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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
72/169

◆第四部 第十八章【七十二】西和大陸、秀美の水納豆

 西()()()()()()()()()()()()()が群発地震を報道していたが、皇国には伝わっていない。

徳田康代大統領と神使セリエに()って、西和の全ての通信が遮断されていた。


 西和の西海岸では、()()()が異常発生して、神隠しで飼い主が消えた犬が()()()している。

 西和に真夏の雪が降り積もり、真冬に逆戻りしていた。

真夏の荒れ狂う雪嵐に視界が遮られる異常気象が、西和大陸全土で起きていた。




 神隠しから外れたリポーターが、神隠しから外れた住人にインタビューをしている。

正確には、住民に(ふん)した仕込みのエキストラだった。


「ここ西海岸では、先日から、不気味な地鳴りが聞こえるようになりました。

ーー そして、今日は、ご覧のように悪天候となっています」


「地鳴りは、いつから聞こえてますか」

「昨日からですが・・・・・・」


「どのあたりからですか」

「この先の丘のあたりと思います」


 ヤラセ撮影の時だった。


[ゴーゴゴー・・・・・・ゴー]


 唸るような音が撮影班のマイクにも届いている。


「ちょっと危なそうなので・・・・・・。

ーー 中継を中止にします」


 インタビューを終えたリポーターは海岸を逃げるように足早で移動した。


 リポーターの足元から温泉の間欠泉のような高温ガスが砂上から吹き上がる。

リポーターは、数十メートル以上も()ね飛ばされ砂浜に叩き付けられた。


 カメラマンは、一瞬の出来事の様子を撮影していたが助ける素振りを微塵(みじん)も見せない。

倒れた男は、ぴくりとも動かず、うつ伏せになっていた。

それから、しばらくして、男の死亡が確認された。


 地震は次第に頻度を増して、毎時百回の群発地震に発展した。




 ()使()()()()は、並行世界(パラレルワールド)()使()()()()の前に瞬間移動して現れた。


「レリアさま、セリエです。ご無沙汰してます」

「セリエさま、お久しぶりです」


「ところで、西和では、そろそろ動きが激しくなって来ています」

「次元スリップは、ほぼ完了していますが漏れがあるかは分かりません」


「もしも、漏れがあった場合は、中間世界行きになるのですね」

「そうなると思います」


「分かりました。あとは、中間世界にお願いしておきます」

「セリエさま、ご苦労様です」

セリエは消えて光になった。




 次に神使セリエは、瞬間移動して、()()()()使()()()()の前に黒猫の姿で参上した。


「メリエさま、西和の西海岸で初の犠牲者が発生しています」

「セリエさま、わざわざありがとうございます」


「まだ、大きな前兆にはなっていませんが動き出した模様です」

「じゃあ、こちらも、中間世界の裁きの庭を準備せねばならないのですね」


「そして、並行世界の神使のレリエさまにも確認したのですが

ーー 並行世界への次元スリップに漏れがないとは断言出来ないそうです」


セリエにメリエが答えた。

「と言うと、善の魂が裁きの庭に混ざっている可能性もありと言うところか」


「左様ですが・・・・・・」

セリエが珍しく言葉尻を濁した。


「それなら杞憂(きゆう)じゃあ。

ーー 魂のフィルターは騙すことは出来ぬからな。

ーー 仮に、裁きの庭の判決が降っても。

ーー その場合は、転生の扉が対応することになるよって」


「メリエさま、お手間をお掛けしました。

ーー ではまた、動きあれば、お伝えします」

「セリエさま、ご苦労であった」


 神使セリエは、消えて光になった。




 神使のセリエが黒猫の姿で、生徒会室にいる康代の前に現れた。 


「康代よ、西和の西海岸で大きな動きがあったのじゃ。

ーー 大地震があれば、これから始まる天変地異の合図になるじゃろう。

ーー 繰り返すが、意外と早いかも知れないのじゃよ。

ーー この情報は、皇国には伝わらないので安心しているのじゃよ」


『セリエさま、ありがとうございます』


 神使セリエは、消えて虹色の光になって金色に輝いている。


 天女天宮静女(あまみやしずめ)が、ポカンとセリエの消えた場所を眺めていた。


「セリエ殿、神々しいでござるよー」




 豊下秀美と明里光夏が、八月六日の団員二十名を受け入れて生徒会室に戻って来た。


「康代さん、ちょっと遅いですが学食に行きませんか」

秀美が言った。

『そうね、今からなら間に合いそうね』


「康代さん、夏休みですが・・・・・・」

光夏が康代に尋ね躊躇う。


『ここは全寮制なので、学食に夏休みはないのよ。

ーー 従業員はシフトで働いているので休暇は心配ないのよ。

光夏は繊細ね』


「じゃあ一階の学食に行きましょう」

光夏の横にいた秀美が元気な声で康代を促す。


『秀美、また気を遣っているでしょう』


「分かりました。

ーー 康代さんが一階の方が部室に近いかと思って、えへへ」


『ありがとうね、秀美』


 康代、秀美、光夏たちが学食前に到着した。

織畑信美と前畑利恵がメニューを見ながら迷っている。


「信美さん、何しているんですか」

「秀美、聞いてよ。利恵が納豆が健康にいいと言うんで。

ーー 卵納豆よねと言うとね、

ーー 水納豆よと変なことを言うのよ」


「信美さん、水納豆、めちゃくちゃ美味しいですよ。

ーー 卵も水も水分でしょう。

ーー だから味わいが卵納豆みたいになるのよ」

秀美の説明に信美が頷く。


「じゃあ、卵代が浮きますね」

信美が呟く。


「卵農家さんには、悪いんだけど、本当に美味しいのよ」

秀美が駄目(だめ)押しする。


「誰の考案ですか」

信美が秀美に尋ねる。


「実は、()()()が子どもの頃に、間違えて納豆に水を入れてしまったのよ。

ーー それで掻き混ぜたら、卵を入れた時のように泡立って、

ーー もしやと思い、お醤油を入れて掻き混ぜて食べてみたの。

ーー そしたら、開けてビックリ玉手箱のように美味しいのよ。

ーー そして最近ね、利恵にも試して貰ったら目を丸くしていた訳」




 豊下秀美は珍しく饒舌(じょうぜつ)になっていた。

その証拠が、()()()()()だった。


「秀美さん、いつから“あたし”言葉になりました?」

「光夏は知らないのよね。

ーー 秀美は何かに夢中になると一人称の表現が変わるタイプなのよ」

 利恵の説明に光夏は笑いを(こら)えていた。


 食堂では、康代が秀美に教わった水納豆を試していた。

『これ、いいね。次の企画で流行らせましょう』

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