【一四三】ホットラインが赤色に点滅でござる!
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
「ハレリア、あと、どれくらいですか」
「お姉さま、もうすぐ近くまで来てます」
「ハレリアとの再会は、何年ぶりですか? 」
「人間たちの時間の長さでなら、十万年ぶりじゃないかしら」
「地球にアトランティス大陸があった時代ね。
ーー ムクリアの月からも、焼け焦げる地球の大気が見えたわね。
ーー そして、この前も地球では大きな大陸が海に消えたのよ」
「ムクリアお姉さま、そんな怖しいことが、地球では起きているのですか」
「ハレリアと私、ムクリアがね、地球の環境維持に必要になったの」
「お姉さまと一緒に協力できるなんて、夢のようです」
「そうね、宇宙は、永遠に時を刻んでいるわ。
ーー 塵にも見えない地球の生命体のためじゃないわ。
ーー これは、全宇宙のバランスのため」
天宮静女は徳田康代の寝室で寝息を立てていた。
神使のセリウスも康代の寝室に同居している。
康代のベッドの両脇に、静女とセリウスのベッドが並んでいた。
康代は、神さまに二十四時間守られている恰好になっている。
「静女、朝よ」
「セリウスさま」
「なんか、魘されていたわよ」
「月の女神たちの夢を見ていたでござる」
「静女も夢を見るのね」
「セリウスさま、予知夢のようでござる」
「双子の女神、ムクリアとハレリアじゃありませんでしたか」
「はい、そう聞こえました」
「静女は何を聞いたの」
「宇宙のバランスでござる・・・・・・ 」
「多分、それは、宇宙の秩序のことね」
「セリウスさま、まだ何かあるのでござるか」
「上に確認してみないと分からないわね。
ーー 静女の月見善哉は、きっと大丈夫よ」
静女とセリウスは、康代の着替えを待って学園寮の窓から朝陽を眺めている。
『静女、セリウスさま、お待たせしました』
「じゃあ、康代殿ブレックファーストでござる」
『学園寮の食堂を寄ったら、執務室に行くわね。
ーー 静女は』
「拙者のブレックファーストは、生卵と納豆でござる」
『温かいご飯に最高よね。
ーー お豆腐と油揚げの御御御付けもいいわね』
「野沢菜漬けも最高でござる」
静女と康代の朝のいつもの会話を隣で聞いているセリウスが大きな欠伸をした。
『あら、セリウスさん、お疲れですか』
「康代さん、大丈夫です。
ーー 私たちには、休憩時間がありませんから」
『神さまたちの労働環境って、昔で言う過労死レベルでしょう』
「康代さん、私たちには肉体がないので、スタミナ不足が存在しません」
『でも、セリウスさんは、女子高生姿じゃないの』
「これは、意識の結晶を具現化しているだけなの。
ーー 人も実際は、同じだけど、ちょっとだけ違うのよ」
『何が違うの? 』
「人は、転生を永遠に繰り返すの。
ーー そこが私たちとは、決定的に違うのよ」
康代は、セリウスの言葉に、いつか転生の時が来るかも知れないと思い、急に寂しくなった。
静女が気付いてセリウスをじっと見た。
セリウスも言い過ぎたことに気付き反省している。
『静女、セリウスさま、先ずは朝食よ』
康代たちは、静女の転移魔法で学園寮食堂に瞬間移動した。
「康代殿、学園寮食堂も学園食堂も、言われないと分からないでござる」
『そうね、設計者もデザイナーも同じ人なので仕方ないわ』
「康代殿、あと六日でござる」
『静女って、意外に食いしん坊さんでしょう』
「よく分からないでござる」
康代たちが、食事を終えた頃、姫乃水景と和泉姫呼の姿が遠くに見えた。
背の高い二人の後ろに、更に背の高い宝田劇団の五大スターを確認できる。
「康代さん、お食事、終わりですか」
『姫乃さんは、』
「私たちは、これからです」
宝田劇団でも背の高いポニーテール髪の夜神紫依が、姫乃の背後から徳田に声を掛けた。
「食事のあとで・・・・・・。
ーー 姫乃さんや和泉さんと一緒に、朝稽古をする予定ですが。
ーー 徳田さんも、ご一緒しませんか」
『夜神さん、ありがとうございます。
ーー 午前中は執務室で、午後がかるた部の予定です』
「夜神さん、大統領は、お忙しいのよ」
宝田劇団の責任者の朝川夏夜だった。
『夜神さんと朝川さんのご予定は』
「私たち、朝稽古のあとは、かるた会の予定よ」
夜神が言った。
「夜神さん、じゃあ、かるた会で、お会いできると思います」
徳田康代が夜神たちと立ち話をしているうちに、静女はセリウスだけを残して消えてしまった。
康代は静女が消えたことを確認してセリウスと生徒会執務室への廊下を移動することになり微笑んでいる。
「康代さん、なんか良いことありましたか? 」
『自分の足で移動するっていいわね。ウフフ』
「康代さん、転移魔法、嫌いでしょう」
『セリウスには隠せないわね』
「秀美、大統領、見掛けた? 」
「いいえ、今朝は、すれ違いだったみたいよ」
「門田さんは、」
「私も見ていないわ」
明里光夏大統領補佐官は、落ち着きのない様子で時間を気にしている。
「明里さん、何かあったのですか」
「いいえね、宇宙基地から緊急レベルの連絡が執務室に入っていました。
ーー 内容は分かりません。
ーー 至急、連絡をだけです」
明里は、門田に説明した。
生徒会室の扉が開き、田沼と若宮が女子高生警備に案内されて入って来た。
明里たちの様子に気付き田沼は明里を見て立ち止まった。
「あ、田沼先生、若宮先生、おはようございます」
「おはようございます。明里さん、何かありましたか」
「いいえ、何もありませんが、緊急連絡がありまして困っています」
大統領執務室の大きなソファでは、静女が主人の到着を待っていた。
神使セリウスと徳田康代大統領は、執務室の女子高生警備に挨拶して入室する。
執務室の空気の変化と明里の様子に康代が気付いた。
「光夏、おはよう。何かありましたか? 」
「康代さん、執務室のホットラインのランプが赤色点滅していました。
ーー ホログラムディスプレイを見ましたら、緊急連絡の要請になっています」
『光夏、それは、何処から』
「はい、宇宙基地ですが・・・・・・ 」
『何処の基地ですか、光夏』
光夏は、見落としに気付き、ディスプレイを再度確認してみた。
「康代さん、月の北極基地からです」
『分かりました。光夏、至急連絡をしてみて』
「康代さん・・・・・・。
ーー ダメです。ラインが繋がりません」
『じゃあ、月基地の南極を呼び出して』
「康代さん、こっちもダメです」
『火星基地は、どうなの』
「こっちの回線は、生きています。大丈夫です」
『じゃあ、光夏、火星基地に、今、起きていることを確認してみて』
「分かりました。大統領」
「執務室のホットラインが赤色に点滅でござる」
『静女、それはいつ』
「康代殿、今でござるよー」
お読みいただき、ありがとうございます!
ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。
投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。
三日月未来