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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
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【八十五】かるた大会予選組み合わせでござる!

 涼しげなワンピース姿の田沼光博士と若宮咲苗助手は、通い慣れたいつものルートで神聖神社に寄った。

境内に人影は疎で、隅にあるベンチに腰掛けた。


「先生、その本震隠れって、前震のことですよね」

若宮が田沼に言った。


「まあ、そう言う言い方もあるが、前震などは後から分かることだからね。

ーー 本震規模が比較的大きくないのに、大きな余震が頻発したら、若宮さんはどう思う」


「その場合、余震規模と余震頻度が不自然なので、()()()()を疑います」


「若宮さん、ピンポン!その通りよ。

ーー 例えば、マグニチュード六前半クラスの地震はね。

ーー マグニチュード七クラスの大地震の様に大きな余震が頻発する傾向はないけれど・・・・・・」


「先生、そうですよね。じゃあマグニチュード八なら」


「そう言う巨大地震は、影響の範囲が広いから次元が違うわ。

ーー マグニチュード六の千倍のエネルギーの解放になるわ・・・・・・。

ーー 若宮さん、とりあえず、お参りを済ませましょう。

ーー そのあとで、ショッピングセンターに寄りましょう」


「先生、今日は、何か?」

「ちょっと、ウインドウショッピングかな」


「いいですね」




 八月十八日、豊下秀美と明里光夏は、この日も学園寮の茶色の棟に向かった。


「光夏は、相変わらずリニアエレベーター苦手ですね」

秀美は、そう言いながら意地悪な苦笑いを浮かべた。


「秀美、エレベーターと言うのは、垂直方向に動くものじゃあない」


「そうね、ここのは水平方向なので負荷の方向が違うわね。

ーー ところで光夏、今日の到着予定は変更があって三十名になるわ」


「大丈夫よ、準備してあるから・・・・・・」


 二人がエスカレーターで地上に出ると、劇団責任者の朝川夏夜が待っていた。


「豊下さん、聞いていると思うけど、今日は三十名到着します」


「朝川さん、大丈夫です。明里が準備してるから心配ありません」


「そしてね、明日も三十名に変更になったの」


「明里、聞いている。明日も三十名よ」

朝川の言葉を聞いた豊下秀美が明里光夏に言った。


「分かりました。そのように準備します。

ーー 朝川さん、じゃあ、明日で劇団員四百名全員が到着ですね」


「旧体育館での本格稽古もできるので、一日前倒にしたのよ。

ーー そう、明日は、赤城、大河原と並ぶ、大スターが一名到着予定よ」


「と言うと、四階フロア組みですね」

豊下が朝川に尋ねた。


「名前は、朝霧雫(あさぎりしずく)よ、覚えて置いてね。

ーー 彼女の意向で最終組みになったのよ。

ーー 本当は私たちと一緒にと言ったのですが、頑固な女でね」


「朝川さん、朝霧さんに聞こえら、怒られますよ」

夜神が朝川を見ながら注意した。


「そうね、夜神さんの言う通りね。無駄口は(つつし)みますわね」




 朝川夏夜の背後で前日到着組みの団員たちが騒ぎ始めた。

みんな朝川たちと同じジーンズにティーシャツ姿で待機していた。


「朝川さん、空中浮遊タクシーが滑走路に到着したようです」

「じゃあ、私たちも、もうすぐね、夜神さん」


「はい、いつも通りにね・・・・・・」




 徳田康代は、安甲晴美かるた部顧問兼代表とランチの帰りに、かるた部への廊下を急いでいた。

珍しく徳田も安甲もカラージーンズにブラウス姿だった。


『先生、イベント消化するまで、何も起きないといいのですが』

「そうね、それが一番だけど・・・・・・難しいわね」


『かるた、体育祭、文化祭、宝田公演と目白押しです』

「徳田さんは、よく体が持つわね」


『徳田幕府と生徒会、そして私のキャビネットが支えていますので 』

「そうね、一人じゃあ荷が重いわ」


