第九部 第三十二章 来訪者編 【一五五】夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよー
『【一五五】夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよー』
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【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
女神ハレリアの軌道が安定して周期速度も女神ムクリアに近くなって来た。
ムクリアとハレリアのランデブーが年に四回あることが若宮咲苗助手の研究で明らかになる。
ランデブーの境が線路の分岐点が入れ変わるように、内側と外側の周期が交互に入れ変わることがわかった。
『若宮先生、線路ポイントみたいですね』
「はい、ハレリアの楕円周期が不規則性を助長しています」
『周期速度は、落ちついて来ているのでしょうか? 』
「そうなんですが、ハレリアはムクリアとの出逢いを待っているように見えます」
『セリウスさま、若宮先生のお話、どう思われますか』
「セリエさまに尋ねてみないと・・・・・・。
ーー 多分、そうかなあと思いますが」
「セリウス、なんか言ったかにゃあ」
「セリエさま、いつの間に」
「セリウスの声がにゃあ、予の耳に聞こえたにゃあ。
ーー セリウス、なんの用にゃあ」
「女神ハレリアさまと女神ムクリアさまの件で若宮先生が」
「あの学者かにゃあ」
「はい」
「で、なんとにゃあ」
「ハレリアさまがムクリアさまとの出逢いを待っていると」
「そうにゃあ、双子の女神だからにゃあ」
「じゃ、セリエさまも同じ考えでございますか」
「それがにゃあ、自然にゃあ」
「それで、セリエさま、今回の騒動ですが」
「ハレリアさまとアメリアさまのお陰でにゃあ。
ーー 一件落着かにゃあ」
「では、オーロラもですか」
「それはにゃあ、女神サンカラリアさま次第にゃあ」
『セリエさま、今回の天体ショーの影響は』
「康代、少し揺れくらいにゃあ。問題ないにゃあ」
神さま見習いのセリエは消えて虹色の光を残した。
東和二年一月八日、生徒会役員門田菫恋が大講堂の壇上に上がり開会の挨拶を終え、徳田理事長を紹介する。
「理事長の徳田でございます。
ーー 先日、生徒会総会で学園の新しい制服が決定しました。
ーー 詳細は後日、担当役員よりみなさんに知らされるでしょう」
理事長の手短な挨拶のあとで徳田康代生徒会会長が登壇する。
『みなさん、おはようございます。
ーー 今期もみなさんとご一緒に神聖女学園の学園ライフを充実させたいと思います。
ーー 今月は宝田劇団の柿落としのあと、恒例となりました校内かるた大会を行います。
ーー 是非、ご参加下さい』
徳田康代大統領の生徒会会長としての挨拶のあと、宝田劇団の五大スターが続いて登壇した。
和装で袴姿の朝川夏夜、夜神紫依、赤城麗華、大河原百合、朝霧雫が、“神聖女学園かるた会”の立場で女子生徒たちに挨拶する。
劇団責任者の朝川が生徒たちに柿落としの招待を伝え、会場は拍手に包まれた。
最後に明里光夏大統領補佐官が事務連絡をして門田が閉会を宣言し舞台の袖に消える。
「康代さん、どうもこう言うの慣れなくて光夏のお陰で助かります」
『そうね、秀美と光夏は長所が違うわ。
ーー 秀美が苦手なことをする必要など無いのだからね。
ーー 秀美はあるがままが最高よ』
「康代さんに、言われると照れるわね。
ーー ところで康代さん、かるた大会だけど」
『あれねーー 宝田劇団の柿落としのあとよ』
「次こそーー 挑戦してみたいと思っています」
『そうね、秀美って体育会系よね』
「康代さん、じゃあ、光夏は? 」
『文化会系じゃないかしら。
ーー それで、思い出したのですが新しい先生が今期から赴任します。
ーー 昔、この学園にいた先生の末裔とか。
