【七十六】超深層意識のお告げと西和南和の異変!
西和大陸の南にある南和大陸で、大きな地震が発生して多数の犠牲者が発生していた。
アンデー山脈の一部が崩壊したが津波は発生していなかった。
西和大陸の群発地震は変わらず、ロックー山脈の裾野を揺らしている。
「アセリアさま、南和で大地震が発生していますが・・・・・・」
「セリエよ、心配するのは、まだ早い」
「時期尚早ということでございますか」
「そうじゃないが、まだだ」
「中間世界には如何されますか」
「しばらく、待てば良いじゃろう」
「失礼しました」
神使セリエは、地球の守護神女神アセリアの前から消えて光になった。
西和ネットニュースのスタッフが右往左往していた。
「西海岸の水没事件が拡大して、街の一部の境界ラインに拡大していますが・・・・・・」
「映像はあるのか」
「はい、これですが」
「ネット配信は出来ているのか」
「いいえ、回線トラブルで未だ・・・・・・」
「ドロンを飛ばして、最新映像を入手してくれ」
「はい、早速」
一方、神隠し事件でゴーストタウン化した街では、残された住人がパニックになっていた。
魂の穢れた者への救済を神さまたちは準備していない。
神使セリエは地球の守護神の命に従い、地球の裁きの経過を監視するだけだった。
風神、水神、雷神は、皇国の八百万の神々と共に、西和大陸の状況を静観している。
巨大な嵐が西和大陸の西海岸に接近していた。
東海岸にも同じ規模の嵐が接近している。
内陸ではモンスター級の竜巻が数十という数で街に迫っていた。
その上空ではスーパーレベルの雷ーー メガフラッシュが幾度も発生した。
西和は、地震以前に大自然の反撃の的となった。
神々の裁きが容赦なく降り注いだ。
西和ネットニュースは、セリエと徳田政府の抑制政策で皇国の国民には届いていない。
事件事故のニュースを聞いて良い気分になる人間は一人もいないからだ。
個人個人の潜在意識による自己創造を、他者暗示が阻害するリスクを徳田政府は回避した。
集団の幸せに対する祈りを恐怖心から解放させることが結果としてプラスになると徳田康代大統領と女子高生キャビネットは考えていた。
望むことを考えながら、望まないことを考える人間はいない。
徳田康代大統領の周囲にいる人間たちも同じ人間たちが集まっている。
類は友を呼び、善は善人を引き寄せる宇宙の法則は神々の法則だった。
『情けは人の為ならず か!・・・・・・」
康代のひとり言だった。
徳田康代は、豊下秀美や明里光夏と一緒に劇団員の到着を、茶色の学園寮前の玄関で待っていた。
「康代さん、八月八日到着は、二十名です。
ーー 累計百六十名になります」
『ありがとう、秀美。
ーー まだまだ団員の半分にもならないのね』
「康代さん、でも予定よりは早いですが」
「あら、光夏、そうなの」
「生徒もスタッフも全員、入居済みですから・・・・・・」
『そうね、朝川さんたちの対応で早くなっているわね』
朝川、夜神、赤城、大河原のスター女優がやって来た。
「あら、徳田さん、珍しいわね」
『昨夜は、嫌な夢で魘されてね』
「あら、嫌だ。私もよ」
夜神が答えた。
「徳田さんは、どんな夢」
『よく覚えてないけど津波の夢・・・・・・』
「あら、嫌だ、私も同じ夢よ」
朝川だった。
「夜神さん、朝川さん、同じ夢なの、私もよ」
赤城と大河原が続く。
『夢だから、気にしない方がいいわよ』
康代たちの井戸端会議が終わった頃、劇団員を乗せた浮遊タクシーが、次々に学園寮玄関前に到着した。
「赤城さん、大河原さん、久しぶりです・・・・・・」
劇団員たちに声を掛けられた二人は微笑みを返していた。
豊下秀美と明里光夏が劇団員たちに鍵の受け渡しを始めた。
顔合わせを済ませた徳田康代と夜神紫依たちはかるた部へ急いだ。
康代の案内で地下通路のルートを選んだ。
『夜神さん、遠いので、水平移動用エレベーターが便利よ』
「知りませんでした」
『欠点は、途中下車が出来ないわ』
「じゃあ、どこまでですか」
『学園校舎の地下玄関前です』
「雨の日には便利ね」
『茶色の棟は、学園寮の中でも極端に遠いので水平移動エレベーターが使えるの
ーー でも、大量移動が出来ないから、運次第ね』
「水平移動エレベーターですか?
ーー 神聖学園都市は最先端ね」
朝川だった。
徳田康代たちが、かるた部の部室に到着して、練習が始まった。
安甲晴美顧問が、読手を止めた。
「みんな、聞いて。
ーー 見ているとお手付きが多いわよ。
ーー お手付きは、自滅の入り口への扉よ。
ーー お手付きするなら取らない方がましよ」
安甲は注意を告げ再開を読手に言った。
「じゃあ、春日さん、読手を続けてください」
指導を終えた安甲が、夜神と朝川に注意した。
「初段の認定試験は、難しくないけど。
ーー 試合経験のないみなさんには、登竜門よ。
ーー 三試合して、二勝すれば合格よ」
「じゃあ、C級の夏生さん、春日さん、三笠さんの以上の三名は、明日の練習で、
ーー 夜神さんと朝川さんのお付き合いを交代でして上げてください」
かるた部の練習を終え徳田大統領と安甲晴美は、神聖神社に向かった。
側近の天宮静女と女子高生警備五名も付き添っている。
『先生、昨夜、夢で魘されたの』
「そうか、徳田さんもか。実は私もなのだ」
『朝川さん、夜神さん、赤城さん、大河原さんも同じ夢でした』
「人間の超深層意識は共有しているから・・・・・・。
ーー 不思議じゃあないが意外と時間がないかも知れないわね」
『どのくらいですか』
「多分、六十日以内じゃないかな・・・・・・」
『じゃあ、秋の文化祭ギリギリですか』
「そうね。文化祭が間に合うといいわね」
康代は、当面の課題をクリアしてから次へと進みたいと思った。
「文化祭は間に合うでござるよー」
天宮静女が励ましている。
『静女は優しい天女さまね・・・・・・』