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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
163/169

【一六一】今宵は皓月でござるよー

『【一六一】今宵は皓月でござるよー』

約二千百文字です。

この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。

【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。


女子高生は大統領では、

徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。

『  』


皆さまの隙間時間でお楽しみください。

三日月未来(みかづきみらい)

「康代さん、先に行きますよ」

『ーー 秀美、待って』


「分かりました。少しですよ」


 せっかちな性格の豊下秀美は生徒会執務室の廊下で徳田康代大統領を待っていた。生徒会役員の門田菫恋(かどたすみれ)と 明里光夏(あかりみか)も一緒にいる。


 康代は神さま見習いセリエの神使セリウスと天女天宮静女(あまみやしずめ)に挟まれて秀美の前に遅れて現れた。静女が康代にウインクで合図を送る。空間にメラメラした光が溢れ始め、康代たち六名は光を残してその場から消えた。


 康代は背伸びをした振りをして辺りを見渡す。リニアモノレール宝田劇団劇場前駅の横手に瞬間移動していた。秀美の心配が一瞬にして杞憂に変わる。

 背後から田沼光博士と若宮咲苗助手が秀美に声を掛けた。


「秀美さん、お早いですね。同じモノレールでしたか」

「私たちは、別ので・・・・・・」


 田沼と若宮は察しが良く静女を見て薄笑いを浮かべていた。静女は不快な表情を一切見せず悠長に野良猫を眺めていた。


「セリエ殿、遅いでござるな」

『静女、セリエさんは次元の歪み問題でお忙しいのよ』


 静女は康代に瞬きを送った。康代には嫌な予感しかしない。


 瞬間移動した者たちの前に大きな屋根を持つ宝田劇団劇場があった。 関係者専用通路から康代たちは中に入って行く。


「康代さん、あっという間に当日がやって来ましたね」

『柿落としが終わったら、校内かるた大会よ。

ーー 秀美も参加しなさい』


「康代さんが言うと業務命令に聞こえますよ」

『秀美、些末な企図などないわ』


「分かっていますが」



 先に到着していた前畑利恵副大統領と織畑信美首相が朝川夏夜と一緒に顔を出す。


「康代さん、私たちのお席は、こっち側からです」


 真新しいエスカレーターに乗り上の階に到着。客席係の女性が政府発行の決済カードを読み取り、座席番号が表示された。


 康代たちは二階横の特別席が与えられていた。朝川は康代たちが座席に着くと「あとで」と一言を残し舞台の裾に消えた。


「朝川さん、康代さんたちは・・・・・・」

「もう、あそこの席いるわ」


 朝川は夜神紫依の前で小さく指先を特別席に向ける。


「本当、みんな着てくれたんだね」

 夜神が声を詰まらせていた。


 柿落としに辿り着くことが出来たのは徳田理事長と徳田康代大統領の協力無ければ出来ないことを一番知っていたからだ。


「鬼の目にも涙ね」

「朝川さん、そのお言葉、そのままお返しするわ」




 特別席で康代はプログラムを確認していた。ペーパーレスの時代において、紙は貴重品だった。


『今日の初日は、羽衣の昇天ね』

「康代さん、古典のあれですか」


『うん、多分、あれじゃないかしら』

「康代さんと違って、古典苦手なんですよ。

ーー 物語がよく分からなくて」


『秀美、御伽噺なんだから、ラノベと同じく気軽でいいのよ』

「どうも器用貧乏というか。不器用と言うか。固いと言うか」


『そうね。そんな秀美が私は好きよ』


 秀美は康代に言われ茹で蛸のように顔を赤くして照れていた。




 開演のブザーが劇場内に響き渡りライトが消えた。


 朝川夏夜が舞台中央の幕前に立ち短い挨拶を始めた。朝川が舞台の袖に下がり、ブザーがもう一度鳴り響く。


 舞台の幕が左右に開き大きな宮廷のセットが現れた。

 一転、場内から大きな拍手が起き静まる。


 主役の赤城麗華が羽衣の姿で現れ別れを告げているシーンから、この物語は始まっていた。




 休憩で場内が明るくなり古典ファンの静女がハンカチを目頭に当てていた。

「康代さん、この物語、古典と違うでござるよー」

『そうね。原作じゃないわね。でも素晴らしいわ』


「そういうものでござるか」

『そうよ。脚本が素晴らしいと感動するわね』

 柿落とし初日の舞台は、大喝采の中で閉幕した。



 

 神聖女学園かるた会所属の朝川、夜神、赤城、大河原百合、朝霧雫は、徳田理事長の提案で学園都市のビジネスホテルにある宴会場に招待されていた。宴会場は貸し切りで宝田劇団の関係者が次々に到着した。


「理事長、康代さんお招き頂きありがとうございます」

「朝川さん、宝田劇団劇場が出来て、嬉しいのは私たち神聖女学園よ。

ーー これからもよろしくお願いしますね」


「理事長、とんでもございません」


 給仕がワイングラスにワインを注ぎ終わり、理事長が立ち上がり言った。


「じゃあ、徳田康代大統領に乾杯をお願いしましょう」 

『分かりましたわ。理事長。

ーー みなさん、宝田劇団劇場の柿落としに乾杯!』


 康代の声が響き渡った。




 神さま見習いのセリエが康代の前に現れた。


「女神エルミオさまがにゃ、アカシックレコードの万華鏡の微調整を終えたそうにゃあ」

『セリエさま、よく分からないのですが』


「アカシックレコードにはにゃあ。人間の前世から来世の記録が刻み込まれているにゃあ。

ーー そこから逸脱することは不可能にゃあ。

ーー だがにゃあ。あの来訪者のアカシックレコードがにゃあ。

ーー 何者かの仕業で壊れていたにゃあ。エルミオさまが対応されているにゃあ」


『じゃあ、セリエさま。それが上手く行けば、良いのですね』

「多分、そうなるにゃあ」


 セリエは康代に伝えると消えて光になった。


「セリエさま、お忙しい」 

「セリウス殿も、セリエさまと同じくなるでござるよー」


「私は、まだまだ下っ端の神使でございます」


 康代はセリウスと静女の会話に苦笑するしかなかった。


「康代殿、今宵は皓月でござるよー」

『あらそうなの。静女ちゃん』

 『【一六一】今宵は皓月でござるよー』

 お読みいただき、ありがとうございます!

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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