【六十九】神聖女学園かるた会でござる!
徳田康代大統領と安甲晴美は生徒会執務室で、神聖女学園かるた会の設立を打ち合わせしていた。
「徳田さんのお陰で決心出来たわ」
『かるた会を立ち上げるのですね』
(※徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。『』)
「かるた会なら年齢枠も無いから、
ーー 私も含めて劇団の人達にも好都合になるわね」
『かるた会の練習間隔はどうされますか』
「とりあえず、毎週火曜日の夜にしましょう」
『金曜、土曜、日曜は、公演と重なりやすいですね』
「木曜日や水曜日は、準備に忙しいでしょう」
『安甲先生のお気遣い、流石です。
ーー ところで名称は、どうされますか』
「そうね・・・・・・神聖女学園かるた会でいいでしょう」
『それなら、中等部も大学生も一般も入会出来ますね。
ーー 練習場所は、どうされますか』
「当面は、かるた部の部室でいいでしょう」
『そうですね、当面ですね』
安甲と徳田は、かるた部の部室に向かった。
朝川と夜神は、スタッフの到着を学園寮前で待っている。
この日は、団員の到着がないので、赤城と大河原はかるた部に先に行くことになった。
豊下と明里は、鍵と見取り図を持ちながら喋っている。
「八月三日のスタッフ三十名の到着で、
ーー スタッフ七十名全員完了ですね」
「秀美さん、今回のスタッフ三十名は、二階と三階に分かれます」
「AIが割り振っているから大丈夫でしょう」
「光夏の杞憂ですね」
「二階、三階が、スタッフと幹部のフロアで、四階がスターフロアですね」
「一階と最上階の十六階のラウンジを除くと・・・・・・。
ーー 団員と生徒に割り振られたフロアは五階から十五階ですから定員以内よ」
「フロアあたり五十室で合計七百室もありますね・・・・・・」
「光夏、暑さで計算ミスはよくあることですよ」
「秀美は、優しいから助かるわね」
しばらくして、スタッフ三十名が到着した。
朝川と夜神は、スタッフを確認すると、かるた部への廊下を急いだ。
『夜神さん!』
「あっ、徳田さん、偶然ね」
『今日は、部室に着いたら、みんなにビッグニュースがあるわよ』
「何ですか?」
『あとで、先生が発表しますから』
水色に星柄のワンピース姿の安甲晴美が部室に入ると、徳田、朝川、夜神が続いた。
朝川と夜神は、グレージーンズに青いティシャツを着ている。
赤城、大河原と他の部員は、安甲の到着を待っていた。
「みんな、大事な話があるから聞いてくれ」
安甲が男口調で話す。
徳田康代が安甲晴美の横でニコニコしていた。
「このかるた部は、このままだけど、別にかるた会を設立することになった。
ーー 名称は、神聖女学園かるた会となる。
ーー かるた会の入会は強制じゃない。
ーー レベルも自由だ」
安甲は、宝田劇団の参加者を見ながら続けた。
「練習は、当面、毎週水曜日の十八時以降とする。
ーー かるた会代表は、私、安甲晴美が担当する。
「安甲先生、じゃあ私たちも入会出来るのですか」
「赤城さんも、大河原さんも、
ーー もちろん夜神さんや朝川さんも入会出来ます」
「名称はともかく、一般のかるた会と同じですから」
「なるほど」
夜神が呟いた。
「じゃあ、男性も入れるのですか」
「朝川さん、男性の入会は受け付けていないので心配ありません」
大河原が安甲に尋ねた。
「練習場所は、どうなりますか?」
「当面は、部室を併用しますが、
ーー ゆくゆくは別室が必要となるでしょうね」
「安甲先生、私、入会します」
「赤城さん、嬉しいわ。ありがとうございます」
赤城麗華の一声に、大河原百合、夜神紫依、朝川夏夜が続いた。
唐木田葵かるた部部長が右手を上げた。
「私も入会します」
大きな声に周囲が反応した。
堰を切ったように、残り部員全員が挙手をして、唐木田に続いた。
「じゃあ、かるた部十六名全員ね」
ーー サポートは、今まで通り、唐木田部長と森川副部長にお願いするわね。
ーー 徳田さんも、姫乃さんも、和泉さんも二足の草鞋じゃあ大変ですしね」
『先生、ありがとうございます』
徳田、姫乃、和泉の三人が、ほっとしている。
「じゃあ、今日も基本練習から始めるわよ。
ーーその前に、確認したいことがあるの。
ーー みんな、競技かるたの取り札を持っていますか」
「先生、普通のかるたならあります」
「夏生さん、普通のかるたって、上の句と下の句が書かれたかるたよね」
「はいそうですが」
「そのかるたじゃあ、一人練習が出来ないわ」
「どう言う意味ですか」
「自陣の配置練習が出来ないのよね」
B級の唐木田部長が夏生に助言した。
「配置練習で戦略を考えるから、
ーー 普段から下の句に目を慣らす必要があるわ」
「唐木田さん、準決勝で惜しかったわね。
ーー 次はライバルが減っているからチャンスよ」
「先生、ありがとうございます」
「じゃあ、みんな、競技かるたの取り札を持っていない人、手を上げて」
宝田の四人と部員の半分が挙手をした。
「唐木田さん、購入方法を教えてあげてください」
「唐木田さんから教えてもらったら、
ーー 持っていない人は、全員取り札を購入してください。
ーー そして、購入したら、練習して、昇段の大会に出てください。
ーー 校内大会前にも、いくつかありますから」
安甲は、部員全員に聞こえる大きな声で続けた。
「具体的にはーー無段者が初段を目指す認定の公式大会が八月十日にあるわ。
ーー 宝田の四名は、校内大会の経験を活かし、あとの大会を推薦するわね。
ーー 対策がないままだと無謀ですから、私はみんなに勝って欲しいだけ」
安甲は、唐木田と夏生を見て続けた。
「じゃあ、唐木田部長、練習を始めてください。
ーー 今日は、夏生さん、読手にチャレンジしてみてください。
ーー みなさんは、読手が変わることを体験して学習するのよ」
かるたが手渡され掻き混ぜが終わり、配置が終わった。
「暗記時間は十五分よ」
夏生瑤子が序歌を詠み上げた。
「神聖女学園かるた会でござる」
徳田康代大統領側近の天女天宮静女が呟いた。