第十二章【四十二】転生女子高生〜神さまの魂救済が始まったでござる!
豊下秀美が夜神紫依監督と団員を連れて食堂のテーブルを確保していた。
『秀美、いつもありがとうございますね』
「お仕事ですから、ご心配なく」
『夜神さん、お待たせしました』
「神聖女学園の秘密の花園に迷い込んだ気分ですわ」
『確かに特殊ですが普通の学園ですよ』
「あら、そうかしら、波動がまるで違いますが」
『さすが、夜神さんにかかっては、千里眼ですね。
ーー ところで夜神さん、秋までに学園都市に来られますか』
「そうですね。なるべく早くした方がいいかもしれません」
学園寮の棟には、赤レンガ色の火の棟、青色の水の棟、焦げ茶色の木の棟、白色の金の棟、茶色の土の棟があった。
『どうでしょうか夜神さん、学園寮に僅かですが空きがあります』
「寮があれば移転を早くできるかもしれませんわ」
『ただ、その場合、神聖女学園附属宝田音楽学校と言う形になると思います』
「それは、どう言う意味ですか」
『女学園は、ご存知の通り、男子禁制エリアで、女子生徒と女性教師のみのエリアなんです。
ーー 学園寮もその中にあります。
ーー 他校の生徒さんや関係者を入れることは難しいのです』
「なるほど・・・・・・」
『なので、形式的な意味を含めて、附属と言う二文字が必要です』
「そうすれば、問題をクリアできる訳ですね」
『そうです。箱物を建てようとすれば時間的な問題もあるでしょう。
ーー けれど、書類上の移転なら問題ありませんわ』
「当面の生徒や団員の住居が確保出来る訳ですね」
『学園都市から近い隣駅の周辺は、再開発で土地整備が進んでいます。
ーー そこに移転するのが最善ですが、時間的なハードルが高くなるでしょう』
「分かりましたわ、その辺も含めて朝川と相談してみます」
『要するに、暫定的な移転と、本格的な移転の二択ですね』
「名称は、責任者の朝川に確認してみないと分かりませんが」
『そうですね。どちらにもメリットがあるようにしたいですわ』
翌日、七月九日の午後、夜神舞台監督と宝田劇団の団員が宝田に帰った。
徳田大統領は、織畑、前畑、豊下、明里と宝田の移転計画を話し合っていた。
天女の天宮静女が聞き耳をたて紫色の瞳を輝かせている。
『静女は、劇団招致に乗り気のようですね』
「康代殿、楽しみが増えることは良いことでござるよー」
『そうね、静女。
ーー 推進担当の豊下さん、国営化プロジェクトは順調ですか』
「特に、問題なく推移しています」
『学校改革は、確か前畑さんでしたね』
「全国女子高生会議の協力もあってスムーズです」
『治安は、織畑首相ね』
「徳田幕府の女子高生支部の活躍で治安が回復しています」
『西和の傀儡政府が消えても負のエネルギーの側面が完全に消えた訳じゃないのよね。
ーー 明里は幸せ政策に力を入れてください』
「はい、ネットを中心に展開しています」
『豊下さんは、国営化プロジェクトの流れの中で宝田劇団の移転をバックアップして上げてください』
「はい、青写真は、徳田大統領が示されたので、あとは劇団の都合かと思います」
『面倒なスケジュール調整もあるので明里と一緒に力を合わせください』
地球の守護神アセリアの神使セリエが黒猫の姿で徳田康代たちの前に現れた。
女子高生たちはセリエに一礼した。
「西和が動き出したようじゃ」
『セリエさま、どう言うことですか』
「超常現象が起きたのじゃ」
「並行世界から連絡があったのじゃよ。
ーー 並行世界の神が、フィルター始動を始めたのじゃ」
『セリエさま、意味が、よく分からないのですが』
「魂の選別じゃよ。
ーー 西和は、大騒ぎじゃよ」
『巨大地震が起きたのですか』
「そうじゃない。善人の魂救済を先に始めたのじゃよ」
「大陸が割れてからじゃ間に合わないのじゃ。
ーー 並行世界はアトランティスの失敗の轍を回避して前倒しをしたのじゃ」
『つまり、天災前に人が消える訳ですね』
「人間は、神隠しと言うが、その言葉のままじゃよ」
「フィルターで並行世界に転移出来るのは一部の魂を持つ者だけじゃ。
ーー 汚れた魂を持つ者に神の守護はないのじゃよ」
『セリエさま、西和大陸は、まもなくでしょうか』
「砂時計は、空に近くなっているのじゃよ。
ーー 皇国には、風の神もいるから二重三重に守られている。
ーー 康代、またにゃあ」
『セリエさま、ありがとうございます』
インターネットニューススピードが西和の超常現象を伝えている。
「録画映像をご覧ください」
「人が突然、神隠しにあったみたいに消えています。
ーー こちらの町でもあちらの町でも。
ーー 実況中のレポーターまで」
そして、映像が遮断された。
神聖女学園の食堂では、女子高生たちの井戸端会議が炎上していた。
「西和の神隠し、見た」
「あれ、トリックかと思ったよ」
「レポーターが急に透明化して消えたんだよね」
「真夏の怪談噺か」
「それで、どうなったの」
「また、配信が消えたのよ」
「前と同じめちゃ綺麗な黒猫が現れて画面が終えたのよね」
神使のセリエは、神隠しくらい問題ないとして配信制限をしていなかった。
神聖女学園の井戸端会議が強く反応して石橋を叩くことに変えたのだ。
「アセリアさま、並行世界の神がフィルター始動の本番を実施しました」
「神聖の女子高生が騒ぎ始めたので配信フィルターで制限しました」
「セリエよ、皇国のエネルギー変化は大丈夫じゃが」
「西和から目を離すじゃないぞ」
「はい、アセリアさま」