ーー 母がお世話になった財閥の令嬢とか聞いているわ』
「康代さん、それって三大財閥じゃないですか? 」
『あら、光夏、さっきはありがとうございます』
「徳田、昼間、日野でした? 」
『昔の話ね。今はそう言う形態はなくなったのよ。
ーー でも、そう、その先生、昼間とか言っていたわね。
ーー 専門科目は古典とか言っていたわ。
ーー モデルもしている美人教師よ』
「その先生、よほど神聖女学園にご縁があるのね」
『私が聞いている情報では、その先生、サイキッカーとか』
神使セリウスと天女天宮静女が康代の言葉に反応して現れたあと、セリエの声がした。
「康代にゃあ、面白い話かにゃあ」
『ええ、セリエさま、新しい先生のお話です』
「誰かにゃあ」
『確か昼間夕子と朝子とか言っていました』
「康代にゃあ、その二人、生きていないにゃあ」
『セリエさま、脅かし無しですわ』
「脅しないにゃあ。
ーー 稀にあることにゃあ。
ーー 時間的には死んでおるにゃあ」
『どう言うことでしょうか。セリエさま』
「女神の悪戯かにゃあ。
ーー 時空に飛ばされているようにゃあ」
『セリエさま、それってよく耳にするアレでしょうか』
「そうかもしれにゃあい。
ーー 陰陽師が見ればハッキリしそうにゃあ」
その日の夕刻、徳田康代は側近の天宮静女と神使セリウスを伴って安甲神社の赤い鳥居をくぐった。
巫女の話によると、神主は接客中と伝えられる。
徳田たちは社務所の入り口で、短い時間を潰すことになった。
遅れて、田沼光博士と若宮咲苗助手が社務所にやって来た。
「こんにちは、徳田大統領」
『あら先生、プライベートでは敬称不用よ』
「失礼しました」
『ちょっと陰陽師に用がございましてここに来ました』
「私たちも、安甲先生に用がございます」
神社の巫女が徳田たちを奥座敷へ案内する。
そこには見たことのない同じくらいの歳の美しい女性が二名いた。
神社と不釣り合いな印象を徳田は感じ胸騒ぎを覚える。
「康代さん、紹介するわね。
ーー こちらが昼間夕子先生。
ーー そして、こちらがお嬢さんの昼間朝子先生」
徳田、田沼、若宮の三人は、安甲神主の言葉の意味を理解出来ないでいた。
どう見ても女子高生くらいの年齢だ。
『先生、たちの悪い冗談ですか』
「いいえ、冗談じゃないわ。
ーー セリウスさんと静女さんなら分かるでしょう」
「ええ、死んでおるはずなのに生きています」
『セリウスさま、どう言うこと』
「時の女神の悪戯かと」
『わからないわ』
「康代殿、神隠し覚えおるでござるか」
『ええ、覚えておりますが』
「あれは次元間の並行世界でござった。
ーー これは、時空間でござるよー」
『静女、じゃ、これは』
安甲晴美がぽつりと呟く。
「徳田さん、タイムスリップよ」
セリウスが陰陽師に言った。
「これは、更に不老不死の秘術の光を浴びております」
昼間夕子がセリウスを見て言う。
「目の前に黄金の光が現れ、
ーー 光の中から時の女神さまが現れました」
「いつですか」
セリウスが尋ねる。
「あれは大政奉還から
ーー 二百年が過ぎたころです」
「今は東和暦二年、大政奉還から
ーー 三百一年になります」
「私たちの中で時間が止まってしまっています」
『分かりました。
ーー できる限り先生たちの協力を生徒会が率先して致しますわね』
「夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよー」
安甲神社の境内に寒桜の蕾みが目立ち始めている。
少しずつ日没が遅くなって光が強くなっていた。
『明日もお天気良さそうね。静女』
「康代殿、お天気のことはわからぬでござるよー 」
『夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよー 』
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三日月未来