【一三一】セリエさま、昼食会が始まるでござるよー
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
「田沼先生、終わりました」
女子高生の一人が快活な声を上げた。
「じゃあ、見せて」
「先生、これです」
女子高生は、ホログラムディスプレイを田沼に見せた。
田沼光は、西和の天変地異を思い出し真っ青になる。
「田沼先生、顔色が悪いわ」
若宮は呟き、ディスプレイを覗き、頭を抱えながら女子高生に言った。
「あなたは、誰の生まれ変わりかしら」
「若宮先生、安甲神主の話では、吉畑松陰の生まれ変わりと聞いています」
「なるほど、分析が細かく正確で、田沼先生も私も眩暈がしたのよ。
ーー 今日は、これくらいにして学園寮の食堂でお昼にしましょう」
「若宮さん、私もそうしたいと思っていたわ」
吉畑の生まれ変わりが若宮に言った。
「私たちも先生たちと、ご一緒しても構いませんか」
「いいわよ。ところで、お名前は」
「吉畑松子です。隣が、水戸光子です」
「じゃあ、行きましょうか、吉畑さん、水戸さん」
「ところで、先生、質問があるんですが・・・・・・」
吉畑が若宮に尋ねた。
「何かしら」
「あの月アプローチなんですが」
「じゃあ、歩きながら話しましょう」
若宮が吉畑に言った。
四人は神聖女学園の研究室を出て、地下通路から学園寮に向かった。
「先生、些細な疑問ですが・・・・・・。
ーー 月アプローチが予定から外れるパターンがあるのですが」
「それね。地球は太陽系の惑星でしょう。
ーー だから、他の惑星の影響をも受けるわ。
ーー 中でも、太陽がくしゃみをする時
ーー 大きな地震に注意なのよ」
「先生、くしゃみですか」
「そうよ、くしゃみよ。
ーー それも、大きなくしゃみね」
吉畑が首を傾げている。
「若宮先生、比喩もいいが、ここは正確にしないと」
「田沼先生、すみません。言い直すわ。
ーー 太陽フレアよ。
ーー 太陽フレアが月と地球の引力の駆け引きにも影響するのね」
「先生、疑問の一つが解決しました。
ーー ありがとうございます」
「じゃあ、吉畑さんは、太陽フレアデータと地震データの整理をお願いしていいかしら」
田沼がポツンと言った。
「田沼先生、ちょっと難しい仕事になりますが」
「若宮先生、吉畑さんは優秀なので大丈夫よ」
「先生、頑張りますので、よろしくお願いします」
ジーンズ姿の女子高生二人と、田沼と若宮の四人が地下を移動していた。
「地上は、寒そうなので地下で大正解ね」
田沼が呟くと視界に女子高生警備の姿が入る。
「田沼先生、警備増えていませんか」
「そうね、大統領がいるのかしら」
四人は、警備に気を取られ、気付いたら茶色の棟の地下に辿り着いていた。
「先生、ここは、噂の茶色の棟ですよ」
「大丈夫でしょう。お昼にしましょう」
と田沼が言った時、背後で声がした。
豊下秀美と明里光夏だった。
「田沼先生、その女子高生は」
「うちの研究所でお手伝いをしている生徒です」
「吉畑です」
「水戸です」
『あら、奇遇ね。田沼先生と若宮先生じゃないかしら』
「はい、先日以来、ご無沙汰してます。大統領」
『いいわよ。今日は、公務じゃないから』
明里が田沼に言った。
「先生、私たち、これからランチですから、ご一緒しませんか」
「お邪魔じゃ、ないかしら」
若宮が田沼に代わって明里に言った。
背後には、秘密基地の千歳翼と生徒会の門田菫恋がいた。
「明里さん、大統領が問題無ければ大丈夫よ」
千歳の声を聞いた大統領が遠くを見ながら手を振った。
その先を見ると宝田劇団のスターと安甲晴美が、こちらに向かっている。
「かるた練習の区切りでランチにしたのよ」
『安甲先生、じゃあ、今日のお昼は賑やかになりそうね』
「康代殿、賑やかでござるな」
「康代には、影武者が必要だにゃあ」
『セリエさま、キャビネットも一緒なので大丈夫です』
「おおー、学者もおるにゃあ」
『田沼先生、若宮先生、本の方は進んでいますか』
「吉畑さんと水戸さんが、資料調べを手伝ってくれて、完成の目処が見えて来ました」
『そうですか。地球の女神さんと、ご相談してくださいね』
徳田康代の一言に、田沼と若宮は、ギクリとして神さま見習いのセリエを見た。
「女神アセリアさまは、お優しいので、怒らせ無ければ大丈夫にゃあ」
「女神アセリアさまは、優しいでござるよー」
徳田は、豊下と明里に昼食の席順をお願いした。
女子高生警備も同席することになった。
「康代さん、少し待ちそうですが」
『秀美、この人数じゃ、仕方無いわよ』
「康代殿、ショッピングセンターのカフェなら、待ちませんよ」
静女が透視して見えたことを康代に伝えた。
「静女の言う通りにゃあ」
『分かったわ。セリエさま、そうしましょう』
神さま見習いのセリエが、同伴者に集団催眠を掛けた。
女子高生警備も例外ではない。
集団転移魔法の記憶は消される。
一同が覚醒した時、いつものカフェにいた。
静女とセリエは、窓際に腰掛け、康代の右隣はセリエ、セリエの前が天宮静女。
徳田康代の前には安甲晴美、左横には前畑利恵、前畑の前は織畑信美、前畑の左隣が明里光夏、明里の前に豊下秀美。明里の左隣に田沼光、田沼の前に若宮咲苗といつもの顔触れが並ぶ。田沼の左隣が水上泉、水上の前が黒川亜希、水上の左隣に尾上ゆかり、尾上の前が紀戸茜、尾上の左隣は門田菫恋、門田の前が千歳翼だった。
宝田劇団の五人、朝川夏夜、夜神紫依、赤城麗華、大河原百合、朝霧雫は康代の背後のテーブルに着いた。
女子高生警備は、安甲の背後のテーブルに着席している。
「全員、着席したにゃあ」
「セリエさま、昼食会が始まるでござるよー」
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三日月未来