命拾い・・・もう一度ゆっくりと
「お久しぶりです皆様。裏犯罪特殊課の責任者に就任しました、三音です。再開がてらにお茶でもと言いたいところですか、そんな暇は無いので、宣戦布告と見せしめに一人死んでください」
一人の男は牙を剥く。
「その言葉を待ってたんだ!、ちょうど社会不適合者を黙らせて世界を統一しようと思ってた所でさ!俺も宣戦布告として裏から表にとっておきのギフトを送ってやったよ」
高らかに宣言される嘘か本当かさえも分からない言葉。
(それが本当だとしたら・・・・かなり)
「ライ・フィーリンス、お前は一度表に帰れ」
「いや待って・・・・むーわかりました」
否定するのは余計足を引っ張る気がしたから、心配を殺して
背を向けて逃げようとした時、一人の女性が立ち塞がる。
「その必要はねぇよ。お姉さん」
スタスタ♪
戦闘者の集い場へ軽々と向かっていく。
シャランシャランイヤリングが同士が重なり音が鳴り、にゃはっ!と
笑いながら、柔らかさをアピールしつつ
「やあやあ、諸君達。面白いことするねー。表の裏の宣戦布告は胸が高鳴っちゃう。裏のギフトは無力化したよ。私が見える所は」
私以外の人は皆、怪訝そうに睨み付けている。
「睨むなよぉ。ただ遊びに来ただけじゃん」
「よお、1億5000万の女ー、なんかまた金額上がったか?俺なんてまだ2億ぐらいなのに」
全員がもうやめとけ。と彼を心の中で止めている。
・・・・この人にとって、"まだ"はどの辺にあるんだろう?
「ああぁ?なんだぁ陽楽、偉そうによぉ!柱から降ろすぞ!!」
「なんで?!ただの話だろ!」
彼に疑問符は消えない中、車椅子の男からありがたい助言が
「存在が気に障るんじゃあ無いか?」
「はぁ!?情利!なんだとてめぇ!今此処でお前の能力晒すぞ!!!!!!」
バチバチと火花が飛び散る、男二人を無視して話が進む。
「天性、何しに来た?」
「三音お前の感覚が飛びすぎなんだよなー。女性の気持ちそろそろ理解しないとモテねぇって言っててるだろ。あと勘違いすんな、私は困ってる女の子がいたから駆けつけたんだ。野郎の為じゃねぇ」
「分かってるなぁ天性!我の心配をして来てくれるとは!なんてやさ」
ギロリ
「ああ?症鬼なんか言ったか?」
ビクッ
「我、今、思い出した、父が持っているカゴだと思って商品を入れたら、
他人のカゴだった時の我」
「症鬼、何の話?」
「ここで殺し合っても意味ねぇよって事さ要するに」
「何故だ?俺は死ぬ気で此処へ来た。1柱を堕とせるなら、此処で」
「私はてめぇの要望なんて聞いてねぇよ。確かにお前なら1柱位は持っていけるだろうけど
アイツはどうなんだよ?どう考えても初心者だろう」
「え?そんなに初々しいですか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で見つめ合う。
私の目は徐々にジト目へと変わる。
「そうかもな。悪かった」
「・・・・・・・・・・ヒテイシロヨ」
「ん?何か言ったか?」
目をカッと見開き、無言で見つめる。
私は弱くない、雑魚じゃあ無い。それだけは言いたい。
「本当にどうした?正直怖いぞ」
この人にはどう足掻いても伝わらないそんな気がする。
この様子にため息を吐く天性。
「大人しくそっちも引け、次は邪魔しねぇから」
視線を奴らに向け、圧をかけるように言った。
狂態という男は、口角を上げた。
「ああそうだな、一度引こう。宣戦布告は受け取った。裏と表はお互い、社会のゴミという認識は共通の様だ。
それを掃除するには、戦略が必要とということらしい」
(意外とあっさりに身を引くんだな・・・・でも助かった)
「承知しました」
狂態と情利は先に踵を返す。
「じゃあ我も帰る」
「なら僕も帰る」
「・・・・はぁー確かに、今じゃあないもんな。てことで俺も帰る。帰ってまだまだやる事あるし。じゃあな三音。また会おうぜ」
去って行く裏の5柱、姿が見えなくなると、人だかりも消える。
「命拾いしたなお姉さん。コイツは一匹狼だからな、弱い人の事考えずに馬鹿な事する男なんだわ。
てことでさ、私と来ない?こんなクソ野郎置いてさー、一緒にドンパチしようぜ!って痛い!殴るんじゃねぇよ!」
「一応俺の後輩なんだが、それよりお前はアイツらの拠点は知っているのか?」
「候補はあるって感じだな・・・・でも教えねぇよ。さすがに。引き換えがあるなら考えるけど」
「そうか。じゃあいい」
(間違ってもついてくなよ、アイツらの後ろを)
やりかねないだけに、ヒヤヒヤする。
「ねぇねぇ!お姉さんはその武器誰?」
首を傾げる。
「男?女?」
「配布物なので性別は分からないですが、感覚的にオスだと思います」
「ぶっ!オスって!三音は確か女性だったよね」
「ああ」
「キスするの恥ずかしくないの?」
「「別になんとも」」
「ふーーーーーーーん、つまんねー男女。そこは物でも性別違ったら恥ずかしがって、
で仲良く嫉妬するのがお決まりだろうが」
お互い顔を見合わせて、よく分からないなと伝えている。
「変な漫画でも読んだか?」
「そのストレートな意見苛つくわ。ふん!私は帰る。じゃあな、命知らずどもめ」
「待て、最後になんで助けた?」
「てめぇに借りがあったのと」
チラリと彼女に目をやる。
「なんとなくだ」
スタスタと歩みを進めて行く。
「あ・・・・ありがとうございました!!」
お礼をする、でも振り向きはしなかった。
彼女の背中は、何か重々しくて何処か寂しさを感じた。
「・・・・悪かったな」
唐突の言葉にびっくりしたが、すぐに察した。
きっとあの人に言われたことを気にしてるのかも。
「そんな事気にしていませんよ。むしろ気づかされた感じで勉強になりました」
「そうか・・・順番に落としていこう。ゆっくり・・・そうゆっくり。その言葉を忘れていた」
夕暮れの遊園地、徐々に明かりが点いていく
「背中を任せて貰える様に頑張ります!」
一人は信頼を、もう一人は、目標を得て
帰り道を歩んでいく。
「他にも乗って行くか?」
「いいです。私は今速く帰って、特訓したいので」
「俺も付き合うよ」
「仕事色々あるくせに」
「少しぐらいなら、カウントされない」
「どんな理論ですか!?」
彼と共に戻ってきた表の世界に、安心感を覚え、
ふっと笑みが漏れた。