【一五六】真冬ちゃんと会えるといいわね、真夏ちゃん!
『【一五六】真冬ちゃんと会えるといいわね、真夏ちゃん!』
この話は、約二千三百文字です。
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
徳田康代大統領の母である理事長が、昼間夕子と昼間朝子を連れて生徒会室を訪問した。
生徒会役員の門田菫恋と大統領補佐官の明里光夏が入り口で対応している。
康代は、理事長の突然の訪問を知らなかった。
門田が大統領執務室の観音扉の扉を開ける。
重い扉が油圧の助けで軽々と開き、門田が康代に声を掛けた。
「大統領、お客様です」
門田や明里、豊下は、公用と私用で、康代への呼び方を使い分けていた。
門田のあとに母の理事長の姿を見た康代は、神聖女学園理事長に言った。
『理事長、お呼び頂ければ、私から参りましたのに』
「康代さんは、我が国の女子高生大統領よ。
ーー 私が来るのが礼儀ね」
門田と明里が、理事長と新任教師を連れて奥の応接室のソファに案内する。
「康代さん、この部屋、狭いわね」
『ここは、あまり人が来ませんので』
「まあ、いいわ。ここは私の神聖女学園ですから、私が増築させます」
康代は、理事長の性格を知っていたので反論を控えた。
執務室は、徳田幕府の建築技術者によって幾度も改修されている。
「それでね、康代さんはもう面識があると思うけど、他にもあるの」
『理事長、なんでしょうか』
理事長は、昼間夕子を見て目配せする。
「昨日は、ありがとうございました。大統領。
ーー 実は、私たちが今回、この時代にやって来たのは」
『昼間先生、なんでしょうか』
「朝子と私だけじゃありません。
ーー あの光を浴びた者たち全員ですが
ーー はぐれてしまいました」
康代は側近の天宮静女を見て言った。
『静女、協力してくださる』
「康代殿、静女で良いのでござるか」
『静女さまなら、問題ないわね』
「静女さまでござるか」
静女は、応接室の窓からグランドを見て言った。
「見かけない者がグランドにおるでござる」
昼間夕子は、もしやと思って窓際に行く。
「紫、美夏、こっちよ」
グランドにいた二人が夕子の声に気付き、夕子の名前を叫ぶ。
その紫と美夏の声に気付いた真夏が二人の背後に突然現れた。
「三人でござるな」
昼間夕子、昼間朝子は、星乃紫、朝霧美夏、夢乃真夏と再会した。
理事長が急用を思い出して帰ったあと、康代、光夏、菫恋の三人が訪問者を神聖女学園の一階食堂に案内した。
「わあ、昔と全然違う」
「真夏ちゃん、私たちは未来にいるのよ」
「そうね、未来だもんね」
「徳田大統領、この度は色々とお世話になりました」
『昼間先生、まだお世話はしていませんから。
ーー ところで、滞在先はどうされますか』
「えええ、まだ」
『明里さん、女子寮の空き、どうかしら』
「徳田さん、この間の第六号棟女子寮の完成で余裕があります」
『じゃあ、豊下さんと二人で、みなさんを案内して上げてください。
ーー あと政府発行の無決済カードを渡して説明して上げてください』
「分かりました」
明里は、豊下のホログラム携帯を呼び出し大統領の指示を伝えた。
『じゃあ、明里さん、食事と手続きが終えたら、
ーー ショッピングセンターのカフェ来てください。
ーー そして、今晩の宿泊予約もお願いします』
「学園都市の宿泊施設ですね」
康代は、明里に指示を与えたあと、静女に言った。
『静女、今日はね。あれはダメよ』
康代は言った瞬間、後悔していた。
天女に指図できる立場じゃないと。
明里を除いて康代たちはショッピングセンターのカフェ前に瞬間移動した。
昼間夕子、昼間朝子、夢乃真夏、星乃紫、朝霧美夏の五人は、タイムスリップ経験者で驚いていない。
「静女さんの魔法ね」
「真夏ちゃんでござるか」
「そうよ。真夏よ。よろしくね」
「静女でござる。よろしくでござる」
『それで、先生たちは、困っていませんか。
ーー 例えば、過去に戻りたいとか』
「確かにあるけど、それって夢と変わらないのよ。
ーー 起きている私が私なの。だから変わらないのよ」
『確かに、人の意識って今この瞬間ですね』
いつの間にか、神さま見習いのセリエと神使セリウスが現れた。
「康代にゃあ、時間出来たにゃあ」
『まあ、セリエさま』
康代はセリエに改めて五人を紹介した。
「康代にゃあ、まだまだ増えるにゃあ」
『セリエさま、意味が分かりませんが』
「セリウス、説明してあげにゃあ」
「康代さま、時空間が歪んでいます。
ーー それでタイムスリップが起きています」
『大丈夫ですか』
「この世界は、アメリアさまの勾玉の影響で守られています」
『じゃあ 大丈夫ね』
セリエがセリウスに代わり言った。
『過去は守られていないにゃあ』
「勾玉の影響は、この世界だけにゃあ」
明里と豊下が遅れてやって来てセリエにお辞儀をして着席した。
静女は相変わらず外を眺めている。
「康代さん、宿泊施設五人分予約しました。
ーー 女子寮は、秀美が明日対応します。
ーー とりあえず、臨時決済カードをお渡しします」
明里は、そう言って、五人にカードを渡し説明した。
「このカードはポイント制です。
ーー この時代には通貨がございません」
「明里さん、じゃどうやって生活するの」
明里は、自分のカードを見せて言った。
「ポイントは、毎月、政府から支給されます。
ーー 一日ごとに使用限度額がございます。
ーー 不正使用した場合、厳しいペナルティがございます。
ーー 主に食品日用雑貨、衣類に使用出来ます」
「じゃ、住居はどうするの」
「それは、徳田幕府の管理部門が全国のインフラを管理しています」
「じゃ、何も心配ないのね」
「はい、まだまだ途上ですが無駄のない社会になっています」
「明里さん、私もできることあれば協力するわね」
昼間夕子は、そう言って真夏の手を包み込み言った。
「真冬ちゃんと会えるといいわね、真夏ちゃん」
「真夏ちゃんには、拙者がおるから大丈夫でござる」
真夏は、天宮静女を全身で抱きしめて言った。
「天女の静女さま、ありがとうございます」
真夏の頬を静女の優しさが濡らした。
静女は、真夏の頭を撫でて微笑みながら言った。
「天女の静女が皆を見守るでござる」
『【一五六】真冬ちゃんと会えるといいわね、真夏ちゃん!』
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