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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
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【五十七】ライバル逢坂めぐみ

「はなの・・・・・・」


 徳田康代の手が素早く動き払われた札が空に舞う。


 三字決まりの上の句は、[花の色は・・・・・・]は、小野小町の和歌だった。

康代の大好きな小町の下の句は、[わが身世にふる・・・・・・]だ。


 康代の予知能力と直感が、清少納言のあとに()まれる札を敵中させた。

康代の特殊なスキルは競技かるたでも発揮されている。


 一方、勝ち目のない春日遙(かすがはるか)は、B級の対戦相手と苦戦していた。


 徳田康代は、順調に札を減らして残り一枚となった。

唐木田、三枚。

森川、五枚。

和泉、四枚。

春日、八枚。


「あらざらむ・・・・・・」


 和泉式部の三字決まりを、徳田、唐木田、和泉が払い、三人の手が上がる。

この試合も徳田が先に抜けて神聖女学園が一勝。

あと二勝すれば、準決勝に進出。


 春日が破れて、笹原女子高校が追いつく。


「めぐりあひて・・・・・・」


 唐木田、和泉、森川が紫式部の一字決まりを払い札を減らした。


唐木田、一枚。

森川、三枚。

和泉、二枚。


 応援席の神聖女学園の女子生徒が身を乗り出して観戦していた。


 空札(からふだ)のあと、森川が破れて笹原女子二勝、神聖女学園一勝となった。


 和泉が取り、唐木田と同じ一枚になり、再び運命戦となった。

安甲晴美と徳田康代は、この試合の勝利を確信していた。


「和泉さん、頑張ろう」


「唐木田さんもね」


「よのなかは・・・・・・」


 空札(からふだ)となったが、安甲直伝のトラップに掛かり、笹原女子校の二人はお手付きで敗退した。


 初出場の神聖女学園が準決勝進出となる。

対戦相手はまだ決まっていない。


 しばらくして白菊が唐木田に伝える。


「向こうも番狂わせで勝者は、()()()()()になりました」

「レベルは、同等です」




 安甲晴美臨時顧問が姫乃と夏生を呼ぶ。

「姫乃さんと夏生さん入って、春日さんと和泉さんはお休みね」


 安甲は、本選準決勝でも交代制を維持している。

有利に試合を展開する裏技だった。


 昼を挟んで、会場に戻った神聖女学園は、唐木田、姫乃、森川、夏生、徳田の順で並んだ。

安甲晴美の指示だった。


 有馬女学園と神聖女学園の選手たちの札がそれぞれ二十五枚ずつ並べられ暗記を始めた。

準々決勝の札を忘れないといけない。


 正念場の準決勝の序歌が()まれた。


「ちぎりおきし・・・・・・」

空札(からふだ)で開始された。


 一進一退の好ゲームになった後半、休み明けの姫乃水景の手が上がる。

両チームで最初の勝利だった。


 徳田康代が続いて勝利して神聖が二勝となり、決勝進出が見えてきた。

森川、夏生が破れ二勝二敗となる。


 唐木田の対戦相手が負傷の痛みで審判から試合続行不能とされ、唐木田が不戦勝となり奇跡に救われる。

神聖女学園が三勝二敗で決勝進出となった。




 ショートヘアの小倉紅葉が唐木田部長に報告している。


「唐木田さん、決勝の対戦相手が決まりました」

「どこですか?」

「東都優勝の()()()()()です」

唐木田の顔が曇る。


「唐木田、なんだその表情は」

「先生・・・・・・」


「あの時は、あの時じゃないか」

「経験の少ないチームが粘り強く来れたのも唐木田やみんなのお陰だ」

「もっと、胸を張らんか」


「先生、そうですね・・・・・・。

ーー 私たち、前より経験を積んで強くなっていますね」

「そうだ、負けて消えて行ったチームの分まで、

ーー 悔いが残らないように頑張れ」


 安甲晴美臨時顧問、兼監督の叱責(しっせき)は珍しかった。


「どうも唐木田は弱気でイカン」

「もっと自信を持て!」


 安甲の言葉に励まされ唐木田に笑顔が戻った。


「みんな、打倒白波女子よ」

「前の雪辱を晴らすチャンスよ」


 唐木田の言葉を受けて安甲が決勝のメンバーを発表した。


「地方大会決勝のメンバーで行くわよ」

「唐木田、森川、徳田、和泉、姫乃の五名よ。

ーー 残りの人はサポートして」


 休憩時間を挟んで決勝が行われた。



 白波女子高と神聖女学園の選手が五人ずつ対峙して並ぶ。

 双方、自陣に二十五枚のかるたを素早く配置する。


 読手の合図を受け、十五分の暗記時間が終了した。

選手たちの顔に緊張が(みなぎ)る。


 専任読手が序歌(じょか)を詠み上げる。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

ーー いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・

ーー いまを春べと 咲くやこの花」


「きみがため、春の・・・・・・」


 唐木田、徳田、姫乃が先取して、試合が始まった。


 森川と和泉が破れ、白波の二勝となる。

そして運命の終盤が訪れた。


 両チームの六人が運命戦に突入した。


いよいよ運命の札が()まれた。


「きみがため おし・・・・・・」


 神聖女学園の三人が同時に払い、札が空中で回転し畳に落ちた。


 神聖女学園の三人の右手が上がる。

取り札の枚数確認を終え、神聖女学園の勝利が確定した。


 神聖女学園三勝、白波女子高二勝で神聖女学園の()()()()()()が確定する。

 神聖女学園の応援席は、歓喜で溢れた。


 白波女子高校の主将が徳田康代の元へ歩み寄る。


「白波の主将の()()()()()です。

ーー 徳田さん、初優勝おめでとう。

ーー ところで、個人戦に出場しますか」


逢坂(おうさか)さん、ありがとう。

ーー B級で出場します』


「じゃあ、明日もよろしくね」

『はい、こちらこそ』


「B級優勝か、準優勝二回でA級ですから頑張りましょう」




 表彰式のあと、一同は稲葉旅館に戻った。


「康代さん、宝田劇団の夜神監督がロビーでお待ちしています」

『秀美さん、ご苦労さん。案内してください』


「こちらです」


 徳田康代たちは、旅館の長い廊下の奥にあるロビーに向かった。

廊下の床には赤いカーペットが敷き詰められている。

左右の壁には近江の風景画の絵画が飾られていた。


「徳田さん、夜神です。

ーー ご無沙汰しております」


『こちらこそ、わざわざお越し頂き感謝しています』


「豊下さんにお伝えした件で参りました・・・・・・」

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