【一三三】女神サンカラリアと女神ムクリア
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
田沼光博士と若宮咲苗助手は、徳田大統領の向かいの席に着席した。
徳田大統領の右側に天宮静女、左側にセリエの神使セリウスがいる。
残りの者は、それぞれ自由に席を選んだ。
康代たちが選んだ中央にある大きな円卓に、康代たちは席を取った。
あとから合流した逢坂めぐみと生徒会の門田菫恋も同席した。
豊下秀美は、引率の教師さながらに円卓の人数を確認している。
逢坂、天宮静女、徳田大統領、セリウス、織畑首相、前畑副大統領、豊下副首相、明里大統領補佐官、門田が順に並び、反対概要には、和泉、姫乃、安甲、田沼、若宮、朝川、夜神、赤城、大河原、朝霧の十人が並んでいた。
円卓なので、門田の隣は朝霧で、逢坂の隣は和泉になっている。
『豊下さん、全部で何人になりましたか』
「康代さん、十九人です」
「違う、二十人だにゃあ」
神さま見習いのセリエが、康代とセリウスの間の席に割り込み、腰掛けた。
「はい、セリエさまを入れて二十人です」
康代は、セリエの神出鬼没ぶりに笑いを堪え切れずにいた。
『セリエさま、ご用は終えたのですか』
「そこの学者二人に聞くといいにゃあ。
ーー 太陽の女神サンカラリアさまから地球の女神アセリアさまに緊急の連絡があったそうにゃあ』
康代は初めて太陽神のお名前を耳にして驚いた。
「学者にゃあ、康代たちに説明して上げてくれるかにゃあ」
田沼光博士が隣の若宮咲苗助手にウインクしている。
若宮は、田沼の合図に答えて、その場で立ち上がる。
「実は、宇宙天気予報が非常事態レベルを発令しています。
ーー 普段は月が太陽風の影響を間接的に緩和させているのですが」
「若宮さん、続けて」
「はい、田沼博士。
ーー それが運悪く、月の軌道がいつもより大きく外れ始めたのです」
『若宮さん、そうなるとどうなるのですか』
「はい、言いづらいことですが、災害級の磁気嵐と太陽風に地球が晒される可能性があります」
セリエは、若宮に合図して着席を命じた。
「そういうことだにゃあ、
ーー 女神アセリアさまと女神サンカラリアさまの宇宙会議に同席していたにゃあ。
ーー 今ごろ、月の女神ムクリアさまをサンカラリアさまが説得しているにゃあ」
セリエの会話は、康代と静女とセリウスのみに伝わっていた。
田沼と若宮には、セリエがフィルターを限定解除していたが、一部しか聞こえていない。
『セリエさま、良い案はないのですか』
「サンカラリアさまの提案では、月を増やせばいいと言っているにゃあ」
『セリエさま、そんなに簡単なことですか』
「簡単なことにゃあ、
ーー サンカラリアさまが、既に引き寄せておるからにゃあ」
康代の想像の領域を超越して、康代は軽い眩暈を覚える。
秀美が気付き、康代に尋ねた。
「康代さん、お顔色が青白いですが大丈夫ですか」
『秀美、大丈夫よ。ありがとう』
「あと数日すると、この星の月が増えるにゃあ」
『どういうことですか』
「見た目は変わらないにゃあ。月の追いかけっこが始まるにゃあ。
ーー 人の目には分からないがにゃあ。
ーー 天文学者たちが気付き始めるにゃあ。
ーー そこで康代たちの出番だにゃあ」
徳田大統領は若宮咲苗に質問した。
『もしも、月が増えたら、この星はどうなりますか』
「大統領、そんなこと、考えてみたこともありません。
ーー でも、そうなれば、大自然への影響が懸念されると思いますが」
『ありがとう、若宮先生』
康代はセリエを見つめて尋ねてみた。
「セリエさま、現実になるまで、あとどのくらいですか』
「数日か、十日くらいかにゃあ。月の追いかけっこだにゃあ」
『セリエさま、そのあとは』
「一時的な影響は、数日で静まるそうだにゃあ。
ーー ただ、大海のピークや天変地異に変化が起きるにゃあ。
ーー 女神サンカラリアさまが女神アセリアさまに伝えているにゃあ」
「女神サンカラリアさまの宇宙防衛でござる」
「静女の言う通りにゃあ。
ーー でもにゃあ、月の女神も双子にゃあ。
ーー 引き寄せる、女神はムクリアの妹になるにゃあ。
ーー 名前はにゃあ、女神ハレリアと聞いているにゃあ」
徳田康代大統領は、若宮咲苗を凝視して質問した。
『もしも、月が双子で、地球の衛星に戻って来られた場合、
ーー どうなりますか』
「大統領、軌道と距離次第で条件が変わると思います」
『そうですか、また、箝口令が必要になったらですが
ーー よろしくお願いしますね』
徳田康代の言葉に事態の深刻さが、田沼と若宮にも伝わっていた。
同席している他の者たちには、康代たちの会話が聞こえていない。
神さま見習いのセリエが特殊フィルターですべて遮断していたのだ。
康代の脳裡に西和南和大陸の悲惨な光景が浮かんでいる。
「康代よ、神々に任せていれば、大丈夫だにゃあ」
「セリエさまが、仰るとおり大丈夫です」
「康代殿、セリウスさまが言う通りでござるよー」
『そうね、静女の言う通りね』
「康代、また、にゃあ」
神さま見習いセリエは、康代たちに報告したあと、消えて光になった。
「セリエさま、忙しいでござるよー、セリウスさま」
「静女さま、神々の宇宙会議ですから杞憂は不用かと」
「セリウスさまの言うとおりでござる」
『静女とセリウスさまは、いつも楽しそうね』
「康代殿、双子の月見ができるでござるよー」
『静女はいいわね』
「康代殿、静女は天女でござるよー」
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三日月未来