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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
150/169

【一四八】かるたクイーンは大山札が嫌いでござるか!

この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。

【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。

東和暦二年元日が始まりました。

一四八話は約二千七百文字です。


女子高生は大統領では、

徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。

『  』


皆さまの隙間時間でお楽しみください。

三日月未来(みかづきみらい)

 東和暦二年の元日の太陽が学園都市を照らしていた。

季節外れの風が吹き込み気温が急上昇している。


 神聖ショッピングセンターのリニア式モノレール駅の隣に新しい駅が新設された。

この日は、開業日になって、徳田幕府から豊下秀美副首相が参加して挨拶を済ませている。

 新しい駅名は、「宝田劇団劇場前」と命名された。


 神聖女学園前と国民住宅前の間にある。

その先には、東富士見町駅があり東都の中心部に伸びていた。

永畑町火山事件以来、旧都心部はゴーストタウンになっている。


 モノレールは旧都心部を迂回して、新しい環状を作っていた。


 宝田劇団の柿落としに先駆けて、新しいモノレール駅が開業した。


 宝田劇団劇場に隣接する中高層の建物が、新しくなった宝田劇団本部である。

劇団の生徒たちは、学園寮から本部宿舎に移転予定になっていた。


 夜神紫依舞台監督、本部責任者の朝川夏夜は、神聖女学園かるた会を理由に学園寮に留まることになった。

赤城麗華、大河原百合、朝霧雫の三人も夜神と朝川に続き、学園に残留を希望している。


「モノレール駅が出来て、良かったわ」

朝川が感慨深く夜神に言った。


「朝川さんらしく無いわね」


「そうかしら、夜神さんだって逡巡していたじゃあない」


「私は、現役じゃあないし、かるたを取ったのよ」


「でしょう。夜神さんと同じ思いよ」




「朝川さん、夜神さん、新年明けましておめでとうございます」


「赤城さん、大河原さん、朝霧さん、本年もかるたを宜しくお願いします」


 五人の大スターは袴姿で、学園正面地下玄関から武道場への通路を移動していた。


「やはり、学園寮に残って良かったわ。

ーー 地下でも地上でも移動が快適ね」


「大河原さんの言う通りよ。

ーー 地下は全天候に最適ですから」

赤城だった。


「ところで、今日の実演競技かるた大会って、何を実演するのかしら」

朝霧が呟く。




 背後から大きな声が聞こえて朝霧が振り返る。


「あっ、安甲先生、新年おめでとうございます」


「朝霧さん、今日のはね、実演なのよ」


「先生、その意味がよくわからないのですが」


「書き初めの競技かるた版ね」


「みんなで、ちょっとだけ派手な仕草でかるたをするだけ。

ーー 勝敗は競わないわ。

ーー 残りが少なくなったら、審査員が終了を合図するの。

ーー そして、御神酒で乾杯よ」


「わああ、楽しそう!」


「でしょう、朝霧さん」


「それで、私はどなたと対戦しますか? 」


「多分、椿さんになるわ」


「えええ、川霧クイーンの妹さん」


「そうね、実力も近いと思うわ」


 武道場の地下玄関が安甲たちの前に見えて来た。


「とりあえず、みなさん、控え室に移動しましょう」


「でも、先生、凄い人ですが」


「学園寮の応援じゃないかしら。

ーー 問題ないわ」




 武道場の地下玄関を抜け控え室の扉を引いた。

中には、神聖女学園かるた部とかるた会の部員と会員が袴姿で雑談している。


 徳田康代は、前畑利恵、織畑信美、豊下秀美、明里光夏、門田菫恋と一緒に実演の準備をしていた。

 明里と豊下は慣れた手付きでカメラ配置を確認した。


「明里さん、カメラ二台じゃ少ないと思いますが」


「もうじき、プロのカメラマンが到着するから大丈夫ですよ。秀美さん」




 徳田と門田は、(たすき)と鉢巻きを準備していた。

