【一四七】セリウスよ!杞憂にゃあ!
三日月未来です。
もう直ぐ、ウエブ小説を書いてから一年になります。
お読みいただきありがとうございます。
『【一四七】セリウスよ!杞憂にゃあ!』
約二千五百文字です。
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
生徒会役員の門田菫恋が生徒会ユニフォーム姿で執務室の観音扉から愛らしい顔を出して、徳田康代に言った。
「徳田生徒会会長、安甲晴美先生が見えています」
『門田さん、応接間にお通ししてください』
門田は、生徒会会長と大統領を使い分けていた。
徳田康代も門田の言葉で学校内のことだと判断出来た。
神社の袴姿の安甲晴美が徳田に言った。
「徳田さん、外が騒がしいようね」
『先生、それは明里さんや田沼先生が、これから対応します。
ーー インターネットで発表しますのでご安心ください』
「ところで、私は大晦日の大祓えが終わったら、
ーー 徳田さんと社務所で年越し蕎麦を食べたいと思っているんだが」
『先生、それはーー お誘いですか』
「そうよ、部員や会員の何人かにも声掛けしたわ。
ーー あまり反応がよく無かったけど」
『大晦日ですからね』
そう言って、徳田は外を見ている神使セリウスを見た。
「そうだ、セリウスさんも、いらっしゃい」
セリウスは安甲の声に振り向き会釈で安甲に返した。
『じゃあーー 午後の仕事を終わらせたら社務所に伺います』
「それでね、もう一つあるんだけど。
ーー 明日の元日の午後に、かるた部でかるた会を予定しているの。
ーー 徳田さん、ご参加出来ますか」
『はい、先生、午後なら大丈夫です』
「じゃあ、康代さん、あとでね。
ーー 神社に着いたら、巫女に声を掛けてください」
安甲は応接間のソファを離席して手を振りながら執務室を出て行った。
「田沼先生、若宮先生、準備はいいですか」
「明里さん、打ち合わせ通りでいいんですね」
「はい、先生、余計なことだけ、禁止してください」
「じゃあ、明里さん、お願いします」
「徳田幕府、大統領補佐官の明里光夏で、ございます。
ーー 大統領からの要請で、お伝えすることがございます。
ーー ゲストに地球天体物理学の田沼光博士と若宮咲苗助手に同席をお願いしました」
明里は、田沼と若宮を順に紹介して続けた。
「本日、国民の皆様が目撃された天体は、田沼博士たちが事前に把握していました。
ーー そして危険がないことを判断していました。
ーー では、田沼博士、お願いします」
「田沼です。
ーー 悪戯に見てもいないことを発表するより、見た後が良いと判断しました。
ーー 月の専門は、若宮助手です。
ーー 若宮さん、お願いします」
若宮咲苗は、ホログラムディスプレイを開いて、カメラに向けた。
「みなさん、ご覧になれますか。
ーー 今回の新しい月をハレリアとして、古い月をムクリアとします。
ーー この二つの月は、双子の姉妹関係になります。
ーー ハレリアが妹で、ムクリアが姉です」
若宮は、神さま見習いセリエの説明をそのまま伝えていた。
「この妹の月、ハレリアが、これから大接近して、地球を直撃する磁気津波を弾き飛ばします」
「先生、大接近って、どのくらいでしょうか」
「明里さん、ムクリアの大接近を三十五万六千キロとすれば、その前後になるでしょう」
「若宮先生、これから、どうなりますか」
「どうにもなりませんわ。
ーー 双子の月を眺めて月見善哉は如何でしょうか」
「じゃあ、先生、大きな問題はないのですね」
「明里さん、二つの月が太陽のコロナガスの防波堤になるから、
ーー 地球にとっては奇跡的な出来事なのよ」
「そして、この新しい月は地球の新しい衛星になるのかしら」
「はい、計算では、ムクリアの外側を周回されると思います」
「田沼先生、若宮先生、お忙しいところ、ありがとうございます。
ーー 国民のみなさまには、報告がもう一つございます。
ーー 明日の元日の午後、神聖女学園で競技かるたの実演をインターネットから配信します。
ーー 現役かるたクイーンと元クイーンが実演しますので、お楽しみください」
明里は挨拶を終え、ネット配信を切った。
『明里さん、田沼さん、若宮さん、ご苦労様、良かったわ。
ーー これから安甲神社の社務所に行きますが、ご一緒しない』
「私たちも、いいんですか」
『大丈夫よ、秀美が安甲神社の巫女に伝えているから。
ーー じゃあ、みんな行きましょう』
神使セリウスと天女天宮静女は、先に神社に向かっていた。
豊下秀美、織畑信美、前畑利恵、門田菫恋が生徒会室の外の廊下で待機している。
徳田康代の大統領キャビネットは、女子高生警備を十人引き連れて安甲神社の境内に入った。
「康代さん、この鳥居、新しくなりました」
「秀美、塗り替えじゃないかしら」
「そうね、明里さんの言う通り塗り替えよ」
「光夏、でも、あの屋根、前は銅板だったような」
「本当、真っ赤に変わっているわね」
大統領キャビネットの女子高生たちが境内で井戸端会議を繰り広げていると、演劇部の姫乃水景と和泉姫呼が宝田劇団の舞台監督の夜神紫依、朝川夏夜、赤城麗華、大河原百合、朝霧雫が唐木田葵部長、森川楓副部長と一緒に境内に集まった。
『あら、逢坂さんがいないわね』
「めぐみさんは、遅れると言っていたわよ」
森川が徳田に伝えた。
『じゃあ、みなさん、お参りしてからにしましょう』
田沼と若宮は、いつもの習慣で先にお参りを済ませている。
静女と神使メリウスは退屈そうに社務所の前で待っていた。
女子高生警備は、二人ずつに分かれて神社を取り囲んでいる。
中等部の女子生徒、滝沢愛、瀬戸霞、笹山夜空が逢坂めぐみと一緒に現れた。
由良道江先生、松山八重先生も一緒にいた。
明里が呟く。
「安甲先生、相変わらずどんぶり勘定ね。
ーー 秀美、隣の宿泊所の食堂がいいレベルね」
「光夏の言う通り。私、連絡するわ」
安甲晴美が境内に現れた。
「誰が、どんぶり勘定だって。
ーー 誰が、社務所で蕎麦って言った」
みんな、一斉に安甲を指差した。
「あれは、なあ、言葉の綾でな、
ーー ここに集合と言う意味で言っただけなんだ」
「安甲先生、全然言い訳になっていませんよ」
「由良先生、キツイわよ。
ーー 豊下さん、隣の宿泊所の食堂に聞いて見て」
豊下は、ホログラム携帯からレストラン部の責任者を呼び出した。
「はい、豊下さま、お世話になっております。
ーー 安甲先生から、伺っております」
豊下は携帯を切り徳田に言った。
「康代さん、安甲先生の予約が入っています」
「康代殿、年越し蕎麦はまだでござるか」
『静女は、初めてね』
東の空が夜の帷に覆われ、北の上空には珍しいオーロラが見えていた。
双子の月は何処かに姿を消している。
『セリウスさん、お月さまが見えないわね』
神使セリウスは胸騒ぎを覚えセリエにテレパシーを送る。
[セリウスよ!杞憂にゃあ]
『【一四七】セリウスよ!杞憂にゃあ!』
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