なろうでの「人気」は泡沫政党支持と同じようなもの、という話 ~でんでん現象とバンドワゴン効果~
まずはじめに、でんでん現象というものをご存知でしょうか?
これはエコーチェンバー現象の一種で、とあるアニメを元に日本で生まれた名称です。
ちなみにエコーチェンバー現象というのは、自分と同じ考えの人達で固まり、自分と同じ考えの情報ばかりを優先して取得していくことで「自分の考えは正しい」と自らの思想を強化していくような心理現象の総称ですね。
でんでん現象という言葉の元になったのは「伝説の勇者の伝説」というラノベ原作のアニメで、略称から「伝伝」現象。
これは「評価の割に実際見た人の多くが面白くないと感じる」という現象を表す言葉で、この現象はアニメに限らず漫画やドラマといった連続性のあるコンテンツには大なり小なり起きるものです。
メカニズムとしてはこんな感じですね。
1話切り、3話切りという言葉があるように、連続もののコンテンツは「面白くない」と感じた人からどんどん離脱していく。
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そうしていく内に残るのは、そのコンテンツを面白いと評価する人だけになる。
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結果、最終話には初期視聴者の一割も残らないレベルの駄作でも高評価が付く。
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高評価に釣られて視聴した多くの人が、何故これが高評価なのかと首を捻る。
これが「でんでん現象」です。
まぁ今のアマプラなんかでは「これはダメだ」と思った人がその時点で低評価して去っていくんで、最近はそれなりに素直な評価が出るようになったんですが。
昔は最終話までキッチリ見るような人しか評価することもなかったですからね。
で、このでんでん現象なんですが、なろうのランキングでも起きてますよね。
とあるランキング作品の小説情報から数学的に考えてみましょう。
年間ランキングにも入る某作品。
この作品の総PV数は約1億PV。話数は約400話。ブクマ数は約5万。
考える上で必要な数字はこれで十分ですが、一応オマケに評価人数は約13000人。
何も考えず「1億PV!」の部分だけ見ると凄い数ですが、ブクマした人が稼いだPVはこの内どれくらいの数字か考えてみましょう。
400話を一通り見たとしたら、1ブクマが稼いだPVは400PV。
好きな人は何度か読み直すと想定して、1人(1ブクマ)が全話を3回読んだと仮定します。
ってことは【400話 × 3回 × 5万ブクマ】で、約6000万PVがファンの稼いだ数字ってことになりますね。
では、残りの約4000万PVはどれくらいの人数が稼いだ数字でしょう?
「5万人(5万ブクマ)で6000万PVということは、比率で考えると3~4万人くらい」
まさかとは思いますが、こんなアホな計算した人はいませんよね?
ここのレベルだとちょっと不安になりますけど……
ブクマも評価もしないって人は、ほとんどがチョロッと読んで「つまんね」と通り過ぎた人ですよ。
このタイプの人が一人で数百から千単位のPVを稼いでるわけないですよね。
メチャメチャ甘い仮定で一人が10話(10PV)分だけ読んだとして、その積算が4000万PVだとすると、評価に値しないと通り過ぎた人の数は約400万人です。
ってことは、約400万人中の約5万人に支持されて、この作品はランキング入りしていることになるわけですね。
%で言うと1%ちょいくらいの支持率です。
ちなみに、メディアの世論調査によると公明党や共産党の支持率が2%くらいだそうですよー。
先にも言いましたが、この計算はメチャメチャ甘く仮定したものです。
ブクマしてる人でも1話1回しか読まないって人もいるでしょうし、ブクマ外してないだけで途中で離れた人もいるでしょう。
ツッコミのためにブクマしてる人なんかもいるかもしれません。
