第二十二章【九十八】いよいよ面接が始まるでござるよ‼️
九月から白波女子高と有馬女学園の女子生徒が神聖女学園にやって来る。
神聖女学園と学園都市を総括している徳田理事長は、既にすべてを想定していた。
建設中だった学園の増築工事、学園寮の増築工事も、まもなく終わる。
旧体育館はメンテナンスを終えて宝田劇団が使用している。
旧体育館の地下要塞は極秘扱いになっていた。
神聖学園都市は農園に囲まれたお城のように聳え立っている。
神聖ショッピングセンターと国民住宅間を往来するリニアモノレールも延長が決まっていた。
ただ、理事長には悩みがあった。
それは、白波女子高と有馬女学園の生徒の能力だった。
徳田理事長は、陰陽師安甲晴美を呼び、最高会議を打診した。
徳田康代大統領も同席することになった。
会議は、学園寮の最上階にあるラウンジの会議室に決まった。
天女の天宮静女は康代から離れない。
女子高生警備は、会議室の外で待機となった。
安甲晴美は珍しく、紺色のスカートスーツ姿で理事長と会うことにした。
「安甲先生、忙しいところわざわざありがとうございます」
「いいえ、理事長。
ーー こちらこそ、お呼びいただきありがとうございます」
「さて本題ですが・・・・・・。
ーー 学校改革で神聖女学園と他校が一緒になることが決まっています。
ーー 安甲さんは、どう思われますか」
「私は、クラスを別にすれば問題ないと思います」
「やはり、混合クラスは難しいのですね」
「はい、今のところ」
「今のところとは、なんでしょう」
「私に、全員の面接をさせてください」
「そういうことですか」
「安甲先生のお好きにされれば良いでしょう」
「さて、康代、あなたは、どうしたいですか」
『神聖女学園の生徒の選抜問題は、安甲先生の管轄ですから、
ーー 私は口を挟みませんわ』
「そうね。それでいいわ。
ーー じゃあ、すぐに面接を開始してください。
ーー その結果、能力者がいればピックアップしてください。
ーー それ以外は、別クラスにしましょう」
徳田康代の母の理事長は、やんわりと手厳しい指示を出していた。
言葉を裏返せば、神聖女学園の生徒と一緒にするなという意味合いにも取れる。
『お母様、私は、これで失礼してもよろしいでしょうか』
「あなたは、いいわ。
ーー 前畑さんと明里さんをあとで理事長室に呼んで下さい」
『分かりましたわ、お母様』
徳田大統領も母には頭が上がらない。
前畑と明里は、理事長室に行くことになって緊張している。
理事長室の大きな扉をノックした。
理事長秘書が出て来て、前畑と明里を案内する。
「お二人とも、こちらの応接室で、お待ち下さい」
しばらくして、理事長がやって来た。
「あなた方、お二人には、学園のジョイント事業、
ーー つまり白波女子と有馬女学園の誘致をお手伝いしてもらいたいのですが」
「私たちでお役に立てれば・・・・・・」
前畑だった。
「あなた方お二人は優秀ですから大丈夫ですわ」
「ありがとうございます」
明里が言った。
「じゃ、お任せしますから、分からないことあれば私の秘書に相談ください。
ーー お話は以上よ」
「ありがとうございます。
ーー では、失礼します」
前畑と明里の大きな声が廊下に響いていた。
前畑利恵と明里光夏は無言で生徒会室への廊下を歩く。
八月二十五日午後、体育祭の前倒しの校内水泳大会が開催された。
かるた部の部員は、誰も選ばれていない。
AIがスケジュールを判断してくれたようだ。
生徒会役員の門田菫恋も参加せず、別の役員が進行係をした。
明里光夏が手配した女性カメラマンが録画を収録している。
神聖女学園は、男子立ち入り禁止となっている。
その頃、安甲晴美は、白波女子高の由良道江先生を訪ねていた。
「由良先生、突然で申し訳ありません」
「いいのよ。ジョイント事業関係ですね」
「はい、出来れば、明日にでも神聖女学園の教室で形式だけの面接をしたいのですが」
「神聖女学園の理事長の方針ということなら至急対応しますわ」
「それで、白波女子高生の人数は何人くらいでしょうか」
「以前は六百名だったのですが今は四百名になっています」
「じゃあ、一日五十名くらいね。
ーー 白波女子の誘致はその後だから九月中旬くらいになります。
ーー 神聖女学園は全寮制なので生徒は全員学園寮に入居していただくことになります。
ーー 先生たちも含めてね。但し、男性教師は入れませんの」
「白波女子高に男性教師はいませんので心配ありませんわ」
「では、明後日の二十七日より転居と面接を五十名ずつしましょう」
安甲先生と由良先生の打ち合わせは約一時時間で終わり二人は別れた。
安甲は、遅れて有馬女学園の松山八重先生を訪ねる。
空中浮遊タクシーであっという間の距離だった。
松山先生の説明では、こちらも定員割れしていて今は三百五十名になっていた。
白波女子四百名、有馬女学園三百五十名で七百五十名。
ギリギリには変わらないが学園寮の定員は大丈夫かと安甲は胸を撫で下ろした。
翌日、安甲晴美は理事長室を訪ね秘書に経過報告をした。
理事長は多忙な人で学園にいることは滅多に無かった。
安甲は徳田康代と会うことにした。
『母は、じっとしているのが嫌いな性格で、私もあまり合わないのよ。
ーー 先日は、呼び出されて青天の霹靂かと思ったわ』
康代は笑いながら話していた。
『ところで、先生、面接は大丈夫ですか』
「一日五十名で七百五十名ですから、十五日あれば大丈夫よ。
ーー 頑張れば、百名でも大丈夫よ」
『安甲先生、学園寮の入居は一日五十名が限界です。
ーー 豊下さんと明里さんに任せましょう』
「そうね。それが一番ね。
ーー あと、クラス替えは原則あまりしたくないの・・・・・・。
ーー 来年の春までは」
『私も安甲先生の意見に賛成です』
「いよいよ、面接が始まるでござるよー」
静女が笑っていた。
『静女、いつも楽しそうね』