 徳田が部室の扉を開けると唐木田(あおい)部長と目が合う。

夏休み中もあって唐木田もジーンズ姿だった。


「あら、徳田さん、今日は早いわね。

ーー 安甲先生と徳田さんがジーンズって珍しいわ」


『唐木田さん、いつもと変わらないが、唐木田さんもジーンズじゃない』


「夏休みくらい、制服から解放されたくなって」

 唐木田は、そう言って他の部員を見た。

かるた部の部員たちは、示し合わせたかのようにジーンズに半袖シャツだった。


 安甲が部員を見回し言った。


「朝川たちは、まだのようだから

ーー 個人個人で、自陣かるたの配置練習をしてくれ」


 部員たちが百枚のかるたをかき混ぜて二十五枚を選び出した。


「毎回、毎回、思うようなかるたが来ないわ」

白菊が愚痴をこぼした。


「白菊さん、大山札と一字決まりの位置は決まっている?」

「はい先生、ここに一字決まりで、大山札はここです」


「相手との距離を考えれば、その位置は悪くないけど、

ーー あなたにとって一番近い位置なの」


「それなら、もう少し左かな」

「そうね、両端がベストとは限らないわね」


 朝川、夜神、赤城、大河原の宝田大スターが入って来た。

慣れとは怖しいもので部員には日常の光景になっている。


「安甲先生、遅れました」

夜神だった。


「じゃあ、そこの空いているところに座ってください。

ーー 全員が揃ったので、練習試合をしましょう。

ーー 今日の読手は、私と徳田さんと唐木田部長ね」


「第一試合の対戦カードを発表するわ。

ーー 敬称は省略よ。

ーー 呼ばれたら、対戦相手と並んで」


 安甲は、そう言うと次々に名前を上げた。

「じゃあ、言うわよ。

ーー 徳田、唐木田。

ーー 姫乃、森川。

ーー 和泉、夏生。

ーー 春日、三笠。

ーー 小倉、白菊。

ーー 難波、葦田。

ーー 朝川、山川。

ーー 夜神、篠原。

ーー 赤城、峰。

ーー 大河原、松」


 安甲(あきの)は、早口で二十名の名を呼んだ。


「以上の組み合わせで、練習試合よ。

ーー 今日も、守りかるたで自陣攻略を徹底してくれ。

ーー 明日からは、攻めも少し練習してみよう」

ーー じゃあ、みんな、かき混ぜて、かるたを並べたら、暗記時間十五分よ」


 安甲は、ホログラム携帯の時間を見て右手を上げ言った。

「暗記時間終了よ」


 部室の空気がピンと張り詰められ静寂に包まれた。

部員は前傾姿勢の準備をして腰を持ち上げる。




 安甲晴美顧問が序歌を詠み上げる。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・

いまを春べと 咲くやこの花」


 一枚目は一字決まりの空札(からふだ)だった。


「みんな、空札のお手付きに注意よ、分かっているわね」

安甲の大きな声が部室に響く。


「じゃあ二枚目ね・・・・・・」


「今日も安甲先生の気合いは凄いでござるよ」


『そうね静女』


「じゃあ、二試合目の読手は、徳田さんよ」


『分かりました。先生』




 練習が終わり、部員は学園寮に戻るが、徳田と安甲と静女と女子高生警備は生徒会室に寄った。

予選会のトーナメントが気になっていた。


 生徒会役員の門田菫恋(かどたすみれ)と数名が残っている。


「門田さん、予選トーナメントは出来ていますか」


「明里さんに、お渡ししてあります」


「どうもありがとうございます」

 安甲は、照れながら徳田と一緒に隣の執務室に入った。




 豊下秀美と明里光夏が会議用のテーブルで明日の到着準備の支度をしている。


『光夏、悪いけど、

ーー 予選トーナメントを安甲先生が見たいと言っているわ』


「安甲先生、これですが・・・・・・」

「これじゃ、一日では、難しいかもしれないわね

ーー 予備日を使うことになりそうね」


 全国大会団体戦優勝のあと、学園内ではかるたブームが起きていた。


「嬉しい悲鳴でござるよー」

静女(しずめ)の呟きに安甲顧問が微笑んでいた。

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