面白くないと判断した人達は、わざわざ10話も読んでるとは到底考えにくいですよね。
正確な数字の算出はなかなか難しいでしょうが、恐らく実際の支持率は1%を軽く下回ってるんじゃないかと思います。
ちなみのちなみに、社民党とか参政党、れいわといった完全な泡沫政党の支持率が1%以下ですねー。
結局のところ、ここのランキングって泡沫政党の選挙戦略と同じで、「悪目立ちすれば一定の票が入る」スタイルでしかないんですよね。
んで、でんでん現象による内輪の盛り上がりだけで「こんなに人気なんだー!」と。
あと、バンドワゴン効果も相当あるでしょうね。
バンドワゴン効果とは、「支持者が多いものほど良いものだと錯覚する」といったような心理効果です。
たとえば、同じものを提供する店でも行列が出来ている店の方が良く思える、みたいなものですね。
これは主体性のない人ほど、起きる問題の責任を自分以外のものに求める他責思考の人ほど陥りやすい心理です。
自分で判断せず「だってみんながこう言っていたから」という考えの方が責任から逃げられますからね。
こういった人は自分で経験して「ん?」と首を捻ったとしても、ガイドブックに掲載されてる評価とか周りの人達の評価といった責任転嫁の余地がある評価の方を優先するんですよ。
まぁなろう作品の多くって主人公優遇の、バリバリ他責思考の話が多いんで、こういった人には純粋に合うのかもしれませんけど。
〇
でんでん現象(エコーチェンバー現象)とバンドワゴン効果は、自分自身に芯がない人ほど引っ掛かりやすいものです。
一昔前の話ですが、こんな事件がありました。
とある重大事件が起きた時、その犯人の親はとある地方で不動産屋を営んでいるという情報がネットで流れる。
その情報を元に犯人の出身地にある犯人と同じ名字の不動産屋が特定され、ネットの住人が電凸を開始。
でも結局、その不動産屋は犯人と同姓というだけで犯人と何の関係もなかった。
本当にアホみたいな話ですが、エコーチェンバーとバンドワゴン効果に流されるようなタイプの人間はこういうことを平気でするんです。
もちろんこういった人間は全体から見れば一部の集まりでしょう。
でも、母数が大きくなればなるほど「一部」に入る人数は多くなり、情報を提供する側にしても情報を受け取る側にしても、その「一部」こそが世界の全てになるわけですね。
小説投稿サイトでランキング入りを目指すなら学ぶべきは小説の書き方ではなくて、こういった心理学関係なんだろうな、と。
オレオレ詐欺とか見習うといいかもしれません。
複数人で行うクオリティの高い劇場型のヤツではなく、メールを大量にバラ撒くタイプのヤツ。
「主人がオオアリクイに殺されて一年が経ちました」なんて文言から始まる詐欺メールがありましたが、これなんか成功率は一切考慮してないですからねw
まさに「万が一」で引っ掛かるヤツがいればいい、という考えで大量にバラ撒かれたものでしょう。
多分ですが、「これで引っ掛かるヤツは確実に継続的なカモになる」という選定の意味もあったんじゃないかと思いますが。
面白さ度外視で流行り廃りだけを見極め、落書きのような内容と文章でいいから短いスパンで大量の話を投稿し、レスポンスが良かったものに注力する。
ランキングの常連がやってることは端的にまとめてしまうとコレで、言ってしまえばメール詐欺の手口と同じですね。
だけど心理学や商業理論で考えると、これで正解でしょう。
タピオカが流行ればタピオカを売ればいいんですよ。
もちろん大きく儲けたいなら流行りはじめを嗅ぎ分ける嗅覚が必要ですし、見切り時をキチンと見極める洞察力がないと大損しますが、有象無象ある内の一つになるくらいならこれで十分です。
これ以外でランキング入りしようと思ったら、プロレベルの中でも頭一つ抜けた才能と努力が必要でしょうね。
もしくは、突き抜けた豪運に期待するか。
クリエイター思考の人は……諦めましょ。
今の小説投稿サイトは、そういった人にとっては趣味の場でしかないです。
それで良しとしましょう。
おわりー。