第三十一章【一四九】黒猫セリエ復活で潜入工作員失禁気絶事件!
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
【一四九】女神ハレリアさま、もうすぐでござるよー
は、初投稿から一年になりました。
記念話なので三千百文字を執筆しました。
東和二年元日のお話になります。
セリエの黒猫復活シーンが、モンスターレベルですが。
お楽しみください。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
神聖女学園武道場の外では、宝田劇団ファンが周囲を取り囲んでいる。
ホログラム携帯でインターネット配信を見ている者が殆どだ。
地下と地上の玄関には女子高生警備が三十人が徳田幕府本部から応援に駆け付けていた。
豊下秀美副首相は織畑首相の指示を受け、武道場の外にいる宝田劇団ファンのため隣の大講堂を開放した。
「副首相の豊下です」
宝田ファンが豊下のスピーチに耳を傾けていた。
「みなさんは、隣の大講堂のホログラムスクリーンでインターネット配信をご覧になれます」
「ええええええ、いいんですか」
「女学園なので、男子禁制ですが・・・・・・。
ーー 実演大会が終了しましたら、大講堂で御神酒が配られます。
ーー もちろん、夜神、朝川、赤城、大河原、朝霧の五名も参加されます。
ーー 本日は元日なので、特別です。では、お楽しみください」
豊下は宝田ファンに伝えると、スタッフに合図して大型ホログラムスクリーンに映像を映し出した。
「凄い、来て、良かった」
「ねえねえ、あの副首相って、気さくな女子高生ね」
「背丈は、普通くらいかな」
「赤茶の姫カットのボブヘアが可愛い」
いつの間にか、宝田劇団ファンが豊下秀美の噂で持ちきりになっていた。
九分割の大スクリーンの中央右横には、川霧椿と朝霧雫の姿が映し出されている。
「ねえ、あの朝霧さんの相手、クイーンとそっくりね」
「知らないの、あの人は、クイーンの双子の妹よ」
「なんで、そんなに詳しいの」
「ほら、これ」
ホログラム携帯をかざして見せた。
「知らなかったわ」
「これは、月刊かるたのウエブサイトの特集記事よ」
「そんなの、あったん・・・・・・」
ファンたちが静かになった。
由良道江が、次の札を取り出して、前の札の下の句を詠み上げ続けた。
「ひとにはつげよ・・・・・・。
ーー きみがため・・・・・・」
川霧桜の長い手が一瞬早く、札を払い上げ空中に放物線を描いた。
川霧は、光孝天皇の下の句“わがころもでに”が空札になったことから賭けに出たのだ。
“きみがため”は、二枚。
残りの一枚は安甲の陣にある藤原義孝の“ながくもがなと”と分かっていた。
川霧桜が安甲晴美に一枚を送り、二人の持ち札が、五枚ずつになった。
審査員の松山八重先生が川霧桜の処へ行って、試合終了を宣言し由良道江に伝えた。
由良も司会の長月真千を見て合図を送った。
「みなさん、司会の長月真千です。
ーー 川霧桜かるたクイーンの対戦が終了しました。
ーー 本日の実演大会を終了します。
ーー このあとは、隣の大講堂で、新春御神酒を頂きましょう」
長月の言葉を受け、応援席の女子高生たちが一斉に立ち上がって移動を始める。
「織畑首相、ファンは大講堂で待機しています」
「豊下さん、ご苦労様、私たちも移動しましょう」
豊下は朝川と夜神の処に寄ってファンのことを伝えた。
「まあ、豊下さんには、うちの劇団がお世話になっているけど
ーー あまり驚かせないでね」
「朝霧さん、まあーー 今日は豊下さんの顔を立てて上げましょう」
赤城、大河原、朝霧も頷く。
徳田幕府女子高生警備を従えて、大統領キャビネットの面々も移動を始めた。
移動中に七人の女性が、徳田を包囲して挨拶する。
「大統領、新年おめでとうございます」
『あら、みなさん、お元気でしたか』
康代は、黒川亜希、水上泉、尾上ゆかり、紀戸茜、千歳翼、吉畑松子、水戸光子の顔を順に見ながら言った。
女子高生警備の肩には、徳田幕府の金色の紋章が光っている。
紋章の色が階級を表していた。
徳田康代大統領は階級には否定的だった。
身内の中での指揮系統には役立つと判断して放置している。
『本日は、気温急上昇でみなさんも風邪にご注意ください。
