【一五三】天宮静女、夜空が黄金色に煌めいてるでござる!
『【一五三】天宮静女、夜空が黄金色に煌めいてるでござる!』
約二千百五十文字になります。
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
天女の天宮静女は、天界から月の女神ムクリアとテレパシー会話を楽しんでいた。
「静女さまが、下界に舞い降りる噂を聴きました」
「ムクリアさま、お耳が早いでござる」
「静女さまは、本当に下界に降りるのですか」
「天界の女神アメリアさまと、時の女神エルミオさまのご命令でござる」
「静女さまの、ござる調はいつからですか」
「徳田家康さまの時代に降臨した頃からでござる。
ーー ムクリアさま、誰かが来ましたので失礼でござる」
「静女さま、それでは、次の機会にまた」
「静女ちゃん、またお喋りして油を売っているわね」
「アメリアさま、油など売っていないでござりまする」
「そう、わらわの空耳でしょうか。
ーー 女神ムクリアの波動を感じましたが」
「はい、下界への準備のご報告をしていました」
「静女ちゃんね、相手が女神でも言って良い事といけない事があるのよ。
ーー 知っているわね」
「はい、アメリアさまの仰せの通りでござります」
「それならいいわ。
ーー 徳田家康は転生の渦の中に消え徳田康代として生まれ変わるわね」
「女神さま、性転換転生でござりますか? 」
「転生では、よくあることよ」
「それは、どう言うことですか」
「たとえばね、女女、女男、男男、男女などね。
ーー 肉体と意識の乖離現象は性転換転生に多いわね」
「静女は、中性ですが」
「神さまの多くは、性を選ばないのよ。
ーー 煩悩に支配されないためと言う説を聞いたことがあるわね」
「アメリアさまも中性でござりますか? 」
「静女ちゃん、女神に尋ねちゃならないことよ」
「アメリアさま、不敬をお赦しくださいませ」
女神アメリアは、事務的に静女に言った。
「先に下界に降臨した家康は、康代として、今ごろ十六歳になっているわ。
ーー 静女ちゃんは、康代を傍で支えてあげるのよ。
ーー そして、女神アセリアさまのご命令を聞いてね。
ーー 神使セリエがいるから大丈夫よ」
「アメリアさま、今回の下界は、どちらでしょうか」
「女神エルミオが言うには、地球と言う星になるわ。
ーー 静女ちゃんは、刀剣に変身して降臨する予定ね」
「アメリアさま、ありがとうございます」
「静女ちゃんは、ちょっと我儘なので心配なのよ」
女神アメリアの目頭が熱くなり、金色の雫が空間に散り星のように輝く。
静女はアメリアを母のように慕っている。
「静女ちゃん、忘れものない。
ーー 困ったら、わらわをテレパシーで呼び掛けるのよ。いいわね」
女神アメリアと天女天宮静女の別れの時が訪れた。
時の女神エルミオが静女を待っている。
「静女さま、ご用意は出来てますか」
静女は、エルミオが用意した金色の渦の中に入って行く。
転生の扉の渦ではなかった。
静女は、転移の渦から移動して、徳田康代がいる神聖女学園の執務室に現れた。
静女の脳裡に、女神アメリアさまとの別離の瞬間が甦り、静女は不安になっていた。
静女の中で拡大する不安に静女の無意識が女神アメリアにテレパシーを送った。
「あら静女ちゃん、お元気? 」
「アメリアさま、地球では、女神ムクリアさまと女神ハレリアさまの天体ショーが始まってござりまする」
「静女ちゃん、女神が災いを齎らすことなどないわ。
ーー 災いは、悪災の主人たちの仕事よ」
「悪災の主人ですか? 」
「人間たちは、悪魔とか魔王とか呼んでいるわね。
ーー でもね、神々の世界にはそんな黒いエネルギーなどないのよ」
「じゃあ、静女の不安は、心の幻影でござりますか? アメリアさま」
「静女ちゃんは、人間じゃないけど、
ーー 人間の澱んだエネルギーに憑依されているわね」
アメリアは、そう言って無詠唱魔法を掛けるように、静女の化身に黄金の光を浴びさせた。
人には見えない黄金の光に包まれた静女の全身に天界の力が漲り、その力がみるみる拡大して行く。
「静女ちゃん、ご気分は、如何ですか? 」
「アメリアさま、爽快な気分で不安も悉く消えました」
「静女ちゃん、たまには連絡するのよ」
女神アメリアは地球全体に、黄金の光の渦を浴びせて天界に消えて行った。
神さま見習いのセリエが言った。
「静女、今、女神アメリアさまの声がしていなかったかにゃあ」
「セリエ殿、アメリアさまはお帰りになったでござる」
「そうかにゃあ、大空に黄金の渦が沢山の光を放っているがにゃあ」
「それは、セリエ殿のような神さまにしか見えないでござるよー 」
徳田康代が静女の前に来て言った。
『大空の金粉も、静女の紫髪に付いた金粉も黄金の光を放っているわ。
ーー 静女あなた、また、なんかした』
「康代よ、静女じゃないにゃあ。
ーー 静女にあんな大きな力は無いからにゃあ」
『まさか、セリエさまですか? 』
「それもあり得ないにゃあ。
ーー あれが出来るのは、天界の女神、時空の女神、地球の女神の三大女神だけにゃあ。
ーー 並行世界の女神パラリアさまもおるから四大かにゃあ」
『それでは、女神さまたちが地球に来たのですか? 』
「康代よ、今回の件は事情が違うにゃあ」
セリエはそう言って女子高生姿の天宮静女の肩に手を置こうとして後悔する。
セリエの手が磁気バリアで弾かれていた。
「静女が磁石になったにゃあ」
「セリエ殿、静女は天女でござるよー 」
徳田康代は、静女とセリエの会話に、すっかりハレリアとムクリアのランデブーを忘れていた。
オーロラの残骸が金色に輝いていた。
「康代殿、夜空が黄金色に煌めいてるでござる」
『静女、やっぱり静女じゃないの。
ーー 今日は黄金の夜空ね』
『【一五三】天宮静女、夜空が黄金色に煌めいてるでござる!』
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三日月未来