第168話 動き始めた時の歯車
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
白装束に変身した天女天宮静女は、ゆっくり両手を額の高さに上げ天を仰ぎ指を鳴らした。
木枯らしが止んだ夕焼け空に大きな閃光が光り空気が避ける音がする。
眩ゆい光りを纏った美しい赤猫が空中に浮かんで静止している。
天宮静女はその姿を凝視して祈るように心から呼び掛けた。
「静女でございます。ご無沙汰しております。ルニャ様」
神使を包んでいた光りがメラメラと揺らいだ。
「静女殿、ござる口調で良いのですよ」
「ルニャ様の本日の波動に驚いております」
「静女殿ーー 時の女神エルミオ様の使いで現われております。まもなくセリエ様も見えるでしょう。それまでの間、陰陽師の結界の中でお待ちください」
静女は深々と頭を下げ後退りして言った。
「ルニャ様、エルミオ様が来られるのですか」
「それは分かりません」
「失礼しました。神社の境内でお待ちします」
⬜︎⬜︎⬜︎
黒猫の姿の神使セリエが静女の前に現れた瞬間、空が虹色に光って煌めき砂金の雫が雨のように降り注いだ。
「静女にゃあ、まもなくにゃあ」
「セリエ様ーー 」
「静女は来訪者の傍にいて上げてにゃあ」
「セリエ様、これから何かあるのですか」
「セリエはまだ神さま見習いの身だからにゃあーー 分からないにゃあ」
「セリエ様ーー 」
「静女、あとでにゃあーー 」
神使セリエは消えて光りになった。
神々のやり取りは神聖女学園の女子高生の瞳には映っていなかった。
見えていたのは閃光現象だけ。
「ねえ、さっきの光り見た」
「何かの前兆よ。きっと」
⬜︎⬜︎⬜︎
「天女さま、安甲晴美でございます」
「陰陽師、これから始まる大きなイベントの前に過去からの来訪者に祈りを捧げて上げてください」
陰陽師の安甲は天宮の白装束と口調の変化に胸騒ぎを覚えて緊張した。
「天女様、直ちにーー 」
⬜︎⬜︎⬜︎
徳田康代大統領は、側近の天宮静女がいないことに胸騒ぎを覚えた。
生徒会執務室の南側の窓のカーテンが光って見えている。
康代は窓に駆け寄り静かにカーテンを開けた。
空中に静止している静女の姿に気付いた。
眩ゆい光りが神聖女学園のグランドを照らしている。
目に見えない宇宙の波動がメロディを奏でて康代の耳に届いていた。
康代は静女にテレパシーを送った。
いつもなら直ぐにある返事が一切なかった。
康代は強い胸騒ぎを覚えてセリエにテレパシーを送った。
⬜︎⬜︎⬜︎
神使セリウスが康代を心配して寄り添った。
『セリウスさん、いつの間にーー 』
「ちょっと外は大変な様子です」
『セリウスさん、なんか起きているんですか』
「多分ですが、時空がーー 」
『分からないわ』
「おそらく、時の女神が」
『女神がーー どうしたの』
「康代さん、過去の来訪者ですよ」
『・・・・・・ 』
「多分、時の女神が動いて下さったのかも」
『でも、静女ちゃんは』
「康代さん、彼女は天女です」
『忘れてたわ・・・・・・ 』
⬜︎⬜︎⬜︎
正装姿の陰陽師安甲晴美は巫女の花園舞を神聖神社の社務所に呼んだ。
「今日は、あなたたちに取って重大な日になるかも知れないわ」
「安甲神主、なんでしょうか」
「今は言えないけど、わたしができることはあまりないの、分かってくれる」
「ええーー 感謝しております」
「早速なんですが、夕子さんたちを此処に連れて来て欲しいの」
花園舞は、確認するように名前を読み上げた。
「夕子、朝子、紫、美夏、真夏、真冬ーー 未来、三日月姫姉妹、そして私で10人です」
「じゃあ、全員、お願いしていい」
「分かりました。早速」
花園は陰陽師に頭を下げ、静かに社務所をあとにした。
月光が神聖神社の小さな境内を照らしている。
月明かりに朱色の大鳥居が浮かび上がって見えた。
⬜︎⬜︎⬜︎
若草色のスカートスーツ姿の田沼光と若宮早苗は神社に向かっていた。
小走りですれ違う花園を見掛けて顔を見合わせて振り返った。
「田沼先生、今のは巫女の花園さんですよね」
「なんか、急いでいましたね」
「学園に用事かしら」
「先生、それはともかく地下参道の入り口は何処かしら」
「社務所か女子高生に尋ねて見れば分かりますよ。若宮さん」
若宮は参拝帰りの女子高生に尋ねた。
「ーー 地下参道ですか 」
「ええ、何処か分かりますか」
「地下参道は、社務所と神聖女学園の地下玄関を繋いでいます」
「じゃあ、途中からは入れないの」
「はい、そうなると思います」
「ーー ありがとうございます」
若宮は女子高生に頭を下げて田沼と一緒に社務所に向かった。
⬜︎⬜︎⬜︎
三日月姉妹と未来は、前世からの生まれ変わりの夕子と一緒に過ごしていた。
星乃紫、朝霧美夏もいる。
夢野真夏と娘の真冬、夕子の娘の朝子も一緒だ。
神聖女学園寮に、花園舞が尋ねてくることは無かった。
彼女たちが滞在しているインターホンに花園舞の姿が映し出された。
昼間朝子がインターホンに出て、母の夕子に告げた。
「お母さん、巫女の花園さんが見えています」
「なにかしらーー 珍しいわね」
「夜分、失礼します。夕子さんーー 」
直感の鋭い夕子は、花園舞の表情を見てすべてを悟った。
花園を部屋に入れて過去からの来訪者10人が揃った。
⬜︎⬜︎⬜︎
花園舞の到着のあと、女子高生姿の神使セリウスと徳田康代は昼間夕子が滞在している部屋のインターホンを鳴らした。
「康代さん、留守のようです」
『セリウスさん、すれ違いでしょうか』
「いいえ、いるはずですが・・・・・・ 」
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