【四十八】鬼退治は草取りでござる!
西和大陸で起きた神隠し事件は、人口の約三割に及んだ。
西和以外の地域では五割の人間が消えていた。
神使のセリエが康代たちのいる生徒会執務室に黒猫の姿で現れた。
「康代よ。思いの他に早く神隠し事件が終わったようじゃ。
ーー 負のエネルギーの多い国ほど、消える人間の数が少ないのじゃ。
ーー 今、皇国以外の国で残っている魂の持ち主は地獄門の主人たちが監視しているのじゃよ。
ーー まもなく、中間世界の裁きの庭に行くことになるじゃろ」
神使セリエが康代に忠告する。
「康代たちは、鎖国を理由として、何があっても拒絶するのじゃ。
ーー それでも、執拗に抗議して来た場合は、
ーー 神使であるセリエが天罰を加える。
ーー いつの場合も皇国は神々とセリエが守る。
ーー 康代たちは心配はないのじゃよ」
セリエが未来予言を康代に伝える。
「皇国は、第三の地球の中心となるじゃろ。
ーー その時、康代が世界を統一して平和な世界を牽引するのじゃよ」
『セリエさま、お話が大き過ぎて目眩を感じますわ』
康代は、地球の守護神の神使セリエの告知に驚くばかりだった。
とてつも無く大き過ぎてチートアニメの世界を垣間見る徳田康代だった。
「康代よ、その時が来れば分かるが、世界の言語と皮膚の色は皇国の民と同じ色になるのじゃよ。
ーー 人種間の差別をして来た人間どもは、その時、世界には残っていない」
セリエは続けた。
「未来を多く残している女子高生たちが世界を建て直すのじゃよ。
ーー 人間の価値は、生前からの魂の価値で決まるのじゃよ。
ーー 現世は、汚れを修正する場所でな、汚す場所じゃないのじゃ」
神使のセリエは、徳田康代の心の迷いを払拭するように優しく説明した。
「康代よ、また来るにゃあ」
『セリエさま、ありがとうございます』
神使セリエは、消えて虹色の光になってキラキラ金色に輝いた。
「康代殿、虹色に金色が加わりましたでござるよー」
『もう神々し過ぎて畏敬の念すら感じますわ』
この時、徳田康代も天宮静女も、最強神使セリエの本当のチートパワーを知らなかった。
康代たちは、日常生活の中埋没しながら、徳田幕府の幸せ政策とエネルギー緩和の三本の企画を推進していた。
徳田康代大統領は、生徒会執務室に幹部を招集して、ニュース報道の規制を提案した。
織畑信美首相、前畑利恵副大統領、豊下秀美副首相、明里光夏大統領補佐官が、皇国の危機の制御のための会議を始める。
『旧メディアの処分のあとでも、メディアは時限爆弾と変わりません。
ーー 国民のためになる報道以外に規制を断行します。
ーー 不安を助長する報道には何のメリットもありません。
ーー 国民が国民自身の夢のために笑って生きられる環境を提案します』
康代は皇国の大統領として発言した。
『メディアを解体分割します。
ーー 芸能、映画ドラマ、アニメ、スポーツ、レジャー、気象などに細分化します。
ーー 結果、メディアの権力が削ぎ落とされます。
ーー 政治とニュース報道は、徳田幕府の監視下に置き原則禁止とします』
「康代、つまり、負のエネルギーに蓋をするんですね」
『利恵、その通りよ』
『国民が必要な情報以外をわざわざ知らせて不安を煽る必要はないのよ』
と康代は言った。
「そうですね。百害あって一利なしですね」
「秀美の言う通りでござるよー」
静女も参加している。
「負のエネルギーの元を遮断すれば良いのだから康代の方法が良いでしょう」
信美も康代に賛成の意思を表明した。
康代たちは、第二次メディア改革を実行に移行させた。
インターネットニューススピードは徳田幕府の監視下に置かれた。
違反者には厳しい罰則が準備されている。
「負のエネルギー遮断計画でござるよー」
「康代、伝家の宝刀になってしまいそうですね」
織畑信美だった。
『最終切り札は、まだセリエさまが用意されていますが、
ーー できることからクリアしましょう。
ーー 報道が暴走すれば、我が国もお終いですから』
「本当、厄介でござるよー」
『今、できることに集中しましょう』
「今、できることでござるな」
『静女、まさか、アレですか』
「さすが、康代殿、お察しが鋭いでござるよー」
一同は、静女を先頭に神聖ショッピングセンターのカフェに向かった。
地下玄関からエスカレーター経由で最上階のカフェに向かう。
康代は、この短期間に起きた事を振り返っている。
安甲先生、田沼先生、若宮助手に始まって 、・・・・・・。
宝田劇団の夜神紫依舞台監督、赤城麗華、|大河原百合《おおがわらゆり、朝川夏夜。
姫乃水景、和泉姫呼さんたちと来た道が妙に懐かしく感じていた。
「康代殿、ご気分でも悪いでござるか」
『ちょっと、感慨に耽っててていただけだから、大丈夫よ、静女』
「左様でござるなら良いがーー」
『静女、今日もクレープね』
「康代殿、今日は違うでござるよー」
静女は、カフェに到着すると、チョコレートパフェをオーダーした。
真夏の暑さも手伝って、みんな、静女と同じオーダーになった。
『さっきの続きだけど、徳田幕府の監視下とは別にしたいことがあるの。
ーー 干渉されない政府報道システムの構築よ。
ーー 必要な時だけ、政府が発信する報道よ』
「それは、良いかも知れない」
『信美、ありがとうね』
「そうなれば、メディアのパワーを更に削ぎ落とすことが出来ます」
『そうね、利恵の言う通りです。
ーー 私たちの幸せ政策はともかく、企画の殆どは外圧に対するバリアが弱いわ。
ーー 結果、他力本願の側面があるのよね。
ーー リスクは早いうちに除去するのが最善策よ』
「まるで草取りでござるよー」
『そうね、静女、雑草は取らないと庭が汚れるわね・・・・・・。』
静女は、神聖女学園の校舎越しに大江戸平野の山々を眺めていた。
夕日がカフェの窓ガラスに反射して、静女の紫色の髪の毛がキラキラと光っている。
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三日月未来