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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
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【六十三】かるた練習会!その一 七月二十九日

 安甲(あきの)晴美かるた部臨時顧問から徳田康代に連絡が入った。


「あっ、徳田さん、安甲ですが、今、いい」

『先生、大丈夫ですが』


「白波女子の打診は、後日に連絡が入る予定ですが・・・・・・

ーー さっきね、別の女子高から練習試合の申し込みがあって」


『ええ、練習試合ですか』

「そうなの、そこで、校内大会のことを伝えたらね。

ーー 先方が、是非参加したいと言うの」


『どこの女子高ですか?』

「準決勝の時の有馬女学園って言ってたわ。

ーー 徳田さん、覚えている?」


『はい、あそこは東都からも近いですから』

「でね、徳田さん処暑の校内大会の本選に加わることになったのだけど。

ーー いいわよね」


『先生、これ既に受けていませんか?』

「さすが、徳田は勘がいいな」

安甲は急に男口調になった。


『普通に分かりますが、白波参加の件を伝えてありますか』

「それは、大丈夫よ」


『先生、私からも、予選大会にゲスト参加をお願いできますか?』

「どなたですか」


『宝田劇団の朝川さん、夜神さん、赤城さん、大河原さんの四名ですが・・・・・・』

「宝田の大スターじゃない」


『赤城さんと大河原さんは現役ですから』

「そうね、怪我の注意だけ気をつけていれば大丈夫ね」


「予選も本選も人数多いので、抽選が公平ね

ーー 強い者は最後に残るから心配ないわね」

『先生の仰る通りです』


「じゃあ、白波から連絡があったら、あなたに電話しますね」




 翌日の七月二十九日の午後、宝田劇団の生徒の第二陣二十名が学園寮に転居して来た。

前日と合わせて四十四名が転居を完了した。


 前日に転居した生徒たちが学園都市を案内した。

豊下秀美と明里光夏がサポートすることになる。


 かるた部の部室は、部員の増加と優勝で大きな部屋が割り振られることになった。

この日の部室には安甲臨時顧問と新人八名はいない。


『最初に、宝田劇団の人を紹介しますわ

ーー 左から、朝川さん、夜神さん、赤城さん、大河原さんです』


「夜神です。かるた未経験ですがよろしくお願いします」

夜神に続いて他の三人が軽く挨拶をした。


徳田が続けた。

『夜神さん、部員を紹介しますわね。

ーー 左から、かるた部の部長の唐木田さん、副部長の森川さん、

ーー 部員の夏生さん、春日さん、三笠さん、

ーー そして、私と姫乃さんと和泉さんです』


「あなたたちも競技かるたをしていたの?」

夜神が言った。

「はい、中等部時代からしていました」

姫乃が答えた。


「台詞は、暗記勝負のところもあるから似ているわね」

「夜神さんの仰る通りです」


『じゃあ、唐木田さん、姫乃さん、和泉さん、森川さん、

ーー かるたの練習相手をよろしくお願いしますわ』




 徳田は、かるたのセットを畳に置き、夜神たちに説明する。


『先ず、百枚のかるたを裏返して掻き混ぜます。

ーー それから、お互いに五枚ずつを五回に分けて、

ーー 合計二十五枚のかるたを取ります』


徳田が説明を続ける。

『かるたを表向きにして自分の陣に並べます。

ーー その時、三段にして左右均等に並べるのが基本形ね』

ーー 並べ終えたら、自陣と敵陣の札を暗記するのよ。

ーー 制限時間は十五分よ』


徳田の長い説明が続いている。

『そして、読手が、かるたの上の句を読み上げたら、

ーー 取り手のみなさんが、上の句の下の句を取るゲームなの。

ーー 先にかるたがゼロになった人が勝ちになるわ』

ーー 細かなルールや説明は、あとにして、練習して慣れましょう』


「徳田さん、じゃあ百枚を覚えていないと出来ないの」

『理屈では、そうですが。

ーー 上の句の決まり字を覚えればいいのよ』


「決まり字ってなんですか」

『決まり字には、一字決まり、二字決まり、三字決まり、

ーー 四字決まり、五字決まり、六字決まりがあります。

ーー 六字決まりは大山札と呼びます』


 徳田の丁寧な説明に宝田劇団のスターたちが頷いている。


『一字決まりの札の上の句の例を紹介するわね。

ーー むらさめの・・・・・・を聞いたら、

ーー 下の句は、きりたちのぼる・・・・・・となるわ』


「つまり、【む】を聞いて【き】を取るのね」


「夜神さんの言う通りでござる」

静女が口を挟む。


『でもね、決まり字には、

ーー 五字決まり二枚、四字決まり四枚、大山札六枚、

ーー 一字決まり七枚があって、二字決まりは五十枚、

ーー 三字決まりは三十一枚あるのよ』


徳田は、呼吸を整えて続ける。

『しかも、空札(からふだ)が五十枚あるのね』

「空札ってなんですか」

夜神の質問だった。


『読手が()んだ(ふだ)が自陣にも敵陣にもない札よ』


『あとは、試合形式で練習してみてください。

ーー 唐木田部長、お願いします』

「徳田さん、分かりました」




 前川、夜神、赤城、大河原は、隙間時間を使い、この日から競技かるたの練習を開始した。

「赤城さん、お膝を痛めると大変ですから、

ーー バスタオルをクッション代わりに置くといいですよ」

「森川さんだったかな?ありがとうね」


 唐木田部長が、徳田を引き継ぎ、一字決まりの上の句の見本の七句を伝える。


「さびしさに、すみのえの、せをはやみ、ふくからに、

ーー ほととぎす、むらさめの、めぐりあひて」


「下の句は順に、いづくもおなじ、ゆめのかよひぢ、われてもすゑに、

ーー むべやまかぜを、ただありあけの、きりたちのぼる、くもがくれにし

ーー になるわ」


「じゃあ、序歌を聞いたら、試合が始まるわよ」

「序歌って、なんですか」


『難波津の和歌を最初に詠むのが競技かるたの大会の風習になっているのね。

ーー まあ、そういうものと思ってください』

徳田が補足した。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・」

「いまを春べと 咲くやこの花」


「序歌とは、別にね。

ーー 前に出た札の下の句が、くもがくれにし・・・・・・だとしたら、

ーー 次は、くもがくれにし、の下の句を詠んでから

ーー 新しい歌を詠むのが決まりなのよ」

唐木田部長が説明を続ける。


「くもがくれにし・・・・・・。

ーー そして、次の上の句が()まれるのよ。

ーー 分かりましたか?」


「なんとなく・・・・・・」

多分、初心者の夜神たちは理解していない。

彼女たちにして見れば、競技かるたは、アウエーそのものだったからだ。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり・・・・・・」


 森川が序歌を()み上げようとして、徳田康代が待ったを掛けた。

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