大鷲の前に浮かぶその白い魔法陣はかつて、市街地に現れた結界基点を探すときに大鷲が展開したものだった。
あの時は水を使う能力者と戦い、最後はその男が狙撃されて事件は終結したのだ。そうだ。あの時の犯人はまだ分からないのだ…
昨晩の銃撃戦も、ひょっとするとその狙撃手の物だったのかもしれない…。
絆は昨晩の建物の影に隠れる場所すらも瓦礫の合間を縫って飛んできた弾丸を思い出して、震えた。
よくも昨晩は死なずに済んだと今更ながら痛感した。
「オラクル…かぁ…」
三年前、嶺や瀬名。そして十二階位と戦ったと言われる不死身の人間。学園の結界を抜けて空間を歪めるようにして移動する男。
空間跳躍系の能力はかなりレアで、今のところ学園でも使える能力者は皆木夕凪しかいない。しかも、彼女のは半分無理矢理の力業だ。体力の消費も多く、多用は出来ないもの。他の似たような能力者達はは空間跳躍ではなく純粋な高速移動を使って代用している。
それらを考えても、オラクルは十分化け物だ。
(死なないし、強いし…何なのよ…)
絆は相手の強さにため息をついた。寒さで口から白い煙が出たように見えた。
「ん、見つけた!」
嶺が叫んで、前方を剣で示した。瀬名と御簾が武器を作り出して頷く。
「行くよ。大鷲!」
嶺が先陣を切って走り出した。次に聖蓮姉妹。最後は絆。
「よし…張り切って行こうね、刻鳥」
ブレスレット型の封印を解いて絆は走り出した
走ること数百メートル。丁度小高く盛られた畑の裏側から人の声がしていた。嶺を先頭に息を殺してゆっくりと進む……
「ったくよ…なんで俺たちは畑のど真ん中で遊んでんだ? 昨日の夜なんかツバイ本社を壊滅させてやったってのに…」
「まぁそう言うな。『地味な一手』ってオラクルも言ってたろ?」
「あ゛ー!それでもやってらんねー!」
どうやら、『革命の刻』という組織の人間らしい。絆の手に力が込められる。
次の瞬間、嶺が二人の背後に現れ、剣の腹を後頭部に叩きつけていた。一瞬の速業。高速移動からの打撃を受けた二人の男はそのまま白目を向いて失神した。
「瀬名、そっちの手足縛っておいて」
嶺が袖の中からワイヤーを伸ばして、断ち切った。それで手際よく手と足を縛り上げ、身動きを取れなくした。
「おぉ…凄い…」
「基本スキルだよーっと」
嶺が笑うのを違う違うと否定して瀬名を指差す。嶺がその先を見ると、顔色を変えた。
「あの…瀬名さん?縛れとは言ったけど…」
「何よこの縛り方は駄目だって言うの?」
「ダメに決まってるだろっ!」
全身をくまなく拘束する瀬名の縛り方はとても昼間では見せられるものではなかった。嶺がワイヤーで男の腕を縛り、畑の土に寝かせる。
「なるほど…これが結界基点か」
嶺が指差した先には、小さなお地蔵様があった。少し壊されていたが、嶺が落ちていた破片を戻して二、三言呟くと仄かに黄色く輝いて傷が修復された。
嶺がケータイを取り出して電話をかける
「如月さん、結界基点取り返したよ」
『はい。攻撃が止まりました。ありがとうございます』
嶺が、ふぅと息を吐いて縛られた男達を見る。まだ意識がないのか動かない彼らを見て、何を考えたのか胸元をまさぐる
「おーあったあった。なんだろ?」
嶺が引っ張り出したのはメモリースティック。小さなもので、首からかけられていた。
「よっこいしょ」
嶺はそれを引っ張ると、紐を切って奪い取った。そしてしげしげと観察すると自分のコートのポケットに入れた。
「さて…。こいつらどうするか…」
「流石に…放置って訳にもいかないよね」
絆が呟いた。
「仕方がない」
と呟いて嶺は二人の前にかがんで、胸ぐらを掴んで揺さぶった。ガックンガックンと揺れる男は数秒して目を開けた。
「う、うわぁぁぁ!」
まず嶺に叫び、それから自分が縛られているのに気付いてまた叫んだ。
「きっ、貴様は、死神!」
「おー。懐かしいねぇその呼ばれ方は」
