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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
前編
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【十五】東都の異変が拡大したの?

 豊下秀美(とよしたひでみ)明里光夏(あかりみか)の活躍で宝田劇団の公演日程が決まった。


 間もなくした頃、原口駅付近で水蒸気騒ぎが起きた。


 田沼光博士と若宮咲苗助手は、神聖女学園内の研究室で成分データを解析していた。


「先生、これは、間違いありません」

「やっぱり、起こるべくして起きてしまったようね」


「山崎線の原口駅付近まで地下が繋がっているとしたら」

田沼は言葉を切った。


「先生、事態に変化が起き始めていますね」

「予定の避難計画を前倒しにしないといけないかも知れない」


 東都の中心機能の殆どは、移転済みだった。

鎖国以来、外国政府が支配していた基地や大使館は皇国から退去している。

横川基地は徳田幕府軍が駐留し管理下になっている。

第二羽畑空港として機能をも共有する複合空港になっていた。


 大江戸二十三区の災害拡大を想定した徳田大統領の対策だった。

神聖女学園生徒会室にある大統領執務室では、田沼博士と若宮助手が訪問していた。


 副大統領の前畑利恵が対応している。

「それで、博士、原口駅付近はどうなるのでしょうか」

「大変言いにくいのですが、おそらく立ち入り禁止かと」


「そうですか、周辺住民の避難を優先しましょう」

「そうして頂けると有り難いですが」


「永畑火山の発生以来、多くは都心部を捨てていますので」

「それならいいのですが」


 徳田大統領が赤い薔薇の花束を持って入って来た。


「大統領、それは・・・・・」


 ガラス窓から差し込んだ夕日に反射して薔薇の花びらが斑色に映る。


『安甲先生が()()()()()()()と言って下さったのよ』

「ご苦労様、手当ですね」

利恵が笑う。


『ところで田沼先生、被害状況が拡大しているのですか』

「今、前畑副大統領と、その事を話していたのです」


『タイムリミットが報告された時、東都を脱出する者が3割増加でしたね。

ーー残る者の多くも郊外の国民住宅に転居でしたかしら』


『それで、前畑さん、今はどうなの』

「永畑町を含め、原口駅付近などの山崎線内の多くは避難済みですが、

ーー従わない一部の人たちが残っている模様です」


『嫌ね、命よりもエゴを優先する人間がまだいるなんて』

『ともかく、幕府軍に要請して強制退去をして貰いましょう』


「大統領、直ぐに手配を要請します」

前畑は退室した。


 徳田康代大統領は、窓の近くの青色のソファに腰を下ろした。


『それで、田沼さん、若宮さん、原口の件は置いて置いて、

ーー立ち話もなんですから、そこのソファにどうぞ』


『そして、お茶にしませんか』

「ありがとうございます。大統領」


 遅れて入室した天女の天宮静女(あまみやしずめ)も目をギラギラさせている。


「今日は、なんでござるか」

『アールグレイと言う紅茶よ』


「良い香りでござるよ」

『ところで、田沼先生、若宮さん、学園都市は慣れましたか』


「はい、大統領のお陰で助かっています」

『今度ね、神聖女学園の講堂で宝田劇団の臨時公演があるのよ』


『良かったら、如何ですか』

「宝田劇団って、あの有名な宝田ですか」


『そうよ。国民の心の栄養を考えての新しい企画よ』

「喜んで、参加させていただきます」

若宮も頭を下げた。


『私たち人間は、肉体の栄養補給には注意しているのに、

ーー心の栄養には、無頓着なのよね』

「確かに精神面には無頓着ですね」


『不安の多い時代の過渡期ですから、

ーーみなさんの心に栄養をと考えた企画なんです』


『四六時中の中で、楽しいことを考えている事が多いプラス思考の人と、

ーーその逆の思考の人では、近未来が変わる科学的データがあるそうよ』


「潜在意識ですね」

『そうね。私たちは顕在意識思考が全てと錯覚しているのよね』


『徳田幕府は、心と肉体のバランスをも大事にしたいの』

「大統領、とても素敵な考えですね」


『この百年以上の情報戦争で情報の撹乱が大量発生したの、

ーーその結果、不安が拡大してしまったのよ』


「そうですね。憎悪、嘘、恐怖の情報ですね」

『大雑把に括れば情報には二種類あるのね』


「真実と嘘ですね」

『人間の悲しい(さが)で悪い話に飛びつくの』


「そして、悪の側面が大きくなって来た訳ですね」

『今、その部分に光が必要なのね』


『徳田幕府は、国民の幸せのための潜在意識を成長させたいのよ』


 いつになく、康代は主張を言葉にして繰り返した。

天女の天宮静女も幾度も頷いた。


『そういう事情もあるのを踏まえて、

ーー避難を速やかに出来ると幸いなんですが』


「山崎線の原口駅付近で止まる保証はありませんが」

『そうね。次のシナリオが必要ね』


「というと・・・・・・」

『博士のテリトリーの外になりそうです』


 康代は、言葉を濁して心の中で呟いた。


【東都、分割かな】


 徳田大統領は、多目的ルームに連絡して、織畑信美、前畑利恵を執務室に呼び寄せた。

田沼博士と若宮助手が退席した後だった。


『今日は、東都の行政区の分割をみなさんとお話します。

ーー大江戸二十三区の中心一帯は立ち入り禁止区域です』


『新しい街が別のエリアに必要です』

「どんな青写真ですか」


『信美、青写真はまだなの、

ーーそれで、今日、その青写真を作れればと思います』


「というと、今日決めるのですか」

『利恵、それはないわ』


『この学園都市の周辺が無傷なので、

ーーそこを今後の開発エリアにしたいの』


「それで、どうされますか」

『廃墟は、名称を変更して国営区として残します』


『同じくらいのエリアを東都の西に作り新しい行政区にします。

ーーつまり東都西区を立ち上げ・・・・・・』


『既存の町に合併させたいと思うの』

「それは、面白そうですね』


『まだあるわ。

ーー他の町も大江戸二十三区に入れて、新旧交代させるのよ』


「新大江戸二十三区と旧大江戸二十三区ですね」

『さすが、利恵は察しがいいね』


『その陣頭指揮は信美がして、利恵がサポートで、どうかしら』

「青写真が見えましたね」


『信美、ありがとう』

「良い考えでござる」


 日も沈んだ頃、女子高生四人は、学園寮の食堂に向かった。


「今宵は、満月でござるな」

静女が嬉しそうに微笑んでいる。

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