【一三六】静女は雪見善哉でござるよー
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
豊下秀美が白い息を吐きながら、徳田康代がいる生徒会執務室に駆け込んできた。
『秀美、どうしたの』
「それが手違いで停電が発生してしまいました」
『大雪は、これからなのにね。光夏はどうしている』
「今、学園都市の徳田幕府司令部に連絡をしています」
『それで、停電の規模は、どうなの』
「一部が停止して、バックアップの予備電力稼働をお願いしています」
『変ね。自動的に予備電力にシフトしているはずなのに、おかしいわ』
「そうなんです。
ーー 普段なら宇宙発電所がバックアップしているはずですが・・・・・・」
真っ赤なワンピース姿の田沼光と若宮咲苗が会話に興味を示す。
「大統領、宇宙天気予報では、巨大な太陽フレアが報告されています。
ーー おそらく通信ネットワークに大規模な障害発生じゃ無いでしょうか」
『そうね。とにかく拙いわね』
明里光夏が秀美に遅れて、執務室に戻った。
「康代さん、司令室は問題無いそうですが、部分停電が回復していません」
徳田康代は神さま見習いのセリエにテレパシーを送った。
しばらくして、執務室に女子高生姿のセリエが現れる。
「康代、なんか急いでいるようじゃにゃあ」
『セリエさま、魔の悪い時に停電が起きました』
「うん、セリウスならどうするにゃあ」
「女神アセリアさまに打診します」
「女神さまに電気屋をさせるのかにゃあ」
「いいえ、ご相談するだけでございます」
「それはにゃあ、ご機嫌次第だにゃあ」
「セリエさまなら、どうされますか」
「予ならにゃあ、時の女神の神使に相談するにゃあ」
「セリエさま、もしかして神使ルニャさまですか」
「そうじゃ、時の女神は、時間と天候をも配下に従えておるにゃあ」
「セリエさま、じゃあ時間稼ぎですか」
「今月は、極月の月じゃからにゃあ。
ーー セリウスよ、神使ルニャの元に相談に行ってくれるかにゃあ」
女子高生姿の神使セリウスは、セリエに返事をすると赤猫姿になって消えた。
「ああ、セリウスもルニャさまと同じ赤猫だったことを忘れていたにゃあ」
セリウスが消えて、まもなくすると執務室の窓に強い夕日がカーテン越しに差し込む。
「康代さま、お天気が回復しています」
明里光夏が言うと、豊下秀美も興奮しながら外を指差した。
「大変です。桜の木が・・・・・・」
「康代よ、セリウスの交渉が成功したにゃあ」
『本当、極月が桜月になりましたわ』
生徒会役員の門田菫恋が生徒会執務室に入って康代に耳打ちした。
『そんなことってあるの』
「はい、室外の気温が零度から二十度に上昇したそうです。
ーー 雪は、瞬く間に溶けて蒸発しました」
『じゃあ、鬼の居ぬ間に洗濯ね』
「康代さんも冗談を言うんですね」
『例えよ、この場合の鬼は悪天候ね。
ーー 今のうちに停電リカバリーしないと』
「康代さん、司令部から連絡がありました。
ーー 宇宙発電所の不具合は太陽風に飛ばされた小隕石の衝突です。
ーー 今は、第二、第三の宇宙発電所を手動でシフトしたそうです」
『時代は変わっても、最後はマニュアル頼りになるわね。
ーー セリエさま、停電は解決しました』
「じゃあ、元に戻すにゃあ」
セリエはテレパシーでセリウスに指示を与える。
神聖女学園の女子高生たちは、目の前で起きた超常現象に驚きを隠せない。
真冬から春に戻ったのも束の間、再び厳冬期に逆転した。
セリエは、康代に別れを告げ、消えて光になって輝いた。
執務室に赤猫が戻り、女子高生姿のセリウスになった。
『セリウス、ありがとうございます』
「康代さま、神使ルニャさまのお陰でございます」
『そうね、時の女神の神使さまね』
徳田康代の無意識が、時の女神エルミオを思い出していた。
エルミオのお陰で康代は転生出来たことを思い出す。
「康代さま、宇宙発電所の問題も解決しましたが」
『そうね、光夏。今後の課題が増えたわね』
「自動から手動への切り替えですね」
「光夏も今回は冷や汗たらたらね」
「秀美に言われたくないわ。
ーー 今回は神さまのお陰ですわ」
『まあ、二人とも、そんなとこでいいじゃ無い。
ーー で、光夏、秀美、大雪復活でどうする』
「学園都市は、壁暖冷システムです。
ーー 空中浮遊自動車専用滑走路も凍結防止システムが作動しています」
『国民住宅や国営企業、高速道路は大丈夫、明里さん』
「はい、徳田幕府の司令部が対応しています」
『じゃあ、ショッピングセンターのカフェでお汁粉を食べましょうか』
いつの間にか、天女の天宮静女が康代の隣に現れていた。
「康代殿、静女も賛成でござるよ」
『じゃあ、静女も賛成と言うことで、地下からカフェね』
康代は、静女の紫色の瞳を見つめながら静女に念を押した。
康代の願い届かず、康代たちはカフェのあるフロアに瞬間転移していた。
女子高生警備、大統領キャビネットのメンバー、セリウス、生徒会役員の門田菫恋、田沼と若宮の全員がカフェに瞬間移動していた。転移に気付いたのは康代とセリウスと静女だけだった。
静女が人間たちの意識に催眠術を掛けていたからだ。
天宮静女は、カフェのいつもの指定席に腰を下ろすと、窓ガラスにぶつかる吹雪を眺め微笑んでいた。
『静女、お汁粉でいいわね』
「康代殿、静女は雪見善哉でござるよー」
『静女、そんなのあったかしら?』
「月見酒があるでござるよ。雪見もあるでござる」
雪は、ますます激しくなり、カフェから見える大江戸山脈の景色を遮った。
静女の前にある大自然のキャンバスは白銀の世界に変わった。
『静女、善哉よ』
康代の声は静女の耳には届かず、善哉の甘い香りだけが静女の嗅覚を刺激していた。
「頂くでござる・・・・・・」
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三日月未来