嶺が人懐っこそうな笑みを浮かべた。もちろん男は震え上がったのだが。
「さて、尋問タイムと行こうか。…誰の指示で来た?」
「…。さぁな」
シラを切った男に嶺は頷いて、右手を引いた。
そして…一度グサリと剣を突き立てた。
男の脇、まさに数ミリの場所に突き立てられた大鷲を揺らして嶺は男に催促する。
「知ってるよね?僕がどうして『死神』なんて呼ばれてるか。…キミも死にたい?」
嶺の囁きは男を震え上がらせ、揺らした剣が触れる度に彼は怯えた悲鳴を漏らした。
「オラクル…様に…言われて……」
「隣の奴も?」
「そうだ…もういいだろ!」
嶺は頷いて、
「続きは国のお偉いさんに話してよ。どーせ能力者の部署は暇してるからお茶くらいは出してもらえるよ」
「ま、待ってくれ!俺は殺される!頼む!逃げさせてくれ!」
男が叫んだ。
冷や汗を流し、必死の形相で訴える男に嶺は言った。
「大丈夫だよ。オラクルはその程度では殺さない。もしアイツがそんな程度で殺すなら今頃世界は終わってるよ」
立ち上がって剣を抜き取った。今にも泣きそうな男を一度だけ見て、ケータイを鳴らした。
「『革命の刻』メンバーを確保。受け入れお願い」
『学園サポート、了解しました』
嶺はケータイを閉じてから「さて」と呟いた。
「出てこい。気付いてるよ」
僅かに気配がした。そよ風に吹かれたようにわずかな変化だった。
「バレてましたか。いや残念」
現れたのは、若い男。纏う雰囲気は軽く、表情も柔らかな笑顔だった。
「いつから?」
「最初から。あの二人を囮に僕らを釣ったのか?」
「ん~、まっそんなところかな」
言いながら男はキーホルダーサイズの小さな剣を取り出した。
「キミに勝負を挑みたい。オラクル様と同等以上の戦いを繰り広げたんだろう?さぞかし素晴らしい剣なんだろうね」
パシン、と小さな電気が走って男の手に剣が現れた。柄の部分に十字の刻印がある黒と黄色のカラーリングを持つ剣。
「祓え。『クルセイダー』」
「切り裂け。斬翼大鷲」
嶺の隣に鎧のような金属装甲を纏った大鷲が着地した。攻撃に特化した大鷲の別の名前。嶺は全員に下がるように指示する。
二人の間に沈黙が訪れる。張り詰めた緊張感と冷たい風が吹き抜けた!
先に動いたのは敵の男!
素早く走って嶺の懐に潜り込んだ
だが嶺は後ろに跳びつつ迫って来ていた剣を右手の剣で受け止めた。
「軽い!」
左手の剣を鋭く突き出して男の喉を貫いた。
見ていた絆や瀬名がワッと沸いた。
「くそっ…外したか…」
嶺は舌打ちした。
「嶺、何言ってるの?」
「瀬名、見ててよ。」
嶺が剣を上に突き上げると、まるでガラスを割ったかのように男の体が砕けた。
「やれやれ…。いきなり死ぬかと思いました」
男が、畑の上にいた。
嶺は間合いを開いて男に対峙する。
余裕とばかりに佇む男と一撃を外された嶺。二人の間合いは広いはずなのに嶺はいきなり防御した
鋭く響き渡った金属の音。嶺は吹っ飛ばされて畑の畦をいくつか崩して土の上で停止した…
「やりますね」
「どうやら、面倒な能力持ちみたいだな…。」
土まみれになった嶺は、不機嫌に呟いて立ち上がった。
「第六階位、風翼16代当主嶺。本気で相手してやる!」
「『革命の刻』リヒト・カルマ。存分に楽しませてくれ!」名乗り上げた両名は鋭く閃光と共に一撃を繰り出した!
リヒトと名乗る男の一撃は軽かった。
まるで押しきるのを嫌うような上品な一撃。嶺はそれを払いつつ右手の剣で攻撃する
(くっ、またか…)
また男の体がガラスのように割れて、大鷲の一撃を当てることができなかった。
(なんだ?コレは…。武器の力?それとも能力…。どちらにせよやりにくいにも程があるって)
嶺は間合いを開いた。
距離は5m程度。相手が動けば反応できる広い間合い。
「力押しの技ばかりですね。あなたの力はそんなものですか?」
リヒトの体が砕けて、消えた。
(後ろか!)
