【一五一】康代殿、月見善哉にお付き合いでござる!
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
門田菫恋は外見とは、想像できないくらい、せっかちな性格だった。
副首相の豊下秀美ほどでは無かったが・・・・・・。
「ーー と言うわけで、皆様の来期と関係があることなので、
ーー お集まりしていただきました」
「門田さん、それってーー ネットでも出来ませんか」
「意見を聞いて見ないと分かりませんので」
門田は取り寄せていた端切れの布を数枚持って、順に生徒会役員に見せて回った。
「門田さん、セリエさんの布は、どれですか? 」
「生憎、あの端切れは見当たらず、取り急ぎ用意した布は、これだけです」
と門田が言った時、明里光夏が女子高生姿のセリエを連れて来た。
「セリエさんを連れて来ました」
「明里さん、ありがとうございます」
会長の徳田康代と側近の天宮静女もセリエと一緒にいた。
「セリエさんが着用しているジャケットが、ワインレッド色になります」
「門田さん、この色はブラックワインレッドとセリエさんが言ってましたよ」
明里の言葉にセリエが頷く。
「明里さんのご指摘を受けてブラックワインレッドに訂正します。
ーー あとで、ご意見を集めますので、十五分後までにアンケートにお応えください」
明里光夏がアンケート画面を開いて見ていた。
「門田さん、もう集まり始めていますよ」
「本当、早いわ」
「元白波女子の役員は、水色で決まりました。
ーー 元有馬女学園の方は、白色を選んでいます」
明里が言った。
「白波は緑色のスカートで、有馬は紫色のスカートでしたっけ」
「門田さん、そんな決まりありませんよ。
ーー あれは、偶然の結果です」
「でも、緑に水色、紫に白でしょう」
「ーー 神聖はセリエさんのブラックワインレッドを選んでいます」
「みなさん、義理堅いですね」
門田が呟く。
「ところで、門田さん、今の生徒会役員は何人になりました? 」
「元白波女子の生徒四百名に有馬が三百五十名で、十五クラスから十五名が参加しています」
「三十名の間違いでしょう」
「いいえ、先方の判断です」
十五分後、生徒会役員の集会には、五十二名の女子高生が集合していた。
「ねえ、ねえ、この間のお月さま、どうなったかしら」
「そうね、そっちの方が夢があるわ」
「新しい、お月さま、なんと言ったっけ」
「ハレリアよ」
「なんか、神々しいお名前ね」
明里が門田に代わって挨拶して言った。
「今、みなさんのアンケート結果を集計しました」
明里は、ホログラムディスプレイを生徒会室隣の執務室側壁に当てて見せた。
「偶然ですが、元白波女子のみなさんは水色を選び、
ーー 元有馬女学園のみなさんは白色を選んでいます。
ーー 神聖女学園はブラックワインレッド色を選択しています」
明里は続けた。
「ーー と言うわけで、水色、白色、ブラックワインレッドの三色になりました。
ーー 役員は、生徒に三色を提示して、
ーー その中からお好きな色を選択するようにお伝えください」
明里光夏は一気に喋り、門田菫恋と代わる。
「門田です。明里さんが説明した通り、
ーー 選択は自由ですのでよろしくお願いします。
ーー 本日は、これで解散しますが。
ーー 残務がある方はご自由です」
女子高生たちの多くが生徒会室のワークデスクを離席して廊下に消えた。
豊下秀美が明里光夏に耳打ちしている。
「ええ、火星基地からですか? 」
「専門的過ぎてわからないので、若宮先生にお願いしたいと思います」
明里は豊下の意見を徳田に伝え、田沼博士と若宮助手を呼ぶことになった。
コーラルピンクのスカートスーツ姿の田沼光博士と若宮咲苗助手を門田が出迎える。
「先生、こちらへ」
『田沼博士、若宮先生、お忙しいところ申し訳ありません。
ーー 今回もサポートをお願いします』
「大統領、お世話になっているのは、こちらですから」
『ーー 実は、火星基地の観測員から緊急連絡が入りました。
ーー 太陽の上層大気で大きな爆発が起きたそうです』
「規模は、どのくらいと聞いていますか」
『意味がよく分からないのですが、
ーー レベル五とか言っていました』
「上層大気での爆発でしたね」
『はい』
「若宮さん、ちょっと計算してくれる」
若宮はホログラムディスプレイを開き、インターネットに接続してデータをメモした。
「先生、今回の太陽風は毎秒千キロメートルを超えています。
ーー 接近速度は、毎分六万キロメートルの計算になります」
『どうなりますか』
「今日の場合ですと、
ーー 太陽と地球の距離は、一億五千百六十四万キロメートルです。
ーー ですから、毎分六万キロで割りますと時間が分かります」
若宮は、データを見ながら携帯で計算した。
「ーー 約二千五百二十七分です」
若宮は、もう一度計算して言った。
「はい、約四十二時間くらいで、地球の磁場に影響があるかと」
『じゃあ、まる二日ありませんね。
ーー 若宮先生、ハレリアはどうなりましたか』
「あちらの楕円周期は・・・・・・ 」
天女天宮静女が執務室の窓から指を差して言った。
「康代殿、今夜は月見善哉でござるよ」
ムクリアの背後に小さなハレリアの姿が見えていた。
「大統領、モンスタークラスの磁気嵐に警戒ください」
『分かったわ。田沼先生、若宮先生、ありがとうございます』
徳田は二人が離席したあと、神さま見習いセリエに事態を伝えた。
「分かったにゃあ。
ーー ハレリアに伝えておくからにゃあ」
セリエは、ひとこと言ってテレパシーを終えた。
「康代さん、女子高生が校庭で騒いでいますが」
『静女、どうしよう? 』
「待てば回路の日和でござるよー」
『静女ね。時間ないのよ』
「康代殿、時間は作るものでござる! 」
『分かったわ』
康代は静女に背中を向けた。
「ハレリアさま、主人が困っておるでござる」
「静女殿、ご無沙汰してます。
ーー 女神サンカラリアさまからもご連絡を頂いています。
ーー ムクリアさまとランデブーをお待ちください」
静女のテレパシーが終わった。
「康代殿、ハレリアさまとムクリアさまのランデブーがござるよー」
康代は驚きながら、執務室の窓辺に立って小さなハレリアを見て呟く。
『ハレリアさま、よろしくお願いします』
「康代殿、セリエ殿と同じでござるよー。
ーー すべては杞憂でござるよー」
『静女がいつも傍にいてくれて幸せよ』
「康代殿、月見善哉にお付き合いでござる! 」
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三日月未来