【一四〇】陽はまた昇るでござるよ!
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
陰陽師の安甲晴美は川霧姉妹に、神聖女学園かるた部兼かるた会の部室を紹介することにした。
「川霧さん姉妹は、旧制度で大学二年生だから、かるた会になるわ。
ーー でも、旧制度の高校生は、どちらも選ぶことができるの。
ーー それで、部員のほとんどは両方に在籍しているのよ」
川霧桜と椿は部室の広さに圧巻されていた。
「安甲先生、ここなんで、こんなに広いのですか」
「桜さん、ここは、最近まで武道場だったの。
ーー 神聖女学園の団体戦優勝を記念して、学園理事長が部室にと言ってくれたの」
「じゃあ、武道場はなくなったのですか」
「いいえ、武道場は新しくなって、この武道場より大きいわね」
安甲の言葉に姉妹は眩暈を覚えるくらい驚いて、二人は平静を装うとした。
「川霧さん、紹介するわ」
安甲は唐木田、森川、姫乃、和泉を順に紹介したあと、朝霧、逢坂、徳田を改めて紹介した。
「先生、朝霧さん、逢坂さんは、近江の大会でお会いしています。
ーー もちろん、徳田さんもね」
「まあ、桜さんは、ともかく・・・・・・。
ーー 椿さんは食堂が初対面でしたでしょう」
安甲はそう言いながら、昇段ボードを指で差して言った。
「これは、会員と部員の名前が並ぶ昇段ボードです」
「先生って、アナログ派だったのですね」
妹の椿が言った。
「まあ、陰陽師ですから」
「先生、それは、違うでしょう」
唐木田葵が先生に言って、周囲が笑っている。
「まあ、ともかくな、ここに川霧姉妹の名前が並ぶわけだ。
ーー A級の列にな」
安甲は男口調の癖になっていた。
安甲が説明している時、徳田康代のホログラム携帯が鳴る。
「徳田さん、今、生徒会室に田沼さんと若宮さんが見えていますが」
『光夏、分かったわ。すぐに行くわ』
携帯を切ると徳田康代と女子高生警備三人は安甲に挨拶して部室を出て行く。
天宮静女が周囲を確認して転移魔法を展開した。
五人は瞬間移動して、執務室前の廊下に出た。
執務室に入ると、神使セリウスと光夏、秀美が待っている。
『あら、田沼さんたちは、どうしたの』
「康代さんが来るまでの間に、お手洗いに寄りますと言ってたわ」
門田菫恋だった。
『あら、門田さん、今日は』
「先生が気を使ってくれて・・・・・・。
ーー 生徒会の仕事を優先してと言ってくれたの」
『安甲先生って、太っ腹な処が人気の秘密なのね。
ーー まあいいわ。
ーー だけど、田沼さんたち、なんだろうね』
門田が田沼に声を掛ける。
「田沼先生、大統領、到着していますが」
「申し訳ありません。
ーー ちょっと時間あるかと思いまして。
ーー 本当に、お待たせさせてしまいました」
『別にいいわよ。
ーー 時代が変わって生理現象は変わりませんから。
ーー でも、今回は何ですか』
「いつかのお話の続報です」
田沼光博士は、そう言うと若宮咲苗助手を見て言った。
若宮は田沼の言葉に軽く頷き言った。
「大統領、五日後の夕方ごろです」
『若宮さん、何言っているの』
「私たちの専門は天体地球物理学です。
ーー 若宮さんの専門は月だったのですが・・・・・・」
若草色のスカートスーツの田沼は水色のスカートスーツの若宮を見て言葉を切った。
「若宮さんの計算が正しければ・・・・・・。
ーー 私たちの地球に新しい月が誕生します」
徳田は、田沼の言葉を聞いて、神さま見習いのセリエの言葉を思い出す。
『先生、その結果、どんな影響がありますか』
「分かりませんが、
ーー 自宅の周囲をぐるぐる回っていた車が・・・・・・。
ーー 二台で追いかけっこをする想像をしてみてください」
『じゃあ、田沼先生、月が追いかけっこをするのですか』
「軌道は、まだ分かりませんが・・・・・・。
ーー 計算では、そうなりそうですが」
若宮が田沼に代わって徳田に説明した。
『じゃあ、軌道が変わる可能性もあるわけですね』
若宮が説明している時、明里光夏のホログラム携帯に火星基地からの連絡が入った。
「若宮先生、お話のところ、すみません。
ーー 大統領、火星基地から緊急連絡が入っています」
明里が大統領と言う時は、良い知らせでないことを徳田康代大統領は知っていた。
『明里、火星基地は、何と言っているの』
「はい、映像を確認ください」
『分かったわ』
徳田は女神アセリアから頂いた大鏡を久々に開いてみることにした。
執務室の壁に置かれた巨大な鏡がスクリーンに変わる。
そこには、火星を通過する月が映し出されていた。
田沼と若宮が、その光景に声を慄わせて言った。
「映像を見る限り、予定の五日も分かりません。
ーー もう神技の速さと見て間違いありませんわ」
『じゃあ、若宮先生、どうなりますか』
「最悪は天体衝突です。
ーー 月ほどある大きな物体が接近するだけでも・・・・・・。
ーー 地球の大気に異常が起きますが。
ーー あんな猛スピードで接近されたら磁気津波も・・・・・・」
『じゃあ、田沼先生も同じですか』
徳田は田沼の返事待たずに神使セリウスを見て言った。
『セリウス、これ神さまの仕事よね』
「はい、康代さんの言うとおりでございます」
『分かったわ。セリエさまに相談してみるわ』
康代は、そう言って軽く瞼を閉じて神さま見習いのセリエにテレパシーを送る。
いつもならあるリアルタイムのセリエの応答がなく、康代は神使セリウスを見た。
「康代さん、セリエさまは、まだ宇宙会議でございます」
『分かったわ。まだ時間あるから首を長くしてお待ちします』
「康代殿は首が長くなるでござるか」
『嫌ね、静女、喩えよ』
[康代、セリエじゃ、何か用事あるのかにゃあ]
[ええ、セリエさま、月の大接近のことで]
[ああ女神ムクリアの双子の妹の女神ハレリアの件じゃあにゃあ]
[はい]
[それなら杞憂じゃにゃあ。
ーー ハレリアとムクリアは和解したからにゃあ。
ーー 一緒に地球のバリアを張るそうじゃにゃあ]
[じゃあ、セリエさまは心配無用と仰るのですね]
[そうじゃ、康代、起きても無いことで悩み事を抱えないことじゃにゃあ]
[ありがとうございます。セリエさま]
セリエと康代のテレパシーが終わり、康代の表情がいつもの笑顔に戻っていた。
極月の柔らかな夕日が校庭に降り注いでいた。
『静女、陽が短くなったわね』
「康代殿、陽はまた昇るでござるよ」
『静女ったら、最近冗談も上達したわね』
「天女の天宮静女は神さまの仲間でござるよ」
『じゃあ、静女、カフェに行きますか』
「月見善哉でござるよ」
康代たちは、静女の転移魔法でカフェの前に瞬間移動していた。
『静女、またやったわね』
徳田康代は、眩暈を軽減させようとして、首を回しながら静女を睨んだ。
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三日月未来