【一三四】かるた会のユニフォームでござるよー
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
神さま見習いのセリエが消えたあと、徳田康代たちの円卓会議のような昼食会が続いていた。
イエローカラーのトレーニングウェア姿の安甲晴美共同代表が立ち上がり、部員と会員に向かって喋り始めた。
「もうじき、かるたのクイーン戦が近江で開催される。
ーー 神聖かるた会からも何人かが参加します。
ーー お時間のある方は、是非応援をよろしくお願いします」
明里光夏大統領補佐官が手を上げて、安甲に質問をした。
「その大会も、徳田幕府のネット中継が出来ますか」
「それは、分からないが、徳田大統領次第です」
『安甲先生、私は歓迎してますので、明里さんに任せます』
「徳田さん、じゃあ、前回と同じ手配をお願いしますね」
明里が言ったあと、田沼光博士が徳田に、前の話の続きを続けた。
「徳田大統領、お話の途中ですが、先ほどの会話で忘れていたことがあります」
『田沼博士、なんでしょうか』
「実は、天体と巨大地震の関係なんですが・・・・・・。
ーー 昔の研究からあることが判明しています」
『あることって、何でしょうか』
「今までの地震学が、利権問題で頓挫した時代の封印が解除されて分かりました。
ーー 徳田幕府になって利権構造が消えて真実の地震予知学がわかって来ています」
『田沼博士、真実ってなんでしょうか』
「若宮さん、大統領に説明して上げてください」
「大統領、月と地震の関係は、以前も申し上げた通りです。
ーー 実は、もう一つ重要なことが研究によりわかっています」
『もう一つあるんですか、若宮さん』
安甲晴美は、徳田と若宮の様子を見て待つことにした。
夜神紫依や朝川夏夜も聞き耳を立て始めたことに、神使のセリウスが気付く。
「康代さん、場所を変えませんか。
ーー ここでは、拙いかとセリエ様なら判断しますが」
康代はセリウスのテレパシーに気付き、若宮に言った。
『若宮さん、申し訳ありませんが、その続きはあとにして頂けますか』
「大統領、お忙しいのに、すみません」
若宮は、茶髪のセミロングを後ろで撫で乍ら言った。
『あとで、田沼さんと一緒に執務室に来てください。
ーー 時間は、明里から連絡させますので』
康代は若宮に告げると、安甲の話に戻り言った。
『先生、クイーン戦とネット中継ですね』
「徳田さん、もう一つあるのよ」
『まさか、あれですか』
「そうよ、あれです」
『じゃあ、大会のあとですね』
「それじゃ、遅いのよ。告知をしないといけないし」
『先生、それじゃあ、明日の練習会の時で如何かしら』
「康代さん、今からどう」
安甲晴美の強引さに気圧され康代は頷き乍らその意味を知る。
『先生、珍しくトレーニングウェアですものね。
ーー 分かりましたわ。
ーー 逢坂さん、朝霧さんも一緒に来てね』
逢坂と朝霧は、徳田の会話の意味を理解して安甲をみた。
「先生、今日は、いつもと違う雰囲気ありませんか」
朝霧雫が珍しく揶揄している。
「そうかしら、新しいトレーニングウェアで、かるたしてみたくなっただけよ」
安甲は、そう言って、照れている。
徳田は、意外と無頓着な性格で、他人の見なりに無関心だったが、明里が気付く。
「そういえば、なんとなく、いつもと違うかなぁと思っていました。
ーー 今、気付きました」
『光夏、何言ってんの』
「康代さん、宝田劇団と安甲先生たち、真新しいトレーニングウェアよ」
『光夏は、さすがね』
安甲は立ち上がり胸のエンブレムを見せてる。
そこにはセリエの黒猫時代の猫とロゴが刺繍されている。
「どう、神聖よ。いいでしょう」
そして、安甲は立ち上がり、康代たちに背中を見せた。
「康代さん、見えた。神聖かるた会のロゴマークよ」
康代と大統領キャビネットのメンバーは安甲に驚きを隠せない。
「康代の母である理事長が、かるた会にとプレゼントしてくれたのよ」
『雨でも降らないことを祈るわね』
康代は、理事長の考えに困惑することがあった。
織畑、前畑、豊下、明里の大統領キャビネットは、門田と一緒に執務室に戻ることになった。
康代は、静女とセリウスに付き添われ、安甲、逢坂、朝霧、姫乃、和泉と一緒に部室に向かう。
宝田劇団の朝川、夜神、赤城、大河原は午後の稽古のあとに行くと言って食堂で別れた。
安甲は、かるた会兼かるた部の部室に入ると徳田に言った。
「徳田さんの名札を渡すわ」
入り口左横の壁にあるボードの端には、A級と書かれている。
『先生、時代劇の道場みたいね』
「たまには、アナログもいいでしょう」
徳田は、頂いた名札の木の感触を確かめ乍ら言った。
『あの先生、これ、どうしますか?』
安甲は、自分の名札を入れて徳田に見せた。
「次は、徳田さんよ。そして、朝霧さん、逢坂さんね」
ボードの下には、四段あり、B級、C級、D級、E級となっている。
「このボードも、理事長の考案なのよ。
ーー 由良先生と松山先生の協力もあるけど。
ーー それより、これをどうぞ」
徳田康代は、安甲から真新しいユニフォームを頂いた。
唐木田部長と森川副部長が、部員と会員に新しいユニフォームを配布している。
『あれ、先生、色が違うわ』
「そうよ、緑と青と臙脂色の三色に黄色を加えた四色よ。
ーー あまり色に意味は無いけど、A級は黄色よ。
ーー それ以外は、自由ね」
康代は、黄色のユニフォームに重みを感じ乍ら晴美を見た。
『先生、あまり時間無いけど、練習してから戻ります』
「康代殿、新しいユニフォームが似合うでござるよー」
『静女、まだ着替えて無いわよ』
「康代殿、静女には、分かるでござるよー」
天女天宮静女の言葉に癒され乍ら徳田康代は、かるたを並べ始めた。
前には、安甲晴美が腕まくりをしてかるたを並べている。
窓の外には、粉雪が風に舞っていた。
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三日月未来