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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
125/169

【一二三】 カラクリの片鱗が見えたでござる!

この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。

【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。

女子高生は大統領では、

徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。

『  』


皆さまの隙間時間でお楽しみください。

三日月未来(みかづきみらい)

 地震学者の田沼光(たぬまひかる)博士と若宮咲苗(わかみやさなえ)助手を交えてのお茶会になった。


 徳田幕府本部、諜報員養成機関の黒川亜希(くろかわあき)は二十代中頃に見えた。

若宮は二十八歳なので黒川との年齢差に違和感がなかった。


 黒川の颯爽とした白いスカートスーツが、師走の寒空の下では不似合いに見えた。

田沼と若宮は黒皮のスカートに同じ素材のジャケットを着ている。

 

 真夏の頃の二人からは想像も出来ない黒ずくめな服装だ。


 一方、徳田康代たちは、学園都市の地下通路に慣れていた為、冬服の制服姿だ。


 豊下秀美がカフェの中から康代を呼んでいた。


『分かったわ、秀美、ありがとう。

ーー じゃ、みんな、中に入りましょう』


 窓側から、田沼、若宮、黒川、水上、紀戸、尾上の順で六名が腰掛けた。

その対面に天宮静女、徳田、前畑、織畑、豊下、明里の大統領キャビネットの六名が順に腰掛けた。


 康代たちは、大きなテーブルを挟んで、お見合いをするように向かい合った。

静女はいつもと同じ窓際の席を選んだ。


 黒川亜希は大統領を守れる席を選んで腰掛けている。

徳田大統領の中枢がカフェでお茶会となった。




 徳田康代は、田沼たちの服装を一瞥(いちべつ)して、前畑に尋ねた。


『前畑さん、二度のデノミ以降、平均物価は落ち着いていますか』


「それが、一部で不穏な動きの報告が()()()()()に上がっているそうです」


『国民の誰もが輪番代議士になれる時代ですものね、

ーー 不正や捏造(ねつぞう)隠蔽(いんぺい)あれば導火線に点火するのも当たり前ですわ。

ーー 織畑さんは、どう思うかな』


 徳田は織畑信美(おりはたのぶみ)首相に尋ねた。


「抜き打ちで徳田幕府の“()()()()()()()”に市場調査も必要です。

ーー リストデータだけですと改竄(かいざん)されている可能性を否定出来ませんので・・・・・・」


『ちょっと原始的なアナログ手段ですが必要ですわね。

ーー 大昔は棚卸(たなおろ)しで帳簿と現物の違いから不正が発覚したこともあったのよね。

ーー 私たちは、人工知能に依存し過ぎて紙離れをしていますが、

ーー 見直しが必要な過渡期(かとき)かも知れないわ』


豊下が挙手をした。

『秀美、何かあるの』


「いいえ、良かったら、黒川さんたちのヘルプをと」


明里が立ち上がって言った。

「私も秀美と一緒にお手伝いをしたいのですが」


『黒川さんは、どうですか?』


「今回の任務には、潜入はありませんが、

ーー 一部を棚卸しして帳簿の穴を見つけるのは賛成です。

ーー ただ、そうなると、お二人だけでは物理的に足りません」


『分かったわ。黒川さんたちが先行してデータの矛盾を見つけ、

ーー そこにピンポイントにアナログ式棚卸(たなおろ)しを仕掛けましょう。

ーー 実行は、徳田幕府諜報本部として、

ーー 秀美と光夏は、その監督役でどうかしら』


 田沼と若宮が気不味い表情を浮かべ天宮静女が気(づか)っていた。




『田沼さんと若宮さんのお仕事も無関係じゃないのよ。

ーー 不正は不穏に繋がり、やがて負のエネルギーを増大させるわ。

ーー 私たちは、第三のアトランティスの悲劇の種を()るだけよ』


「徳田さん、私もあんなトラウマは二度と御免ですから、

ーー 出来る範囲で協力します」


『田沼さんと若宮さん、その素敵な皮のジャケット?

ーー 最近の物ですか?』


「ええ、最近、若宮さんと神聖ショッピングセンターを(のぞ)いていましたら、

ーー 今時、珍しいバーゲンセールに遭遇しました。

ーー そして、衝動買いを」


前畑が、田沼に尋ねた。

「田沼さん、失礼ですが、その素材は本物ですか?

ーー そして気になる購入価格ですが」


 田沼光は、バッグからメモ用紙を取り書いて前畑に見せた。


「田沼さんは、素材と価格が合っていると思いますか」


「前畑さん、私たちは学者なので、その辺は無頓着(むとんちゃく)なんです」


「なるほど・・・・・・」


 前畑に続き織畑が田沼に質問した。


「その購入店の場所と店舗名を覚えていますか」


「はい、政府決済カードに記録がある筈です」


 田沼が言うと、黒川亜希が田沼に言った。

「これから、私と一緒に、その場所まで付き合ってもらえませんか」


「はい、私で、良ければ」


 水戸藩の水上泉が黒川を呼んだ。


「黒川さん、私もご一緒させてください」


 水上に続き、紀戸と尾上も続いた。


「仕方ない生徒たちだな、研修気分なら怪我しますよ。

ーー 近くまで来たら、距離を置いて何かを見ている演技をするのよ。

ーー いいわね、分かった」


 黒川の言葉に三人は小さく(うなず)く。


「じゃあ、徳田さん、今日はありがとうございました。

ーー そう言う訳で、ちょっと裏取に行きます。

ーー じゃ、田沼さんと若宮さんだっけ、

ーー ご一緒をお願いします」




 黒川と諜報女子高生三名は田沼と若宮を引き連れて、神聖ショッピングセンターの下り()()()()エスカレーターに乗った。


 目的のフロアに到着して、黒川は、水上、紀戸、尾上に合図をする。

三人は、黒川から離れた。


「田沼さん、若宮さん、場所を覚えていますか?」

「多分、その先を曲がった辺りかと」


 六名は近くまで移動したが、それらしい物を発見出来なかった。

黒川は、フロア責任者を呼び出し尋ねてみた。


「あの、この辺りで、バーゲンセールをしていたお話を聞いたのですが」


 責任者の背の低い女性が無愛想に答えた。

「あのお店は()()()()なのよ」


 田沼が言った。

「スポットなんですか?」


「そうよ、単発よ。

ーー デパートや大型量販店にはよくある単発店ね」


 黒川は責任者の女性に軽く会釈してカフェに戻った。

『黒川さん、どうでした?』


「はい、予想通りの展開でした。

ーー あとは、データの裏取と棚卸しの抜き打ちですね」


『じゃあ、黒川さん、明日からよろしくお願いします』


「カラクリの片鱗(へんりん)でござる」

静女は大江戸平野に沈む太陽と夕焼け雲を眺めている。


「明日も良いお天気でござるよー」

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