振り返ると、誰もいない。
「姿を消すと、何故すぐに真後ろだと決めてかかるんでしょうね?」
嶺の背後から声がした。…つまり、先程までの正面だ。
「双剣って便利だよ。本当に。」
左手の剣を素早く逆手に持ち替えて嶺は後ろに突き出した!
パキン。と、またリヒトが割れた。
「またか…」
嶺は手応えのなさに小さくため息を吐いた。だが、同時に小さなヒントも手にした。
(手応えが無い。けど割れる…。)
嶺はリヒトをもう片方の剣で叩き壊すと大きく間合いを開いた。
「…危ない危ない。もう少しでお腹に穴が開くところでしたよ」
男は無傷だった。
(つまり、今の攻撃は届いてない…)
嶺は一つの仮説にたどり着いた。
(あの『割れるやつ』は幻像か?)
よし、と嶺は気合いを入れる。ようやく対抗できる手が浮かんだのだ!
「ちょこちょこ動くんじゃない!」
嶺はリヒトに襲いかかった。剣を突き出して、リヒトの心臓を狙う
「無駄ですよ」
笑うリヒトに嶺も、笑った。
「これならどうだ!」
コロン…と袖から何かが飛び出した。それは手で握れるほどのスプレー缶のような物体で先端部分は大鷲の柄に引っかかっていた。
「スタングレネード食らえ!」
光が世界を包み込んだ。
嶺は光に飲み込まれる直前に、ほんのわずかな光を見た。まるで鏡で光を跳ね返したような僅かな光。だがこれで、繋がった。
猛烈な光と耳を殺すほどの大爆鳴の波に飲まれる前に、嶺は目と耳を閉じた。
目蓋を透過する太陽よりも目映いマグネシウム発光と増幅に増幅を重ねた音が襲った!
その波が過ぎた後、嶺はくらつく頭でリヒトを見た。
「閃光弾…やってくれますね…」
目が見えなくなっているのか彼はまばたきを繰り返していた。…だが嶺も程度こそ軽いものの視野の8割は強烈な光の影響で見ることが困難な状態だった。
「頼んだ!大鷲!」
嶺がリヒトに剣を向けると、鎧を纏う大鷲がその両翼を叩きつけた!
「むっ」
リヒトはそれをバックステップで回避した。
「…分かったよ。お前の能力。」
「ほう…聞きましょう。」
リヒトの声に僅かな焦りが含まれた。能力者同士の戦闘ではお互いの能力を利用しながら戦うのが普通だ。だから『相手の能力を知らない』というのは圧倒的に不利であるし、逆に『相手が能力を知らない』というのは絶対的に有利なアドバンテージとなる。
リヒトの能力はトリッキーな能力。だからこそ『相手が能力を知らない』アドバンテージを最大限利用できた。
「お前の能力、【ミラージュ】だな」
無言と沈黙。そして
「…バレましたか。流石はオラクル様を倒した嶺さん。素晴らしい観察と仮説検証。なるほど、あなたの実力は力よりも知能戦のほうが良いようですね」
「まぁね。双剣も結構頭使うんだよ」
「なら、どうします?」
「鏡像ごと切り裂いてやるさ」
真顔に戻り、二人は叫んだ。
「やれるものならやってみせなさい!」
「やってやるよ!」
土が舞い上がり、二人の一撃が阻まれた。
「そこまで」
二人の武器を止めたのは小柄な少女。やや精気のない顔で背負った銃で見事に止めていた。
「ミルフィ…何しに来たんです?」
「オラクル様が呼んでる。バカみたいに戦って…計画に支障が出たらどうするの?」
少女の鋭い目が嶺を見た。
「オラクル様があなたを殺せと命じてくれてれば…。無様な鳥を撃ち落とせたのにね」
「えらい嫌われようだね…僕は君を知らないんだけど」
「私は風翼を良く知ってる。亜理椏に伝えなさい。あなたの眉間に穴が開いた時は私の弾丸だ…と」
少女。ミルフィは嶺に背を向けた。
「君は…誰?ミルフィは名前?」
嶺が聞くと、少女は鷹のような眼で睨み付けてきた。
「私はミルフィ・クレーム。風翼亜理椏に両親を殺されたあなたたちの敵よ!」
背負われていた銃が抜かれて、銃口が嶺を捉える。いくつもの倍率スコープが倒れて狙撃用の準備が終わる。
今まさに、嶺は猟師に狙われた鳥。逃げ切れない…
「見ーつーけーたー!」
