【八十九】白波女子と有馬女学園がやって来る!
「康代さん、大変です!」
『どうしたの?利恵』
「それが、例の学校改革で、白波女子が神聖女学園と一緒になることが・・・・・・」
『それって、決定なの?』
「いや、生徒会の門田さんの未確定な噂ですが・・・・・・」
『門田菫恋ね。彼女も未来予知スキルあるから軽視してはダメよ』
「康代さん、知りませんでした」
『白波が来ることは、悪いことじゃあないけど、胸騒ぎがするのよ』
「まだ、何か、あるのですか」
『わからないわ、でも、しっくりしない影を感じるのよ」
『神聖学園都市が巨大でも、限界はあるわ』
「康代さん、その場合は・・・・・・」
『当然、受け入れたいわね』
「康代さん、・・・・・・たいですよね」
『利恵、それは、言葉のあやよ』
徳田康代の胸騒ぎを裏付けるように、門田菫恋が徳田の前に、生徒会の青い制服姿で現れた。
「徳田会長、お話があります」
『あっ、門田さんね』
「実は、学園統合問題で、白波に加えて・・・・・・。
有馬女学園が神聖女学園とジョイントされることが決まりました」
徳田は、言葉を失い掛け門田に質問をした。
『門田さん、それは、いつからですか?』
徳田大統領ですら細かなことまでは把握していない。
『そうですか・・・・・・なんとなく流れが分かりましたわ』
「私が、お伝えできるのは以上ですが」
『ありがとうね、門田さん』
徳田康代大統領は、織畑信美首相と前畑利恵副大統領を呼んで協議することにした。
『学校改革は知っているわね。
ーー でも、神聖学園都市が関係することがギリギリまで伝わらないのはいけないわね』
康代が追求して分かったことは初歩的な伝言ミスだった。
『そうね、人間は完璧じゃないわ。
ーー だから、ダブルチェック、トリプルチェックが必要なのね。
ーー まあいいわ、問題は悩むことじゃ無いのよ。どう対処するかなのよ。
ーー 利恵、学園都市の宿舎が足らなくなるわね』
「ギリギリですが、想定外で対処は難しいですが・・・・・・」
『国民住宅をどうにかならないかしら』
「国民住宅ですと、学園校舎と離れていますが」
『そうね、じゃあ、六棟目が必要ね』
結局、徳田康代大統領は、学園寮の増築に賛同した。
「康代さん、箱物行政になりますが」
『そうね、でも・・・・・・。
ーー これはジョイント事業の中の一環じゃあないかしら』
八月二十日、有馬女学園のかるた部顧問の松山八重が安甲晴美を訪ねた。
「安甲先生、ご無沙汰しています」
「松山先生こそ、わざわざ、ありがとうございます」
「実は、学校改革で・・・・・・。
ーー 有馬女学園と神聖女学園が一緒になることで伺っています」
松山の言葉に安甲は冷静に答えた。
「噂じゃあ無かったのですね。
「でも、うちのスタンスは変わりませんよ」
「・・・・・・」
「ですが、もしそうなれば、白波、有馬とうちが一緒ですね」
安甲の思わぬ言葉に松山は驚く。
「白波ですか」
「そうよ、白波よ」
「・・・・・・」
有馬女学園の松山先生の思惑は消えた。
神聖女学園、白波女子、有馬女学園の合同チームが結成される。
学校単位なら、レギュラー枠五名は、超難関となるが、かるた会チーム対抗なら選択肢が残っていた。
学校統合が決まらない時期、安甲、由良、松山の三人は事前協議を重ねた。
「神聖女学園かるた会代表の安甲先生、
ーー 今後のことを相談したいのですが」
「私からは無いわ・・・・・・。
ーー 先生たちは、どうしたいの?」
「私たちもありませんわ」
由良と松山が一緒になって答え苦笑いしていた。
「じゃあ、共同代表で如何ですか?
ーー その方が、都合的にもいいわよ」
安甲が二人に言った。
神聖、白波、有馬の非公式会議で三名の名前を連ね共同代表となることが決まった。
安甲晴美以外は、生徒の手前のプライドが優先されていた。
「じゃあ、みなさん、
ーー 次の本選は、敵校として対戦する最後の闘いになるわね」
安甲が宣言するように言った。
「そうね、人生、色々あり過ぎて、
ーー ぼーっとしていられませんわね」
由良が安甲を見ながら呟いた。
「確かに・・・・・・目まぐるしいわね」
安甲も呟き、深々と深呼吸をする。
由良と松山の二人は大きなため息を吐いた。
ワンピース姿の三人は、神聖ショッピングセンターの隅にある居酒屋に消えた。
「先生、今日は、私たちの再会と新しい出逢いに乾杯しましょう」
三人の酔っ払い女の声が暗い夜道に響く。
徳田康代たちは、学園寮で翌日の準備をしていた。
田沼と若宮は参拝のあとショッピングセンター経由で、居酒屋の戸を開けて中を進んだ。
「あら、安甲先生じゃあないですか? 田沼ですよ」
「あら、田沼先生、どうしたのですか」
「安甲先生、たまには、お酒を飲みたいこともあるじゃないですか」
「そうね、あなたたちのストレスは抑圧型ね」
「そうでしょう!だから、今夜は解放させたいのよ」
「動機は私たちと同じね。一緒に飲みませんか」
「よろしいんですか? 安甲先生」
「もちろん、構わないわよ。
ーー 紹介するわ、白波女子の由良道江先生、有馬女学園の松山八重先生です。
ーー しばらくしたら、先生たちの同僚になるわね」
「知りませんでした。田沼光よ。よろしく」
「若宮咲苗です。よろしくお願いします」
地球の守護神アセリアの神使セリエは、西和と南和の異変を監視しながら、天界の神使にテレパシーで連絡を入れた。
[メリエ様、南和も西和も、あまり時間が残されていませんが・・・・・・]
人類の二度目の砂時計は残り僅かとなっている。
西暦の終焉を神使セリエは見ていた。
天女の天宮静女の無意識も冷ややかな無表情で西和と南和を眺めていた。
[康代、時間は少ないかもしれないにゃあ・・・・・・]