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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
56/169

【五十六】いよいよ準々決勝でござる!

 田沼光博士と若宮咲苗助手は、夏休みの神聖女学園にある田沼たちの研究室で地震データを調べていた。

夏休み期間と言うことあって二人ともラフな雰囲気のワンピースを着ている。

田沼はグリーン系、若宮はブルー系が好みようだ。


 全寮制の女学園は、この時期も生徒たちの賑やかな声が時より聞こえてくる。

 運動部は、夏合宿を学園内でしている。

 文化部は秋の文化祭への追い込みを始めて忙しい。

 

 競技かるた部が本選準々決勝進出を決めた頃、短歌コンテストを目指す女子高生たちは作った和歌の批評会をしていた。


「田沼先生、念のためですが・・・・・・。

ーー 大地震の前兆が見れます」

「どこですか」


「今のところは、場所の特定は難しい状況です」

「そうですか。

ーー とりあえず注意して見守りましょう」


「安甲先生たちは、近江ですが、神社に参拝しますか」

「そうですね若宮さん、気晴らしに行きましょう」



 陰陽師(おんみょうじ)安甲晴美(あきのはるみ)の留守を預かっている巫女(みこ)たちが境内を掃除している。

小さな神社とはいえ、本殿、神符授与所、古札納所、社務所もあるから人手が必要なのが分かる。

夏休みの時期は、巫女が巫女見習いの巫女たちを指導していた。


「田沼先生、今日は巫女さんが多くありませんか」

「そんな感じね」


「若宮さん、お参りを済ませたら、

ーー ショッピングセンターでお買い物してカフェに寄りませんか」

「そうね、今日も暑いし、無理せずに冷たいお茶にしましょう」




 神使の黒猫のセリエは()()()()姿()()()()して、田沼たちの会話を聞いていた。

姿は見えないのだが・・・・・・。



 宝田劇団の元大スターの朝川夏夜(あさかわかよ)責任者は、劇団本部の自室にいた。

劇団移転計画は、幹部と協議して了承を得ている。


[次は、物と人が動くことになるか・・・・・・]

朝川が呟く。


朝川の部屋が三回ノックされた。

「どうぞーー」

「夜神です」


「先日の徳田さんの提案は、幹部会で受け入れられたわよ」

「朝川さん、ありがとうございます」


「あなたに感謝されることじゃないわ。

ーー メリットとデメリットが折り合っただけじゃないかしら」


「そうですね」

「あそこのメリットは皇国の新しい首都よ」


「宝田のデメリットを超える恩恵があるのよね」

「それで、こちらは支部ですか」


「そうなるわね」

「向こうの学園寮の件は」


「そこね。時間的な問題は大切なので妥協点ね」

「と言うことは、神聖女学園附属ですか」


「当分は仕方がないでしょう」

「向こうの箱物が完成するまでの間ですから」

「朝川さんの言う通りだと思います」


「じゃあ、今月中に神聖学園都市に移転するわよ」

「みんなに伝えてください」

「朝川さん、分かりました」


「移転は、組ごとにお願いするわ」

「先方の都合もあるから、何回かに分けましょう」

「はい、承知しました」


 夜神は、朝川の部屋を出て団員と生徒たちに知らせに行った。




 近江の宿にいる豊下秀美のホログラム携帯が鳴った。

「あっはい、豊下です」

「夜神さん、ご無沙汰しています」


「豊下さん、徳田さんの提案が了承されたの」

「良かったですね」


「それで、学園寮への転居の件なんだけど」

「夜神さん、いつ頃ですか」


「朝川は、今月中と言っています」

「私たち、今、近江に出張しています」


「そうなの、随分、近いわね」

「あと、三日ほどいます」


「じゃあ、お宿を教えてもらえますか」

()()()()です」


「じゃあ、明日の夕方に伺いますね」

「徳田さんとも、お会いしたいので」

「夜神さん、徳田に伝えておきますね」


「じゃあ、豊下さん、明日ね」




 徳田康代が宿の温泉から出て来ると、豊下秀美が待っていた。

『秀美じゃない。お風呂は、まだなの?』

「はい、あとで入ります」

 秀美は、湯上がりの康代を見ながら続けた。


「康代さん、夜神さんから連絡がありました。

ーー 康代さんの提案が受け入れられたそうです。

ーー それで、急なのですが・・・・・・。

ーー 明日の夕方、ここに来るそうです」


『じゃあ、また食事会ね。楽しみだわ』




 翌朝、神聖女学園の生徒たちは、何台かのタクシーに分乗して、かるたの聖地である神宮に向かった。


『姫乃さん、夕方に夜神さんがこちらに来られますわよ』

「凄い」


『今は、言えませんが、時期が来れば分かるわ。

ーー ところで、今日の準々決勝の相手はどこですか』


笹原(ささはら)女子高校です。常連校だそうです」


『小倉さん、ありがとうございます』


白菊(しらぎく)さん、レベルは、どんな感じですか」

唐木田だった。


「B級二人、C級三人ですが」


安甲が注意した。

「唐木田さん、階級は実践では参考にならないのよ」


「C級がB級を倒した例など良くあることよ」

「神聖は、予定通り、一名入れて、一名をお休みにするわ。

ーー でも、唐木田さんと徳田さん、そして森川さんにはお休みないわよ」


 女子高生たちは、昨日と同じ道を進み会場に到着した。

「会場を間違えないようにね」

「本選準々決勝の会場よ」


安甲晴美が出場メンバーを呼んだ。

「唐木田さん、森川さん、春日さん、和泉さん、徳田さん」

「姫乃さんは、次の試合からね」




 笹原女子高の五人が並び挨拶を終えた。


 かるたを自陣に二十五枚並べ暗記する。

敵陣のかるた二十五枚も暗記しなければならない。


緊張の時間が過ぎた。


 読手が序歌(じょか)を詠み上げる。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・」

「いまを春べと 咲くやこの花」


「よをこめて・・・・・・」

空札(からふだ)は清少納言の一首だった。

下の句は[よにあふさかの・・・・・・]


この大会は、前半に空札が集中することがよくあった。

準々決勝は、まだ始まったばかりだ。

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