【一五二】夕焼け雲とオーロラの残骸が煌いてるでござるよ!
「【一五二】夕焼け雲とオーロラの残骸が煌いてるでござるよ! 」
約二千三百文字になります。
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
『静女ね、モンスタークラスの磁気嵐、どうなると思う? 』
「康代殿、静女は天女でござる」
『そうね。科学者じゃないわね』
「左様でござる」
徳田康代大統領のホログラム携帯が鳴る。
『あ、明里さん、どうされました』
「大統領、火星基地からまた連絡が入りました。
ーー 今回のコロナガス到達時間です」
『若宮さんの報告では、四十二時間猶予と聞いていますが』
「それが大統領、移動速度が過去にない速さで到達するそうです」
『それは、どうなるのですか』
「えええ、最大速度が増えた関係で、
ーー 四十二時間から三十時間に変更されたそうです」
『明里補佐官、宇宙発電所のエイアイ制御に追加されている、
ーー 手動オプションの切り替えを再度確認してください』
「分かりました。では、後ほどまた」
明里光夏大統領補佐官の電話のあと、康代は静女に尋ねた。
『ハレリアさまとムクリアさまのランデブーはいつになりますか』
「康代殿、静女の専門じゃないでござる」
『そうね、分かったわ』
康代は豊下秀美を呼び出し、田沼光博士と若宮咲苗助手に計算を依頼するように指示を与え電話を切る。
『静女、田沼先生たちを待つわ』
生徒会役員の門田菫恋が執務室の観音扉を開けて、愛らしい顔を覗かせ徳田康代に伝えた。
「大統領、先生たちがお見えになりました」
『門田さん、お通しして』
門田は執務室の廊下壁沿いに移動して、窓側の応接間に田沼と若宮を通した。
『田沼先生、若宮先生、昨日に引き続き、お世話になります』
徳田康代は、二人に深々く頭を下げた。
「大統領、仕事ですから、頭を上げてください」
田沼が言った。
門田菫恋が田沼と若宮にお茶を運んで挨拶している。
「田沼先生も、若宮先生も、若草色のスカートスーツがお似合いです」
二人はジャケットの下にコーラルピンク色のシャツを着ていた。
門田が生徒会室に戻ったあと、入れ替わりで豊下秀美が入って来る。
『豊下副首相も、ソファに座って』
豊下は静女の隣に静かに腰を下ろす。
「大統領、例の月ですか」
『違うわ。コロナガスよ』
「それは、厄介ですね」
『じゃあ、若宮先生、本題に入ります。
ーー 火星基地から連絡がありました。
ーー コロナガスの地球への到達時間が早くなったそうです』
「どれくらいですか? 」
『連絡では、最大速度が変わり約三十時間と聞いています』
「と言うことは、昨日の今頃で四十二時間ですから、あと五、六時ですね。
ーー 十二時間も早くなるなんて想定外です」
若宮が深い溜息を漏らす。
「あっ、大統領失礼しました」
『いいわよ・・・・・・。
ーー と言うわけで先生、
ーー 双子の月のランデブー時刻を教えて頂きたいのですが』
「大統領は、月のパワーに期待し過ぎていませんか。
ーー アニメみたいなチートは考えられませんから」
天宮静女がグランドで部活している女子生徒たちを指差して言った。
「康代殿、生徒が騒いでいるでござるよ」
『静女、中等部のテニス部の女子生徒たちよ』
「康代殿、増えているでござる」
『何かしら、豊下さん、教えてくれない』
「分かりました。調べます」
豊下は、言葉を残して執務室から出てグランドに行った。
『豊下さん、もう、あんな所にいるわ』
徳田康代のホログラム携帯電話が鳴る。
「豊下です。大統領、分かりました。
ーー みんな空を指差しています」
『空って、まさか・・・・・・ 』
その時、若宮が大統領に助言する。
「多分、今夜は満月ですから、その関係じゃないかしら」
「康代さん、ムクリアの後ろに高速で移動しているハレリアが見れます。
ーー めちゃくちゃ早くて、恐ろしい速度です」
『秀美、また連絡してね』
康代は携帯を切り若宮を見て言った。
『若宮さん、ムクリアとハレリアのランデブーが始まったわ。
ーー 磁気嵐到達まで、あと何時間かしら』
「今日の夕刻ごろかと」
徳田康代は明里に緊急対応マニュアルで対応するように指示を与えた。
『若宮さん、ハレリアの移動速度は、どれくらいですか』
「ムクリアの通常の五倍から六倍かも知れません」
『意味がよくわからないわ』
「ムクリアが一日で地球を一周するところ、
ーー ハレリアは五周か六周するわけです」
『そんなこと・・・・・・。
ーー ハレリアはランデブーを楽しんでいるの、若宮さん』
「いいえ、私の勘が正しければ、直撃するコロナガスにバリアを貼っているように見えます」
「若宮先生、その速度、更に早くなっていますよ」
「ーー えええ、田沼先生、じゃあ」
「そう、十倍以上でしょう。
ーー ただ、月の大きさから判断して、ムクリアの外周を高速移動でしょう」
「先生、内側で無くて良かったわ」
「本当、内側でなくて」
「康代さん、秀美ですが、不思議なことが起き始めました」
『何が不思議なの』
「それが、オーロラが見えたと思うと消し飛んでいます」
『どういう意味ですか』
田沼と若宮が執務室の窓辺で空を指差しながら言った。
「ハレリアさまが楕円軌道で磁気嵐を消し飛ばしています」
『えええ、そんなこと』
康代は、目の前で起きている神々の天体ショーに苦笑いを浮かべ、あとから参加したセリエの神使セリウスを見た。
「康代さま、セリエさまが言う通り、
ーー ハレリアさまが地球の災いにバリアを実施されています」
神さま見習いのセリエが康代にテレパシーを届けた。
[康代よ、すべては幻想じゃあにゃあ]
[セリエさま、幻想なのですか]
[だからにゃあ、杞憂にゃあ]
セリエのテレパシーが途切れ康代は天女天宮静女を見る。
「夕焼け雲とオーロラの残骸が花火のように煌いてるでござるよ! 康代殿 」
大江戸山脈の上には満月のムクリアが夜の帷に浮かび上がり、ハレリアが空にいくつもの放物線を描いている。
神聖女学園の西校舎と東校舎の窓に見学の女子生徒が殺到していた。
『静女、何も起こらないといいわね』
「康代殿、大丈夫でござるよー 」
「【一五二】夕焼け雲とオーロラの残骸が煌いてるでござるよ! 」
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三日月未来