空を黒い影が横切って、嶺とミルフィは思わずその人物を見上げた。
「キズナン~♪」
驚きのスルーで真畔が絆に抱きついた
「…なんだか興が冷めました。私たちは帰ります」
「そこの銃を持った娘」
真畔がひき止めた。
「キズナンやキズナンの大切な人を傷つけるならば私たちが…例え私一人でもあなたを叩き潰す!」
「…多少の能力を持っているようですが、私に挑んで勝てる可能性は皆無。今のうちに逃げ帰ってなさい」
空間を歪めて少女、ミルフィと青年、リヒトが転移した。二人がいなくなるとすぐに穴は閉じてわからなくなってしまった
「ふん…。」
真畔が鼻息荒く二人の消えたあたりを見つめて、もう一度溜息を吐いて嶺たちに向き直った。
「学園から派遣されました真畔御黒です。こんにちは」
一礼した真畔に瀬名が笑いかける
「一晩ぶり~。他人行儀じゃなくて良いわよ」
「なら遠慮なく。キズナぁぁぁン」
「ちょ!うにゃぁぁぁぁん」
お察しください。
「で。」
しばらくして、真畔御黒が言った
「確保対象はどこに?」
「「「あっ」」」
先程縛り上げた男たちが忽然と姿を消していたのだ。瀬名も嶺も、それから御簾も。気付かなかった
「あぁぁぁ!どーすんのよ!逃げられたじゃない!バカ嶺!ヘタ嶺!」
「アウアッ?! 痛い痛い!殴るな蹴るなぁー!」
「オラクルが回収したのね…。どのみち、逃げ切られてたわよ」
御簾が言うと瀬名は殴るのを止めて小さくうなだれた
「どーするのよ…手がかりが…」
「手がかりねぇ…」
嶺が先ほど男たちから入手した記憶媒体を取り出して、揺らして見せる
「でかした嶺っ!早速学園で見てこようよ!」
「ママ、徒歩で学園に行くの?」
「なに言ってるの。さぁ!マクロちゃん!車をっ!」
沈黙。
「…すいません、徒歩です」
「嘘でしょー!」
瀬名が悲しみにうちひしがれている間に御簾はケータイを取り出してタクシーを呼んだ。
「マクロ。学園から来たのになんで徒歩なの?遠くない?」
「あっ。えっとぉ…そう!たまたまよ!たまたま!私免許ないし!」
「かずねが持ってるよ?」
「美容と健康のためにウォーキングは必須よ!さぁいざ行かん!」
「ちょ!タクシー!」
ずるずると引きずられていく絆を御簾は手を振って見送った。
「…怪しいわね」
「…瀬名、楽しそうね」
ニヤリと笑った瀬名に御簾が話しかけた。
「露骨に慌ててたじゃない。怪しいわ…うちの絆ちゃんがどうにかされちゃうんじゃないかしら!アッー!」
叫ぶ瀬名に御簾は「またか」とため息を一つ落とした。
冬の寒空の下、タクシーを待つ一行。
非日常の中にあるほんの僅かな平和な日常。御簾は小さく微笑んだ。
「たまには、いいわよね。」
青い髪が風になびいて彼女は空を見上げた。髪と同じ青い空を。
ポニーテールを揺らした風の後ろ姿を見て、彼女は笑ったのだった………
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あとがきというらくがき
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公開が非常に遅くなりました。皆さんお久しぶりです。白燕です
明けましておめでとうございますm(__)m
さて、前回11月に投稿して1月まで後編を出せませんでした…。エクストリーム・謝罪申しあげます。
さてさて。実は今友人たちとゲーム作成で競っておりまして嶺たちは出張中となっています
完成したら公開する(かもしれない)ので、良ければお待ちしていただけると嬉しいです。
それからニコニコ動画の方も同じような理由で行動不能です
見ていただいた方、本当に次作が遅れて申しわけありません
今現在プロットを練り直しているので…遅くなって本当にすみませんm(__)m
今年も頑張っていきますので、皆様どうぞよろしくお願いします!
白燕
「本当に頑張ってよ?」
と、風翼嶺
「さぁね?」
と、聖蓮瀬名