【一二二】 特殊任務と緑髪の神使セリウス
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
数学の天才、前畑利恵副大統領が難しい顔をして、徳田康代大統領に相談しに来た。
「康代、今回の特殊任務には、無理が無いか心配しています」
『私も、そう思うわ』
「じゃあ、どうするのよ」
『織畑首相が黒川亜希と言う幼馴染を連れて来るそうよ』
「なんとなく聞き覚えのある名前だわ」
『そうね、彼女は徳田幕府本部に在籍している秘密兵器の一人よ。
ーー 名前も顔も一部の人しか知らないの』
「それで、諜報女子高生に・・・・・・」
『織畑首相や私たちだと目立ち過ぎでしょう』
「じゃ、その黒川とか言う人が諜報女子高生を統括するわけ」
『多分、そうなるわね』
「なるほど、織畑さんの代理ね」
前畑は納得した真顔になって執務室を出て行った。
明里光夏と豊下秀美が前畑とすれ違うように入って来た。
「徳田大統領、黒川とか言う名前の女性が面会に来ていますが」
『明里さん、お通しして上げてください』
「それが、水上、紀戸、尾上も一緒なんですが」
『構わないわよ』
しばらくして、豊下が三人を先に生徒会室に招き入れた。
明里のアドバイスで、面会は生徒会室で行われることになった。
遅れて、明里が長身の黒川亜希を連れて来た。
諜報女子高生の三人が声を上げて黒川を見て歓迎している。
真っ白いスカートスーツで美形の黒川は、黒髪のピクシーカットの前髪を七三に分けていた。
有名女優がしているショートカットに似ている。
モデル並みに背が高く、一七八センチくらいに見えた。
「黒川さん、水上です。お久しぶりです」
「懐かしい顔触れがいるな」
黒川も男口調をよく好んで使った。
尾上と紀戸も黒川に挨拶した。
黒川亜希は、諜報女子高生の養成機関で教官をしていたことがあった。
水上、尾上、紀戸の三人は、その時の生徒だ。
織畑利恵が幼馴染と言ったのは正しくない。
正確には同郷の先輩だったとあとで分かった。
「みんな、ハッキングの技は上達したかな」
黒川の別名は、ハッキングの魔術師と呼ばれていた。
徳田康代大統領と前畑利恵副大統領、織畑信美首相がやって来た。
『黒川さん、お忙しい中、ありがとうございます。
ーー 今回の特殊任務は、証拠ルートの痕跡の調査です』
「相手が悪党なら、普通は痕跡は残していないでしょう」
『入札の関係者を含め、すべてピックアップして頂きたく思います』
徳田大統領が言うと、織畑首相が続けた。
「黒川さん、あなたたちに潜入調査とかをさせるつもりはありません。
ーー 政府の専用ネットワークからアプローチしてください。
ーー それらは、今回限りのルートですから敵に気付かれても安全です」
『織畑首相が言う通りです。
ーー あなたたちは学園寮に滞在して、地下基地の調査室で仕事をして頂きます。
ーー そして、関係者をピックアップするまでが、お仕事です』
「分かりました。徳田大統領」
黒川が返事をした時、神さま見習いのセリエが天宮静女と現れた。
『黒川さん、紹介するわね。
ーー こちらが私の側近の天女天宮静女さんで、
ーー こちらが、神さま見習いのセリエさまで・・・・・・』
徳田康代が次の言葉を言い掛けた時だった。
水色の瞳と髪の女子高生セリエの前に、ふさふさの赤猫が現れた。
神さま見習いセリエの神使セリウスだった。
「セリエさま、女神アセリアさまからの伝言がござりまして馳せ参上しました」
「セリウスよ、前置きは良いから申せにゃあ」
セリエの言葉尻の癖は未だ人間言葉に馴染んでいない。
「早う申せにゃあ」
「セリエさま、他の者がいますので」
「問題にゃい、セリウスは康代以外の他の者には見えにゃぁい」
「アセリアさまが、今回の件でセリエさまをサポートせよと申されてまして」
「女神さまも、お優しいからにゃあ」
「で、セリウスは、どうしたいのじゃ」
「セリエさまの仰せのままに」
「左様か、じゃ予の真似をして女子高生に変身してみにゃあ」
「よろしいのですか? セリエさま」
「予が良いと言っているにゃあ」
赤猫姿のセリウスは、神聖女学園の制服姿になった。
「セリウスは、緑色の瞳と緑色の髪が好きだったかにゃあ」
「セリエさま、お揶揄いなさらないでください」
神使セリウスの言葉は人間と変わらなかった。
「セリウスは、人間の言葉が上手じゃにゃ」
黒川、水上、尾上、紀戸の四人が女子高生姿のセリウスを見て声を上げた。
「徳田大統領、その方は」
『こちらはセリエさんのお友達のセリウスさんよ』
水上泉が立ち上がって、右手を上げセリウスを指差した。
セリエも気付きセリウスを注意する。
「セリウス、猫耳で驚かしちゃダメじゃにゃあ」
セリウスはセリエの言葉を聞いて変身を調整した。
徳田康代は、セリエたちとの打ち合わせを終えて、静女と黒川たちを連れてショッピングセンターのカフェに行く。
大統領キャビネットも一緒だ。
セリエと神使セリウスは、用事があると言って執務室に残った。
「セリウス、女神さまのところに行くにゃあ」
「セリエさま、ご一緒します」
「康代殿、セリエさまがいないでござる」
『静女、セリエさま、用事があるとか言っていました』
康代たちがカフェの前で話していると、田沼光博士と若宮咲苗助手がやって来た。
「徳田大統領、こんにちは」
『あら、田沼さんたち、よく会うわね』
「ここは、神聖神社の帰りによく寄ります」
『そうなの。ところで、アレは順調ですか』
「それが僅かですが、
ーー 振幅が起きていまして若宮と注意しています」
『先生、監視の継続をお願いしますね。
ーー ところで、お茶をご一緒しませんか』
「徳田大統領が良ければ」
『田沼さん、ここでは、大統領は付けないで』
徳田は、最近購入したピンク色の大きなサングラスをずらして、田沼と若宮の顔を見た。
「康代殿、サングラスが似合っているでござる」
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