ーー これから、大講堂に移動します。
ーー みなさんも宜しければ、如何ですか』
「大統領、是非、お供させて頂きます」
徳田幕府の金色紋章女子高生警備に囲まれながら、康代たち大統領キャビネットが地下玄関を出て行く。
「大統領、ここにもロボット警備がいるんですね」
『豊下さん、女学園のセキュリティは何重にもなっているのよ』
「それにしても、多いですね」
『校庭には、ドローンも巡回しているわよ。
ーー 戦争のない時代になっても、人は誘惑に弱いのね』
「大統領、実は、ある情報がありましてーー 私たち七人が応援に入りました」
『何でしょうか? 』
「宝田劇団ファンに工作員が紛れているという情報をキャッチしています」
神さま見習いのセリエと天女天宮静女が康代の前に透明化で現れた。
[康代、皆には見えぬから、大丈夫にゃあ]
[康代殿、見えぬでござるよ]
康代はセリエと静女に対して、テレパシーで会話をしていた。
『セリエさま、不審者の情報ですが』
[心配にゃい。愉快犯にゃあ。お仕置きは任せてにゃあ]
『セリエさまのお仕置きは、人間には怖いレベルですが』
[ちょっとだけにゃあ]
セリエと静女はそういうと、大講堂の中を見渡す。
[いたにゃあ]
[セリエ殿、お仕置きでござるか]
[静女、ちょっと甚振ってあげるにゃあ]
セリエと静女は、神聖女学園の制服に変装した女二名を、空中浮遊滑走路の上に瞬間転移させた。
上空からは、大型の空中浮遊貨物が着陸体制に入っている。
「なんで、ここにいるのよ」
「分からないわよ」
神さま見習いのセリエは巨大な黒猫に変身して、二人の女を手で転がしながら言った。
「次に学園都市に侵入したらにゃあ、食べるにゃあ」
セリエはそう言って、片方の女を両手で押さえ口に咥えた。
滑走路に下ろし、ザラザラな舌で女の顔を舐めている。
滑走路に降ろされた女は失禁して気絶した。
見ていた方の女は拝手をしながら泣きじゃくっている。
「二度と来るにゃあ。次は噛み殺すにゃあ」
女は恐怖のあまり、前の女と同じく失禁して気絶した。
「セリエ殿、戻すでござるよ」
「徳田幕府にゃあ」
侵入者は、徳田幕府の牢屋に瞬間転移された。
「あら、この二人、どなたかしら」
「ちょっと、臭いがしない」
「教官、失禁して気絶しています」
「前にも同じことあったわね」
「あとで、尋問ね」
牢屋の看守は、皮製の鞭を激しく床に叩き付けて言った。
「いつまで、気絶している振りをしている。
ーー 洗いざらい白状しないとお仕置きよ」
悪女二名は、お仕置きの言葉にトラウマが甦る。
黒川亜希のホログラム携帯が鳴る。
「黒川さん尋問が終わり、侵入者を確保しています」
「ありがとうございます。あとで、メールをお願いします」
「大統領、よく分かりませんが侵入者が確保されたそうです」
『黒川さん、良かったわね。じゃ、これからみんなで御神酒よ』
神聖女学園の宿泊施設の食堂の係が、ファンと関係者に盃を渡し御神酒を注いでいた。
宝田劇団の朝川夏夜が舞台の中央で挨拶したあと、夜神、赤城、大河原、朝霧が続いた。
「みなさん、今月中旬にある、宝田劇団劇場の柿落とし、私たち五名も出演しますので、
ーー お時間あれば、お越しください」
拍手が鳴り止まず、朝川が盃を両手で高く持ち言った。
「本年が素敵な年でありますよう、乾杯!」
「康代殿、乾杯でござるよ」
『静女、本年も宜しくお願いします』
「康代、まだ今年はこれからだにゃあ」
康代の紫色の着物と静女の紫色の瞳と髪が大講堂の舞台の上で目立っている。
セリエはワインレッドのジャケット姿で水色の髪を指で梳かす素振りをしていた。
太陽の女神サンカラリアが女神ムクリアと女神ハレリアに告げた。
「地球軌道は、どうですか」
「サンカラリアさま、もうすぐ着きそうです」
「ハレリアは、どうされたいのじゃ」
「金星の女神ヴィンスさまのように、美しく輝きたく存じます」
「ハレリア、地球の生命に希望を届けるのが、私たち女神の役目よ」
「ありがとうございます」
「セリエ殿、女神ハレリアさま、もうすぐご到着でござるよー」
「静女、何も起こらないにゃあ」
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三日月未来