【八十六】新しいかるた仲間、大スター朝霧雫!
明里光夏が安甲晴美かるた部顧問にお願いされて、校内かるた大会予選参加者の名簿を見ていた。
「明里さん、何人くらいになっていますか」
「えー先生、カウントミス無ければ・・・・・・ですが・・・・・・。
ーー 二百五十六名になります」
「じゃあ、十六名選抜までに何回対戦しますか?」
数学の天才前畑利恵が明里に助け船を出した。
「その計算なら、四回戦で十六名になるわね」
「前畑さん、助かるわ。
ーー でも、素人のレベルの生徒に、四回は厳しいわね」
「徳田さん、予選大会を二日に分けましょう」
安甲は徳田を見た。
『そうですね。
ーー 一回戦も分けないと会場に入らないわ』
「じゃあ初日の一回戦を三分割して、二回戦も二分割したら、どうですか」
前畑利恵が言った。
『さすが、利恵、計算早い!
ーー じゃあ、先生、初日は二回戦までにして、
ーー 二日目が三回戦と四回戦にしませんか』
「そうね、ベスト十六名を選抜する予選大会なら、それで十分よ。
ーー じゃあ、明里さん、その日程を生徒会の門田菫恋さんに伝えてもらえますか」
安甲の指示に明里が善処する。
「日程発表を明日の十八日に出来るように手配します」
「ありがとう、明里さん」
安甲晴美は、生徒会執務室を出て神聖神社に戻った。
辺りは、すっかり暗くなっていたが、境内は月明かりに照らされている。
翌朝の十八日、豊下と明里は、宝田劇団員三十名の受け入れ準備をしていた。
『明里さん、日程調整の依頼は、済んでいますか』
「康代さん、朝一で、生徒会の門田さんにお伝えしました」
『じゃあ、安心ね
ーー 今日の受け入れで全員になるわね』
「はい、生徒八十名、スタッフ七十名、
ーー 団員四百名と朝川さんたち四名ですから五百五十四名ですね」
『大昔のジャンボジェット機の定員に近いわね』
「康代さん、たまに面白いことを言いますね。
ーー そんな飛行機、博物館に行かないと見れませんよ」
『そうね、新幹線も博物館じゃあないと見れませんわね。
ーー じゃあ明里さん、豊下さん、準備が出来たら、最後の受け入れを済ませに行きましょう』
「じゃあ、拙者は先に行くでござるよー」
天女天宮静女は、転移魔法で既に移動していた。
リニア式水平移動エレベーターで三人は、茶色の棟の地下玄関に到着した。
受け入れ最終日とあって、関係者のヘルプが多い。
「朝川さん、今日の三十名で全員ですね」
「みなさんのお陰です。ありがとうございます」
学園都市の空中浮遊自動車発着専用滑走路に何台もの浮遊タクシーが到着している。
タクシーが棟の玄関前に到着した。
車から赤城麗華と同じくらいの背格好の美しい女性が降り立った。
「麗華、しばらくぶりね。元気だった」
「雫、今ね、かるたを習っているのよ」
「麗華が、かるたって想像しにくいわね」
「雫も、かるたしない」
「私は、中学高校までかるた部よ」
「じゃあ、神聖女学園のかるた会に入らない」
「じゃあ、その話はあとで・・・・・・。
ーー 引っ越しが終えたらね」
「徳田さん、こちらが朝霧雫です。宝田劇団の大スターよ」
『赤城さんと雰囲気が似ていて、惹かれますわ』
「雫、こちらが皇国の女子高生大統領よ」
「初めまして、朝霧雫です。お世話になります」
『徳田です。分からないことあったら、
ーー そこで案内している豊下や明里に聞いて下さいね』
「ありがとうございます。大統領」
『非公式は、徳田でいいわよ』
「分かりました。徳田さん」
朝川、夜神が、朝霧さんに耳打ちしている。
徳田も赤城も傍にいる大河原も訝しげな表情を浮かべた。
劇団員の受け入れが終わり、朝霧雫は四階のスター専用フロアに決まった。
『朝川さん、さっきのは・・・・・・』
「かるた会の話よ」
『なるほど、大きな声では言えないわよね』
「赤城さんと朝霧さんの会話が聞こえて耳打ちしたのよ・・・・・・。
ーー それで誘ってみたのね」
『じゃあ、今日から来られますか?』
「荷物を片付けたら行くそうよ」
『豊下に案内させましょうか』
「私が案内するわ」
赤城だった。
「そうね、赤城さん、積もる話がありそうね」
『分かったわ、安甲先生に伝えて置くわね。
ーー まだ大会、間に合うと思いますし』
神聖女学園かるた部兼かるた会では、顧問の安甲晴美が連絡事項を伝えていた。
「今日は十八日、予選大会は二十一日と二十二日に決まった。
ーー あなたたちは、二十三日と二十四日になると思うわ。
ーー そして今日、かるた会に宝田劇団から一名が加わることが決まった。
ーー じゃあ、夜神さん、紹介して上げてください」
安甲は夜神紫依に振った。
「宝田劇団の朝霧雫さんです」
夜神が朝霧の背中を押して朝霧が一歩前に出た。
「紹介されました、朝霧雫です。
ーー 中学高校でかるたをしていました」
「朝霧さんは、有段者ですか」
部員の一人が尋ねた。
「はい、B級です」
「じゃあ、B級は、唐木田、森川、姫乃、和泉さんに加え五人目となるわね。
ーー 私と徳田さんはA級だから、朝霧さん、私と対戦してみませんか?」
安甲晴美は、朝霧の実力チェックを考えていた。
一時間後、安甲の勝利で終わったがA級の安甲相手に五枚差だ。
「朝霧さん、神聖女学園かるた会があなたを歓迎するわ
ーー 二十三日の校内大会本戦から出場ください」
「私でよろしければ是非、お願いします」
「じゃあ、みんなは、今日も自陣かるたの練習と囲い手破りを練習しましょう。
ーー 徳田さんと私のを見て真似るのよ。見るのも勉強よ。
ーー あと、爪のお手入れには注意してください。
ーー 怪我をしないためにね」
「あのー、先生と徳田さんの手付きが速くて見えないのですが」
「分かったわ、白菊さん、少し遅くしますわね」
「先生、もっと遅くお願いします」
「見えないと真似できないでござるよー」
天女天宮静女にも見えないらしい。