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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
161/169

【一五九】倦まず弛まずでござるよーー

『【一五九】倦まず弛まずでござるよーー 』

約二千百文字


この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。

【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。


女子高生は大統領では、

徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。

『  』


皆さまの隙間時間でお楽しみください。

三日月未来(みかづきみらい)

 翌日、過去からの訪問者、昼間夕子、昼間朝子、星乃紫、朝霧美夏、夢乃真夏、夢乃真冬の六人は陰陽師の安甲晴美に誘われて安甲神社社務所の奥座敷に上がることになった。巫女たちに顔見知りの顔はいない。残酷な時の流れの中で、普通の人間は生き絶えていた。


 六人は社務所の明るい通路を進みながら、悠長に過去の記憶を手繰り寄せていた。

 夢乃真夏だけは、状況を咀嚼(そしゃく)して、あんぐりとして昼間夕子に言った。


「夕子先生、この社務所、昔とまるで違うわ。昔より大きくなっているわ」

「真夏ちゃん、私たちの時計は止まっているけど

ーー もう百年以上も時間が過ぎているのよ」


 社務所の廊下奥から巫女姿の女性がやって来る。そして、安甲晴美が訪問者に巫女を紹介した。


「こちらの巫女さんは、みなさんのお知り合いよ」


 昼間夕子は、顔を覗き込むようにじっと見つめ、はっとして息を呑む。


「まさか、花園さんなの? 」

「はい、花園舞でございます。夕子さま、ご無沙汰しております」


「花園さんが、どうして」

「夕子さまたちの失踪事件のあと、奥座敷に女神が現れました。

ーー 気付いた時は、この奥座敷に倒れていて

ーー 晴美神主に事情を説明した次第でございます」


「じゃ、花園さんも、あの奥座敷から飛ばされたわけ」

「私は、自覚がなかったので、それすら理解していませんでした。

ーー カレンダーの暦を見て、初めて事態に気がつきました」


「花園さんは、こっち側に来てどれくらいですか」

「あれは、神無月(かんなづき)神去月(かみさりづき)の間と思いますから」


「じゃあ、こちら時間で三、四か月かしら」

「ただ、時間が逆転したみたいで混乱しています」


「そうね、花園さんと、初めて神社でお会いした時よりも若いわ」

「夕子さまも、お若いです」


 花園舞と再会した六人は、奥座敷に上がり、未来でもあの忌々しいイラストを見ることになった。

安甲晴美が座敷に上がり言った。


「みなさんは、このイラストをご存知なのですね」

「ええ、父が過去に飛ばされた時、過去のこの神社で書かれたそうです」


「なるほど、今を未来とすれば、過去の現在と、更に過去の過去があるわけですね」

「私たちの多くが、三つの時代を経験しています」


「じゃ、夕子先生たちは、三つの時代を経験されたわけですか」

「当時、私たちは神聖学園の教師と生徒の関係でした。

ーー そして東富士見町のマンションに住んでいました」


「あの辺は徳田財閥と昼間財閥の大規模な共同開発で今は多分変わっているでしょう」

「そうですよね。百年以上でしょうから」


 昼間夕子は分かっていながら、涙が止まらない。


「昼間先生、時間って残酷よね」

「ええーー 」


 夕子は涙を拭って、改めて過去に置いて来た大切な思い出に心を寄せていた。娘の朝子は、母と似て鷹揚(おうよう)とした性格で母に寄り添いながら安甲に言った。


「安甲先生、お招き頂きありがとうございます。

ーー ところで、こちらで何かされるのでしょうか」

「はい、先祖から伝わる秘伝が書に残されていまして、

ーー みなさんの目の前で試してみようかと」


 星乃紫と朝霧美夏が大きな声で呟く。


「先生それ、まさかあゝああ」

「ええ、まさかです 」


「ただ、(みかど)の詠唱は、帝の生まれ変わりにしかできません。

ーー 確か、夕子さんのご主人が帝の生まれ変わりと先祖の書に書かれていましたが。

ーー 間違いありませんか? 」


「ええ、娘、朝子の父親です」

「本来なら、ご主人が相応しいのですが、

ーー こちら側でも色々調べた結果、お嬢様なら問題無いと」




 巫女が徳田康代と天宮静女を奥座敷に案内した。

『みなさん、遅れました。徳田康代でございます』


 康代は挨拶を終え神さま見習いのセリエにテレパシーを送った。

その刹那、神さま見習いのセリエが女子高生姿で座敷に現れる。


「康代よ、なんかにゃあ」

『はい、セリエさま、女神降臨だそうです』


「ふにゃあ、なんじゃにゃあ」


 セリエは、安甲から女神降臨の詠唱を見せてもらう。

「これはにゃあ、女神じゃにゃあい。これは、妖じゃにゃあ」


『じゃあ、セリエさま、訪問者たちは女神に化けた妖に悪戯されたわけですか』

「詠唱が間違ってるにゃあ。ここじゃ」


 セリエは、詠唱を止めさせ、神使セリウスを代わりに寄越し消えた。


「セリエさま、上司の女神さまに確認しに行きました」

「セリウス殿、セリエさまもお忙しいでござるな」


 康代は、セリウスと静女の会話を聞いて言った。

『みなさん、セリエさまが女神さまに確認しております。

ーー この場で、日没前までお待ち頂けますか』


 昼間夕子は、原因が妖の悪戯と知って笑顔を取り戻す。

「夕子先生、セリエさまが女神さま連れて来られるといいですね」

「真夏ちゃん、いくらなんでも女神さまは・・・・・・ 」




 しばらくして、セリエと女神アセリアが黄金の光の中から現れた。

 昼間夕子は、三日月姫の時代のこと、百年前のことを女神に説明した。


「その三日月姫を過去に戻すことは叶わぬが、わらわの前にいる者たちを戻すことはできよう」


「アセリアさま、この者たちにお慈悲をお願いします」

 セリエは、女神アセリアに土下座して申し上げた。


「分かりました。時の女神の許可を待ってなんとかしましょう。

ーー セリエは、()まず(たゆ)まず、精進ください」


 天女天宮静女は、女神アセリアの言葉に愉悦(ゆえつ)を表し呟く。


「倦まず弛まずでござるよー 」

 『【一五九】倦まず弛まずでござるよーー 』

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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