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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
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【三十五】現実は氷山の一角

 宝田劇団と康代たちの会話が続いている。


『人生、楽しい時間ばかりなら、世の中が平和なのにね』


「楽しい時間は、あっという間に過ぎて辛い時間は長いわ」

「世の中の無常ね。同じ時間なのに不思議と感じるでしょう」


「時間は、人間の錯覚でござるよー」

「確かに錯覚かも知れないわ」


『夜神監督も、錯覚と感じられるのですね。実は私も同じです』


「昔から、・・・・・・人の目に空見えず、

ーーとかの(ことわざ)がありますから気付かないことは良くあるのでしょう」


『そうですね。時間などは、当たり前にあるから考える人は、いないのでしょう』


「舞台の本番は、何度踏んでも緊張するわよね」


「大河原さんの言う通り、私なんかいつもハラハラドキドキですよ」

「赤城さんレベルでもそうなのね」


「レベルごとにハードルが上がるからプレッシャーも上がるのよね」


「夜神監督は高跳びのようでござる」


「そうね、静女さんの言う通り高跳びのバーと変わらないわ」



「赤城さんや大河原さんのバーの高さは、まるで違うのよ。

ーーでもね、それは、その人自身の心が創造していることなのよね。

ーーそれを世の中の人たちは好き勝手に批評しているの。

ーーだから、プロは、自分の心のバーの高さだけに集中しているのよ」


『夜神監督のお陰で少し分かった気がします』


「長い急なエスカレーターだって安全と思っているから大丈夫なのよ。

ーーもしも、ベルトが無くて両脇が断崖絶壁だったら怖くて乗れないでしょう。

ーー演技もね、まず自分自身を騙すことが重要なの」


「嘘は、最強の武器でござるな」


『自分の意識を騙すのも自分をコントロールするテクニックですね』

「そうね。嘘には良い嘘と悪い嘘があるでしょう」


『自分自身の潜在意識を騙すのね』

「そうね、昔の流行り言葉ならそうなるわね」


「自分自身の心の制限を騙すのね」


「制限が解放されるでござるな」


「そしてね、子供の頃よくやったおまじないや呪文を自分の心に宣言するのよ。

ーー大丈夫、私は必ず成功するから大丈夫・・・・・・と」


『夜神監督もおまじないや呪文をするのですか』


「私はね、アファメーションというレベルじゃ無いけれどしますよ。

ーーだって、その方が心が楽になるでしょう」


『そうですね、潜在意識はスポンジのようなものだから吸収したことを叶えるのよね』


「康代は、潜在意識が好きでござるな」


『そうね、自動記録してくれる便利なシステムですからね』


「徳田さんと同じ意見だわ。

ーー演劇を成功させるには成功させるという信念が大事なのよ。

ーー成功と失敗は、相反するのよ。

ーー成功者の多くは成功しか考えないの」


夜神は、ゆっくりと続ける。

「でも不安が大きくなると弱気が首を(もた)げるのよね。

ーーそして、知らず知らずに失敗のスパイラルに落ちるのよ。

ーー不安、心配、恐怖など、起きてもいないことに心を奪われちゃダメなのよ」


「舞台も人生も心との闘いなのよ。

ーー敵は弱気な心の自分自身なのよ。

ーーじゃあ、みなさん、明日も本番当日も、

ーー強い自分の心を引き連れて来てくださいね」


『夜神監督、今夜もありがとうございました』


「楽しい時間でござった」

徳田に続き、静女、織畑、姫乃、和泉も夜神監督に挨拶した。


「じゃあ、解散して、明日の最終リハーサルで頑張りましょう」


 

 その頃、学園寮の食堂では、珍しい組み合わせがテーブルで会話をしていた。


 陰陽師の安甲晴美古典教師と田沼光()()()()、若宮咲苗()()()()だった。

田沼博士と若宮助手は先日の一件以来、意気消沈して安甲先生に相談することが多かった。


「田沼さん、生き霊(いきりょう)怨霊(おんりょう)(あやかし)など、

ーーアニメや漫画の世界だけじゃないのよ。

ーー目に見える世界を現世(うつしよ)と呼び、

ーーあちらの世界を常世(とこよ)とか黄泉(よみ)の国とか呼ぶでしょう。

ーーでも、実際には、はっきりした境界などないのよ」


「安甲先生、境界もないのですか」


「そうね、氷山の一角の例えにあるように私たちが見ている現実は一部に過ぎないのよ。

ーー最近では、そっち方面の研究も進んで見直されていますが、まだまだよ」


「と言うと・・・・・・」

若宮だった。


「だいたい、死生観がズレ始めてから人間の心が(すさ)み始めたわ。

ーー死とは肉体の崩壊であっても魂は死なないのよ」


「肉体は魂の容れ物ですか」

「うん、乗り物とも言えるわね」


「人間が何度も生まれ変わるでしょう。

ーー古い乗り物から新しい乗り物に変えているのよ。

ーー神聖女学園は、前世学園ですから、

ーーそれぞれが前世記憶を自覚しているのよ」


「そうだったんですか」

田沼博士だった。



「すべての超常現象もその延長にあるわ。

ーー東都のような特異点は破壊と再生が繰り返される危ない土地なのよ。

ーー発展ばかりに夢中になっていると永畑のような大きな落とし穴が口を開けるのよ。

ーー百五十年の間に科学は発展したわ」


田沼と若宮が真剣な表情で安甲を見ていた。


「百五十年前の不可能が可能になったでしょう。

ーーでも、この問題の解決はないの。

ーー黄泉の国と霊界通信が出来る時代が来れば前進ですが。

ーーところで、田沼さんと若宮さん、何かありましたか?」


「言えないのですが、超常現象が・・・・・・」


「そうですか、メッセージを聞いたのね」

「安甲先生、何で分かるのですか?」


「私は、陰陽師(おんみょうじ)であって神聖神社の神主よ」

「そうでした。忘れていました」


「あなたたちお二人は、最近、前世記憶が復活しましたね」

「先生、すべて知っていたのですね」


「あなたたちの魂に書いてあるわ」


田沼と若宮は、顔を見合わせて、幽霊でも見た表情で安甲を見ていた。

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