【七十三】第三の新しい時代への準備でござる!
学園の食堂でかるた会の面々と徳田康代は遭遇した。
「徳田さん、それはなんですか?」
『秀美のアイディアでね。
ーー 納豆にお水を入れた物なの・・・・・・』
「姫乃さん、冷水なら、もっと美味しく頂けますよ」
秀美が照れながら話した。
「どんな、お味なの?」
姫乃が聞く。
「納豆に卵を入れたようなお味に似ているわ・・・・・・。
ーー ほら、ご飯にバターを乗せて掻き混ぜて、お醤油を入れたことある」
「いいえ、ないわ」
「そうすると、あら不思議、卵かけご飯のお味に似るのよ・・・・・・。
ーー まあ、キャビアの代用がランプフィッシュのと同じ代用技ね」
「なるほど、面白そうね。
ーー じゃあ、私も試してみるわ」
姫乃に続いて、和泉、朝川、夜神、赤城、大河原も続く。
しばらくして、秀美がみんなに声をかけた。
「どうですか?」
「水の分量がよく分からないけど、食べやすいわ」
朝川だった。
「水を入れる前より、絶対、食べやすくなっている」
「夜神さん、本当に美味しいわね」
赤城の言葉に大河原が頷く。
『秀美、これ、正式に企画に上げましょう』
「じゃあ、光夏にネットを任せませんか」
『そうね。光夏に任せて、全国生徒会会議にお願いすれば良いわね』
「分かりました。あとで、してみますが・・・・・・。
ーー 今、普通の学校は夏休みですが」
光夏が答えた。
『いいわよ。休み明けでも』
「では、休み明けに」
『じゃあ、光夏、秀美、また後でね』
「かるたですか?」
『そうよ。秀美、その前に、御手洗に寄るわ』
じゃあ、と言って、秀美と光夏もついて来る。
夜神紫依たちは、かるた会のある“かるた部”の部室に直行した。
和泉姫呼が頻りにあくびをしている。
「姫呼、寝不足ですか」
「いいえ、違うのよ、水景」
「違うって・・・・・・」
「多分、ご飯のあとで眠気が押し寄せて来たのよ」
朝川夏夜が和泉にアドバイスをした。
「和泉さん、それ食後血糖よ」
夜神紫依が続く。
「昔のことだけど、糖尿病とか言う病が流行った時代・・・・・・。
ーー 白米の糖分が問題視されたのよ。
ーー 今じゃあ、精神医学の貢献で多くの病が消えたけどね・・・・・・。
ーー でも、糖分と眠気の関係は変わらないのよ」
「そうなんですか。
ーー 糖分摂取で眠くなるなんて知らなかったわ。
ーー ありがとうございます。夜神さん」
和泉姫呼は、昼食の食後血糖に注意したいと思った。
アニメの影響で糖分摂取過多になるところだった。
かるた部に着くと、安甲晴美たちがいた。
『先生、食事は済まされましたか』
「ええ、済んでいるわ」
『すれ違いかな・・・・・・』
「二階で済ませたのよ」
『私たちは、一階にいました』
「あなたたち、糖分に注意するのよ・・・・・・。
ーー 眠くなると頭が朦朧として試合にならないからね」
『夜神さんも同じことを言っていました』
「そうなの、夜神さん」
「ええ、私は現役時代、台詞を覚えるのに眠気が天敵でしたので、
ーー 糖分について、よく調べたことがあったのよ」
「そうだったんですね。
ーー じゃあ、みんなも聞いて、大会前の食事には注意して。
ーー 眠気を起こす、糖分の高い食事には注意するのよ。
ーー エネルギー摂取は十分必要よ。みんなは若いから糖分摂取は問題ないけどね」
安甲は、考えながら続けた。
「あと、こんな話があるわ。
ーー ある学校が昼食の糖分摂取を考えた献立にした結果、
ーー 生徒の成績が軒並みに上昇したとか」
『先生、それ進学校の話でしょう。聞いたことあるわ』
「徳田さんの言う通りよ。
ーー これは科学なのね。でも昔話ね。
ーー まあ、眠い人もいるけど、練習始めるよ」
西和ネットニュースが、西海岸の砂浜に出現した間欠泉を報道していた。
神使セリエたちの通信妨害で、西和以外の国に伝わることはなかった。
「西和の西海岸に突然出現した間欠泉は、その後も増え続けています」
「いったい、何が起こっているのでしょうか」
西和ネットニュースが突然、中断する。
神使のセリエは、天空から西海岸を見ていた。
セリエが徳田康代にテレパシーを送っていた。
[いよいよ始まる気配が起き始めたのじゃ]
「セリエさま、地震ですか」
[いや、地震の前だが]
「じゃあ、何ですか」
[大陸に穴が空き始めたようじゃあ。
ーー そこに超巨大な嵐が直撃するようじゃあ。
ーー もう、砂時計は制限不能のようじゃな]
セリエのテレパシーが続く。
[まだ、康代たちの出番じゃないから安心して待つのじゃよ。
ーー 世界が終わったあとまで待つのじゃあ。
ーー 西和に”関わるな“を守るのじゃあ]
「分かりました。セリエさま」
神使セリエと徳田康代のテレパシーが終わった。
かるた部の練習を終えた徳田康代は、陰陽師の安甲晴美と生徒会執務室に寄った。
「徳田さん、何か重要な話ですか」
『そうですね。執務室レベルですね』
二人は執務室の大きな青いソファに腰掛けた。
執務室には、天女の天宮静女を入れて三名だけだ。
『安甲先生、思ったより早く、西和大陸の大掃除が始まりそうです』
「それだけか」
『はい、今言えることは』
「大変なことになるのだな」
『はい、東都の永畑火山とは比較にならないことが起きますから』
「分かっていても、いざ来るとなるとぞっとする」
『はい、先生が傍にいて、私も安心出来ます』
「私は、何も出来ないのですよ」
『東都は、先生のお陰で魔物も封印出来ていますから』
「徳田大統領は、これからどうしたいの?」
『私がすることは、皇国の民の幸せを維持するだけです。
ーー そのために、不安を誘引する情報を封鎖します』
「負のエネルギー抑制政策のことですね」
『その通りです。先生』
遮光カーテンの隙間から、夕日が差し込んでいた。
安甲晴美はカーテンを少し開いて大江戸平野の山々を赤く染めている夕焼けを眺めている。
「天罰か・・・・・・。
ーー 西和の短い歴史も終わるのだな」
安甲が呟く。
『はい、これから第三の新しい時代が始まります。
ーー その前に・・・・・・』
「西暦が終わるのでござるな。
ーー 静女は皇国の新しい時代の生き証人になるのでござる」
静女の紫色のロングヘアが夕日に輝き天女の妖艶さを増していた。