前畑、織畑は、徳田に挨拶して見学席に移動する。


『門田さん、今日の司会はどなたがされるの』


「えええ、安甲先生が」


 安甲が門田に近づき言った。


「生徒会の長月真千(ながつきまち)さんよ」


「あの控えめな長月さんですか」


「そうよ、本人は、専任読手志望と聞いているわ。

ーー 今期から、部活にも顔を出しもらう予定よ」


 安甲は、自慢気に言って長月の所に移動した。



 プロカメラマンの女性が二人到着した。

「明里さん、遅くなりました」


「本年もよろしくお願いします」


「いいえ、こちらこそ宜しくお願いします」


「じゃあ、セットをお願いします」




「安甲先生、スタンバイ完了しました」


「じゃあ、みんな、壁の張り紙の対戦相手を見て、席に着いてください」


川霧桜、安甲晴美

川霧椿、朝霧雫

徳田康代、逢坂めぐみ

門田菫恋、唐木田葵

姫乃水景、和泉姫呼

森川楓・・・・・・。


 A級選手は黄色の襷と鉢巻きをしていた。


「これから、新春競技かるた大会の実演を開催いたします。

ーー この大会は勝敗を競いません。

ーー 審査員が終了を合図した時点で終了となります。

ーー 今日の読手は由良道江先生、審査員は松山八重先生にお願いしました」


 由良と松山が所定の位置に着いた。


「それでは、みなさん、かるたを並べてください」


 由良が長月の言葉を引き継ぎ言った。


「暗記時間、十五分、始め!」


 武道場の空気がひんやりしてピリピリしている。


「暗記終了」


 由良が手を上げ制止させた。




 由良道江が序歌を詠み上げる。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

ーー いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・

ーー いまを春べと 咲くやこの花」


 由良は、ゆっくりかるたを取り出し読み上げる。


「あきのたの・・・・・・ 」


 天智天皇の上の句が読み上げられた。

知らない人がいない聖地の和歌は三字決まりだった。


 会場は、鎮まり返った。


 川霧桜クイーンと安甲晴美元クイーンの対戦映像がインターネットで配信されていた。

隣では、宝田劇団の大スター朝霧雫と現役クイーンの双子の妹の椿がかるたを取り合っていた。


「椿さん、遠慮しないでね」


「朝霧さん、こそ」


「私は、大丈夫、ほら」


 朝霧は、椿に予防のテーピングを見せて上げた。

 椿も、自分のテーピングを見せた。


 由良道江が二人に注意を与え、試合が続く。


「あしびきの・・・・・・ 」


 柿本人麻呂の二字決まりが読み上げられたが、椿と朝霧のところは空札(からふだ)になった。




「前畑さん、これ本番の緊張感がしますが」


「織畑さん、あの黄色の鉢巻きと襷は、A級選手ですよ」




「はなのいろは・・・・・・ 」


 川霧桜クイーンの払い手が豪快に空気を切り割いた。

かるたは、空間を回転して読手の近くに落ちた。

 

 桜は立ち上がり、自陣にあった小野小町の三字決まりを拾い上げ席に戻り安甲に大山札を一枚送った。


 安甲は川霧桜の戦略かと首を傾げた。

大山札は六枚しかないからだ。


わたのはら

きみがため

あさぼらけ

きみがため

あさぼらけ

わたのはら


安甲は呟いた。

「桜さんの駆け引きか」


「晴美先生、そうよ」


 安甲は”きみがため“を桜から遠い自陣の右側手前に置いた。




 静女とセリエが観客席に現れた。


「セリエ殿、大山札でござるよ」


「現役かるたクイーンにゃあ、意味が深いにゃあ」


「セリエ殿、かるたクイーンは大山札が嫌いでござるか」




 学園寮のラウンジにある大型ホログラムスクリーンには、インターネットから競技かるた実演の模様が配信され、宝田劇団ファンが朝霧雫に注目していた。


「九分割画面の真ん中が朝霧雫さんよ」


「相手は現役かるたクイーンの双子の妹さんの椿さんだって・・・・・・ 」

 お読みいただき、ありがとうございます!

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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