【一二五】ワインレッドジャケットの罠
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
神さま見習いのセリエが消えたあと、徳田康代のホログラム携帯が静かに鳴った。
『はい、徳田ですが』
「黒川亜希です。
ーー あとでご相談したいことがあって」
『じゃあ、明日でいいかしら』
「はい、明日、伺います」
『分かったわ。
ーー 午前十一時にしましょう。
ーー そのあとでランチを付き合ってもらうわ』
「大統領、ありがとうございます」
康代は、黒川の相談を薄々分かっていた。
前政府の亡霊のような裏組織だろう。
セリエさまが対応しているから問題ないが、厄介事に変わりはない。
豊下秀美が康代に声を掛けて来た。
「康代さん、悩みは独り占めしないでくださいね」
『秀美は、いつも優しいわね』
「康代さん、そんなこと言われたら照れるじゃないですか」
『地下要塞に通じる入り口は、宝田劇団の人たちが使っている入り口とは別なの』
「ええ、そうなんですか?
ーー 全然知りませんでした」
『でもね、方向音痴の人が迷い込む可能性が否定出来ないの。
ーー まあ、迷い込んだところで奥の入り口は開かないはずなんですが。
ーー ちょっと気になってね』
「よく分かりませんが、秘密基地みたいですね」
『そうね、要塞というより秘密基地かも知れ無い』
明里光夏が執務室に入って来た。
「康代さん、ひと段落したので、お茶にしませんか」
「光夏、私も付き合うよ」
「秀美、気付かず、ごめん。
ーー 秀美も一緒にどうかな」
『光夏、秀美、ちょっと疲れたから、カフェでお茶にしましょう』
康代、光夏、秀美の三人は、地下を経由して神聖ショッピングセンターのカフェに辿り着いた。
女子高生警備が六人同行している。
康代は、警備にも同席するようにお願いした。
警備は二手に分かれて康代たちの隣のテーブルに、三人ずつ着席することになった。
「康代さん、静女さんがいないのは珍しいですね」
『大丈夫よ、セリエさまの神使セリウスさまもいるから』
「そうでした・・・・・・」
秀美は、よく分からない康代の言葉に、言葉を濁した。
康代の前に女子高生姿の緑髪のセリウスが現れた。
背丈は、セリエや静女と変わらない。
慣れていない光夏と秀美がセリウスに驚いていた。
「康代さん、セリエさまのご命令で馳せ参じました」
『静女は、まだ、セリエさまと一緒ですか?』
「いいえ、天女の静女さまは、いらっしゃいませんでした」
『そうですか・・・・・・』
康代を心配した静女が、セリウスの横にワインレッドジャケットにスカートで現れた。
淡いピンク色のシャツと静女の紫色の髪の毛が、よく似合って妖艶に見える。
『あら、静女、遅いわね』
「康代殿の波動テレパシーを感じたでござるよー」
『天女さまも、セリエさまに似て来ましたわね。
ーー 静女は、何がいいの』
「拙者は、お汁粉を頂くでござる」
『分かったわ。じゃあ、光夏、静女にお汁粉ね。
ーー 警備の六人にも、オーダーを聞いて上げて』
「分かりました」
光夏の返事を聞いた康代は、秀美に言った。
『静女のジャケットの色を見て思ったのですが、秀美、
ーー 前畑さんと織畑さんをここに呼んで下さい』
「康代さん、早速」
と言って、秀美はカフェの窓際に行き、ホログラム携帯を手にしていた。
「前畑さん、康代さんが前畑さんと織畑さんをお呼びです。
ーー 至急、来てもらえますか」
それからしばらくして、織畑信美首相と前畑利恵副大統領が女子高生警備と一緒にやって来た。
警備は、康代の配慮で隣のテーブルに着席することになった。
「康代さん、何でしょうか?」
『今回の件に暗躍している裏組織を、
ーー 一網打尽にする罠をお願いしたいの。
ーー 多分、食いつくわよ』
徳田康代大統領は、二人手招きして小さな声で伝えた。
「なるほど、新しい制服ですね」
織畑と前畑が言った。
『大声上げちゃダメよ』
徳田康代は、新しい制服の企画に罠を仕掛け、裏組織をお引き寄せることを思案して、織畑と前畑の二人を呼び寄せていた。
『黒川さんたちと協力して、挟み討ちにするわよ。
ーー 科学とアナログの二面作戦よ』
「康代さん、いよいよ鬼退治が始まるのですね」
『気が早いわよ、利恵。
ーー 明日、黒川さんとお会いしてみないと分からないわ』
「で、康代さんは、どうするおつもりですか」
信美にしては、控えめな口調だった。
『田沼さんたちの皮ジャケットを覚えているわね。
ーー あれは、スポットの店舗だったでしょう。
ーー 今度は、大きな発注が動くのよ。
ーー 何処の誰が介入するかが見ものね』
「そして、黒川さんたちがデジタルデータを追いかける訳ですね」
『私は、そんな意地悪くないわよ。
ーー まもなく東亜暦二年でしょう。
ーー セリエさまのジャケットとスカートがヒントよ。
ーー 新しい制服の選択肢を生徒たちに考えただけよ』
「でも、間違いなく敵が指を咥えて傍観しているとは考えにくいわね」
「利恵の言う通りじゃないかな」
信美が躊躇いがちに話す。
『信美、今日は歯切れが悪くない』
「康代さん、大きな裏組織が暗躍しているんですよね」
『そうね・・・・・・。
ーー このカフェも安全じゃないかもしれないわね。
ーー じゃあ、この続きは、明日にしましょう』
康代は急遽、黒川に連絡を入れて、明日の予定を変えることにした。
『・・・・・・ と言うわけで、黒川さん、
ーー 私たちが、そちらに行くから、そちら側で待っていて』
「大統領、私たちって誰ですか」
『私の大統領キャビネットの精鋭四人よ』
「分かりました。地下でお待ちします」
『じゃあ、明日の同じ時間ね。
ーー ランチも楽しみだわ』
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三日月未来